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私の目の前には腕を組み、仁王立ちしているアルベール。
アルベールの目の前には、頭を抱えた私がいる。
今までラコードの正体はアルベールに黙っていた。
それは、皆が血眼になって倒そうとしていたドラゴンの正体が、何を隠そうラコードだったからだ。
騎士団長であるアルベールはドラゴン退治の話も聞いていだろう。
「──……で、どういう事か説明してもらおうか?」
「……ここまで、バレたら全て話すよ……」
私は大きな溜息を吐き、ゆっくりとラコードの事を話した。
グスタフの件から今日に至るまで全て。
そして、二度と暴れる事の無いよう私が見張るから、ラコードの事を見逃してやってくれと頼んだ。
アルベールは神妙な顔をしながら私の顔を見ていた。
「……俺はこれでも一応団長だからな。害がある奴を黙って見過ごす訳にはいかない……」
それは分かっている。分かった上で頼んでいるんだ。
もう既にラコードは私達の仲間だ。
今更退治など出来ない。
「……そんな顔するな。俺だって、単にここに通っていただけでは無い。お前達のことを知る為に通っていたんだ」
「……私達がお前達にとって害になる人物かどうか判断していた、と言うことか?」
「……そうだ。……すまんかった……」
要は、監視役だな。
まあ、そんな所だろうとは思っていたよ。
いくら子供が好きだろうと、こう毎回団長が騎士団を抜けるには理由が軽すぎる。
「それで?私達は害になる人物だったか?」
私はアルベールに問う。
「いや、寧ろその逆だ。お前は俺たちの為に命を懸けている。今回の件はラコードがいなければ大惨事になっていた」
──という事は?
「ラコードはお前に任せる。──……俺が動かなくてもいいように、しっかり目を光らせといてくれよ?」
そう言いながらアルベールが笑った。
当たり前だ。お前が手を下すことになったなら、私が責任を持ってラコードを手に掛けよう。
「さっ!!この話は終わりだ!!早く森を復旧しなければならんからなっ!!」
パンッ!!とアルベールが手を叩き、私を急かす。
──そうだな、こんな状況じゃ獣達も困るだろう。
そんな事を思っていたら、ふと、パウルとバジャーの事を思い出した。
「おい!!パウルとバジャーは無事か!?あいつらの洞窟は!?」
そう叫ぶと、「あっ……」と、皆の顔が明らかに青ざめるのが分かった。
──これは、まだ生存確認が出来ていないな……
私は直ぐにパウルとバジャーのいる洞窟へと飛んだ。
洞窟は入口が土砂で埋まり、外には出れないようになっていたが、洞窟の中は何とか無事のようだった。
「おい、パウル!!バジャー!!生きてるか!?」
呼びかけるが、応答がない……
──入口が塞がれているから、外に出れないはず。
洞窟の中を一部屋一部屋探すが見当たらない。
残すはヴィンを匿っている部屋だ。
「おい、いるか?」
ドアを開けると、いた。
しかし、様子がおかしい……
ヴィンに寄り添い、動こうともしない。
よく見ると、ヴィンに被せた膜が破れている。
──あぁ、これは……
ヴィンが尽きたか……
あの傷で、よくここまで持ったと思う。
私はパウルの肩にポンと手を乗せた。
振り向いたパウルの顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
「……お前達は良くやったよ。ヴィンも、安らかに逝けただろう」
「……ごるねりあ゛ざん……」
……ヴィンも自分の為に泣いてくれる奴がいるなど思ってもいないだろう。
次に生まれ変わってくる時は、真っ当な人間に生まれ変われよ……
その後、泣き止んだパウルとバジャーと共に、ヴィンの亡骸を高台の見晴らしのいい場所に埋めた。
アルベールの目の前には、頭を抱えた私がいる。
今までラコードの正体はアルベールに黙っていた。
それは、皆が血眼になって倒そうとしていたドラゴンの正体が、何を隠そうラコードだったからだ。
騎士団長であるアルベールはドラゴン退治の話も聞いていだろう。
「──……で、どういう事か説明してもらおうか?」
「……ここまで、バレたら全て話すよ……」
私は大きな溜息を吐き、ゆっくりとラコードの事を話した。
グスタフの件から今日に至るまで全て。
そして、二度と暴れる事の無いよう私が見張るから、ラコードの事を見逃してやってくれと頼んだ。
アルベールは神妙な顔をしながら私の顔を見ていた。
「……俺はこれでも一応団長だからな。害がある奴を黙って見過ごす訳にはいかない……」
それは分かっている。分かった上で頼んでいるんだ。
もう既にラコードは私達の仲間だ。
今更退治など出来ない。
「……そんな顔するな。俺だって、単にここに通っていただけでは無い。お前達のことを知る為に通っていたんだ」
「……私達がお前達にとって害になる人物かどうか判断していた、と言うことか?」
「……そうだ。……すまんかった……」
要は、監視役だな。
まあ、そんな所だろうとは思っていたよ。
いくら子供が好きだろうと、こう毎回団長が騎士団を抜けるには理由が軽すぎる。
「それで?私達は害になる人物だったか?」
私はアルベールに問う。
「いや、寧ろその逆だ。お前は俺たちの為に命を懸けている。今回の件はラコードがいなければ大惨事になっていた」
──という事は?
「ラコードはお前に任せる。──……俺が動かなくてもいいように、しっかり目を光らせといてくれよ?」
そう言いながらアルベールが笑った。
当たり前だ。お前が手を下すことになったなら、私が責任を持ってラコードを手に掛けよう。
「さっ!!この話は終わりだ!!早く森を復旧しなければならんからなっ!!」
パンッ!!とアルベールが手を叩き、私を急かす。
──そうだな、こんな状況じゃ獣達も困るだろう。
そんな事を思っていたら、ふと、パウルとバジャーの事を思い出した。
「おい!!パウルとバジャーは無事か!?あいつらの洞窟は!?」
そう叫ぶと、「あっ……」と、皆の顔が明らかに青ざめるのが分かった。
──これは、まだ生存確認が出来ていないな……
私は直ぐにパウルとバジャーのいる洞窟へと飛んだ。
洞窟は入口が土砂で埋まり、外には出れないようになっていたが、洞窟の中は何とか無事のようだった。
「おい、パウル!!バジャー!!生きてるか!?」
呼びかけるが、応答がない……
──入口が塞がれているから、外に出れないはず。
洞窟の中を一部屋一部屋探すが見当たらない。
残すはヴィンを匿っている部屋だ。
「おい、いるか?」
ドアを開けると、いた。
しかし、様子がおかしい……
ヴィンに寄り添い、動こうともしない。
よく見ると、ヴィンに被せた膜が破れている。
──あぁ、これは……
ヴィンが尽きたか……
あの傷で、よくここまで持ったと思う。
私はパウルの肩にポンと手を乗せた。
振り向いたパウルの顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
「……お前達は良くやったよ。ヴィンも、安らかに逝けただろう」
「……ごるねりあ゛ざん……」
……ヴィンも自分の為に泣いてくれる奴がいるなど思ってもいないだろう。
次に生まれ変わってくる時は、真っ当な人間に生まれ変われよ……
その後、泣き止んだパウルとバジャーと共に、ヴィンの亡骸を高台の見晴らしのいい場所に埋めた。
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