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本編
5】聖教会(前)
しおりを挟む旅立ちは盛大なセレモニーだった。
王様が、目立ちたいだけじゃないかと思うようなパレードで送り出された。
勇者がいた国というのは何らかの権利でも発生してるのだろうか。最初に聖魔法保有の剣士を見つけた国で、この国で訓練してた勇者。この国に各国の勇者候補が集まっていたのも何かあるのかも…な。
上の方の縄張り争いは分からん。情勢とか知っとけば色々上手く立ち回れるんだろうが…。俺は苦手だよ。できれば近づきたくない分野だね。
傭兵時代、上に雇い主が自らの手柄のように報告して、こっちには言いがかりをつけて報酬をケチったヤツを思い出すよ。
報酬をきっちり払う奴もいたが…。数える程だ。そんな依頼ばかりしか受けれなかったから、あの時、終わったんだな。
俺の居場所だった傭兵団。
あちこちの伝手で、命を張って日銭を稼いで、流れ流れて、この国から遠いところの国で下級騎士団に俺は居た。権力の裾野に着地したね。
割と居心地良かったのに、訓練場に駆け込んできた白い法衣の少女に抱きつかれて、終わった。
あの時は、ビビったッ!
打ち合ってたんですけど?!
「見つけましたわ」が第一声だった。
あの時の空気は不思議だった。空気が清浄になるように、風に手を取られ、周りの剣は舞のように綺麗に収まったのだった。
準聖女アリスンだった。
そのあと国王陛下から任命されて、派遣先のこの国で、『勇者さま』と会った。十代の青年。まだ少年と言ってもいい感じだ。俺がこのパーティーで年長者となった。
この年下の勇者に、可愛らしい聖女さま、チビで力持ちのポーター。
4人パーティーだが、これで大丈夫か?と思ったのが昔。
「クンティン、これ美味いな」
みんなに具沢山のスープを椀に注ぎ渡してる小柄な男に声をかける。お世辞じゃなくて、よく手持ちの材料で毎度味を変えてくる。
「さっきの村でミルクを分けて貰えたから、たっぷり使っちゃった。サムエルに頑張って作って貰ったバター使ってパンも作ったよ」
俺が? ミルク入った瓶を振らされてたな…。最近乾パンが多かったから嬉しいね。
最初の頃は互いの力量も分からないままの戦闘だったが、今は連携もいい感じだ。
クンティンは出会った頃から全然大きくならない。大きな荷物を背負ってるからかと、打ち解けきたかなって時に尋ねたら、めちゃくちゃ怒られた。
出会った頃には成人しており、身長は今でも少しずつ伸びてると申告された。本人もの凄く気にしてた事らしい。昔っから俺って、親しくなってきたなぁって頃合いで、地雷を踏みまくるんだよなぁ。
反省、反省…。
勇者と聖女はすくすく育ったから尚の事気にしていたかもだった。地雷踏んじまった。
うっわぁ、泣きそうじゃんッ。
透かさず、土下座で謝った。
傭兵時代の兄貴的な男に教えて貰った謝罪の最終形態。
女とどうしようもない時の最終謝罪の形態だと教わった。
クンティンは女じゃないが、俺は心底悪いと思ったので、頭を下げた。
頭をグリグリ踏んでもらうと成功らしい。
結果、オロオロさせたいだけで、取り敢えず許して貰えた。大成功とはならなかったが。
やはり女相手じゃないとダメなのか?
んー、今度アリスンに訊いてみるか。
そう言えば、あいつら、付き合えばいいのになぁ。別に俺はいいぞ。若人を応援してやろう。あ、クンティンには悪いか…。目の前でイチャイチャされたら困るな。彼もお年頃だったな。勇者より年上なんだよなぁ。見た目はアレだけど…。
出発した国の森が一番やばい魔獣の巣らしかった。森の向こうの方に魔王国があるらしいとの話だったが、不確かな情報だったし、連携もへったくれもないパーティーが挑んだところで魔王城に辿り着く前に魔獣の餌になっちまう。
だから、各国を渡り歩いて、腕を上げていくしかなかった。
魔王を倒せれば、魔獣も消えるらしいし、もし生き残ってても討伐できる数だと目算されている。そうあって欲しいものだ。
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