偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧

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 義弟であるグイードとの出会いは、ティナが13歳の時。
 父が再婚相手の連れ子として連れてきたのが、当時10歳のグイードだった。

 姉弟のいなかったティナは大いに喜んだ。グイード本人も、頼れる人が母親以外におらず、ティナに頼るしかなかった。
『頼られる自分』そんな思いに酔いしれ、気が付いたら執拗いぐらい可愛がっていた。

 その結果、まあまあ重めのシスコンが出来上がった…

「姉さん!!告白されたって!?相手は!?どこの馬の骨!?何もされてない!?当然、断ったんだよね!?」

 よくもまあ、一息に言い切れたものだと関心するぐらい、一気に捲し立てられた。

「少し落ち着きなさい」
「…クソッ、こんな事なら僕も行けばよかった…」

 ティナが宥めるように言うが、悔しそうに爪を噛みながら顔を顰めている。

 今回、グイードは父の仕事の手伝いで渋々欠席した。いつもなら是が非でも付いて行こうとするが、流石のグイードも父には文句は言えず、大人しく従った。

「それで?命知らずなお相手は何処のどいつ?」

 ティナの隣にドカッと腰を下ろしながら、苛立ったように聞き返してきた。

「相手は、世の女性の王子様であるユリウス様よ」

 黙っていてもいずれ耳に入る事だからと、正直に答えた。すると、グイードは驚いた表情を見せたのは一瞬だけで、すぐに頭を抱えた。てっきり、狂ったように騒ぎ立てると思っていたティナは拍子抜け。

「なるほど…姉さんは良くも悪くも月並み程度。害もなければ益もない…豪華な食事も毎日続くと飽きが来る。ここに来て庶民の食を欲したのか…」

 真面目な顔をして淡々と失礼な事を言ってくれる。

「喧嘩を売りに来たのなら買ってあげるけど?」
「いやだなあ、僕は姉さんの身を第一に考えてるんだよ?……まさかとは思うけど、その騎士に絆されたとか言うんじゃないよね?」

 真っ直ぐな目で詰め寄られ「ち、違うわよ!!」と慌てて否定した。

「そうだよね。姉さんには僕がいるもんね」

 甘えるようにして抱き着かれた。こういう所はまだ子供のままだと呆れつつも、笑みがこぼれてしまう。

 ティナに頭を撫でられているグイードは、満足そうに微笑んでいるかと思えばそうではない。狂気じみた表情で、一点を見つめたままだった…


 ❊❊❊


「まあ、ティナ様。よくお越しくださいました。嬉しいですわ」

 笑顔で迎え入れてくれたのは、カミラ・シュテプラー侯爵令嬢。その後には、数名の令嬢がテーブルを囲むようにして座っているのが見える。

 園遊会から数日。ティナとユリウスとの噂話が独り歩きしている中、呼ばれたのがこのカミラ主催のお茶会。このカミラは、親衛隊ファンクラブを結成した第一人者だと聞く。

 当然、和気あいあいと仲良くお茶を飲むなんてことはありえない。お茶会と言う名の吊し上げだ。

「さあさあ、どうぞ」

 そう案内されて行くが…

(子供じみた事を…)

 用意された席を見れば、明らかに細工のされている椅子。周りの令嬢らは堪らずクスクス笑っている。まあ、座った瞬間に崩れる算段だろう。

 ティナは気付かれないように小さく溜息を吐いた。

「どうしました?お座りください」

 笑顔で早く座れと急かしてくる。

「すみませんが、椅子を交換していただけます?」

 残念だが、そう簡単に罠にかかってやるほど私は弱くない。

「あ、あら、どうしたの?申し訳ないけど、椅子はそれだけで…」

 引き攣った笑顔で、必死に取り繕うとする方が不自然だと言うのに…

「まさかとは思いますが、椅子の予備がないなどとは言いませんよね?ですものね」

 煽るように言えばカミラは悔しそうに睨みつけ、使用人に椅子を持ってこさせた。

「ありがとうございます」

 何事もなかったかのように座ると、カミラを始めとする令嬢達はなんとも言えない顔をしていた。

 そして粛々とした空気でお茶会が始まったが、出された物もこれまた酷いものばかり。泥水かと見間違えるほどの色をしたお茶に、ケーキを模した何か…

 ここまであからさまだといっその事清々しい。

「あらまあ、ティナ様いかがしましたの?手を付けていないようですけど?」

 白々しくそんな言葉をかけてくる。

「…こんなこと言うのも何ですけど、心配する素振りを見せるなら、薄ら笑みは止めた方がいいですよ?バレバレです」
「─なッ!!」

 気付かれないと思っていたのか、指摘されてカミラの顔は真赤に染まっている。

「まあ、義理は果たしましたし、私はこれで失礼します」

 そう言って席を立つと「待ちなさい」と冷たい言葉がかかった。どうやら、茶番劇は終わりらしい。

「お茶を出してあげているのに、口を付けずに帰るなんて随分と失礼じゃない?」
「…それは、ちゃんと飲めるものを出された場合に限ります。得体の知れないものを出されたら誰だって口などつけません」
「まあ!!わたくしが得体の知れないものをお客様にお出したとでもいうの!?」

「酷い」と言わんばかりに顔を手で覆っている。その肩を抱くように他の令嬢達が群がって来た。被害妄想もここまでくれば病気だ。

「…分かりました。そこまで言うのなら…」

 その言葉に、嬉々として顔を上げたカミラ。

「カミラ様がお飲みください」
「は?」
「私にはどう見ても得体の知れないものです。安全性を証明する為にまずは、大丈夫だと言い切る貴女が飲んでみてください」

 満面の笑みで言いながらカップを差し出すと、分かり易く困惑した表情に変わった。取り巻き令嬢達が慌ててカミラを擁護する言葉を投げつけてくるが、そんなものは知らん。

「カミラ様は侯爵令嬢なのよ!!」

 一人が立ち上がり、鋭い眼光をこちらに向けてくる。

「だから?侯爵令嬢なら集団で虐めをしてもいいという法律でもあるんですか?」
「ッ!!」

 正論を吐かれて悔しそうに黙ってしまった。黙るくらいなら最初から口を出さない方がいい。下手に口を挟めば更に追い込まれることになるのだから。

(負け犬の遠吠えにもならない)

 骨がないな。と少々物足りなさを感じていると、背後から上品な笑い声と共に拍手が聞こえてきた。

「お見事」

 振り返ると、そこには元凶の根源。ユリウスが立っていた。















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