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本編
9】浄化(前)
しおりを挟む「決まったなッ、クンティン」
「あはは、決まりましたね」
ドヤ顔の魔王。
もの凄く楽しそうにクンティンが笑ってる。
なんだこの二人、めちゃくちゃ波長が合ってるよ。ついていけるかな…。
ここは魔王城で、討伐すべき魔王と剣を交えて戦わず、こうして言葉を交わして話をしている。
みんな、俺も含めて、気が緩んでる気がする。
今、無意味に楽観的になってる。
こういう時は、何かを見落としてたり、散漫で、目の前の事しか見えてなかったりするものだ。
そうだ、別のルート、別視点が必要だったりするんだった。
しかし、別視点って…?
整理して、考えなければ。
この魔王、俺が知ってる魔王とは違いすぎる。根底が変わったところの認識の整理は必要だな。俺も混乱してるな。
なんだかすんなりと受け入れてしまったが、これは魔王の空気感がなせる技か?
思ってたのと違うってヤツだな。
偏見を捨てよう…。
この魔王、緩いよな。
世界を滅ぼしかけた瘴気の中で、のほほ~んと暮らしている。
彼が悪いとかではないが、なぜ、そんなに呑気にここで暮らせていた。聖女を待っていたからか?
瘴気の中だぞ。瘴気は城を包んで…。
ん?
どんよりとした瘴気の中のはず……だ。
そういえば、城に近づくにつれて息苦しさはなくなって…いたな。今は、どうだ?
気が緩むほど身体も軽い。
それに視界も明るくも感じる。外はどんよりして…ない?!
窓に視線を向ける。
青空とまではいかないが、晴れている?
足早に窓に近づいていた。
「ダロン、どうかしたの?」
振り返ればアリスンが心配顔だ。
「大丈夫だ」
席に戻った。
アリスンも窓の外を暫く見ていたが戻って来た。
魔王とクンティンが紙に何か書き込みながら話してる。
傍に羽ペンが転がってたが、今は手に木ペンが握られてる。
木の棒の中に木炭と石炭の間のような硬さの炭の棒を差し込んで使う。コツがいるがくるくる手に中で回しながら書くと先を尖らせながら書き続けられる。
短くなれば、尻の方の突起を押せば、固定されてた中の芯が出てくるので、丁度いい長さに固定し直せばいい。使わない時は、押しながら、ひっくり返ぜば芯が収納できる。
話は白熱しているようだ。
侍女さんたちが紙やら運んできて、いらなくなったインクやペンを片付けてる。
彼女たち、淫魔なんだ…。
俺とアリスンの前には、紅茶と焼き菓子が並んでる。ジャムが添えられてる。
外界と区切られてしまった世界では物資とかどうしてたのだろう…。
そういえば、もしこの瘴気が無くなってしまった後、ここの者たちはどうなるんだろう…。
浄化が進んで、人の形に戻れたとしても、外に彼らの場所はあるのだろうか…。
この魔王や淫魔の彼女たちは300年前の人たちだ。血縁など、あったとしても…。無理だろうな。
公国や聖教会が受け入れてくれたとして…。
この土地の所有はどうなるんだ。このまま住めるのか?
今は公国の前身の国の所有でも、今は所有じゃなくなってる。
干渉地として瘴気ある魔王国とその周りの土地は何処のものでもない。
ここに元から住んでた者も居るかもしれないではないか…。
瘴気が無くなったら…。
腰のポーチに手を伸ばす。
クンティンのポーチのような物ではなくごく普通のポーチから地図を出す。
紅茶と焼き菓子を素早く侍女さんが移動してくれた。
3年で世界地図が大きく変わる事もないだろう。
この魔王の国は、…公国と2つの大国に囲まれている。
公国とは元領地とあって、多少の起伏はあっても遮るものはほとんどなかった。
一方大国側、俺の祖国ともう一カ国との間には大きな森が広がってる。起伏も富んでいる。
森からが魔獣が現れる事もあるから、両国とも城壁を作ってる。入るのは余程の事がない限り避けられている。
だが、薬草など豊富だ。鉱物資源も豊富だと昔の文献などでも言われてるので、入りたいところである。
魔王城はココ。
俺たちが入ってきたルートはコレ…。
瘴気は魔王が引き寄せてるとすると同心円状に広がってるはず。んー、干渉地の範囲が…合ってないな…。俺たちの感覚だともう少し広がってる感じがするのに、こっちはここまで飲み込まれて、干渉地を超えてしまう。同心円じゃない?
「ダロン、地形が関わってるのかも…」
横から手が伸びてくる。
指が等高線をなぞる。
アリスンは俺が何をしているのか理解してくれるようだ。
確かに…。そういえば、この魔王城も緩やかな丘の上だった。
穢れは溜まり、溢れたのが瘴気となり襲い掛かって来たと言われていたな…。
では、この地形を考慮に入れて予想線を書いてみる…と。大体一致してるようだ。森は随分と広範囲に侵食している。
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