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悪霊の始まり...…
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「憎い……幸せな奴らが忌まわしい……」
私の目の前には今まさに、永遠の誓いを立てようとしている二人の姿がある。
ベールを挙げ、誓のキスに進もうとした瞬間バンッ!!と入口の扉が開き鬼の形相の女が入ってきた。
新郎はその顔を見るなり真っ青な顔になり、必死に言い訳を並べる。新婦はショックのあまり気を失い、新婦の両親は怒号をあげ、幸せな時間が一瞬にして阿鼻叫喚の時間に変わり果てた。
「──……ふっ。ふふふっ……あはははははは!!!いい気味!!私の目の前で永遠の誓いなんかできる訳ないのに!!!」
高々に笑っても私の姿は周りの奴らには見えていない。
私は俗に言う幽霊。しかも、悪霊と呼ばれるもの。
死ぬ前の私の名前はカロリーナ・ブロンド。一応公爵令嬢だった。
さて、何故私が悪霊になったのかと言うと……
遡ること数十年前。
私にはダロンと言う伯爵令息の婚約者がいた。
誠実で優しくて生真面目な人で、一目見て恋に落ちた。
ダロンも私を愛してくれた。
ダロンはブロンド家の婿養子になる事が決まっていて、次期当主としてお父様と一緒に領地発展の為に奮起していた。
空き時間を見ては私の元にやって来てくれて、しばし他愛の話をするこの時間が大好きだった。
この関係が壊れたのは、お父様が後妻を娶った事から始まった。
その後妻には一人の娘がいた。私より二歳年上で、私の義姉になる人。
継母はとても素敵な人だったが、義姉は自分よりも素敵な婚約者がいる私を妬んでいた。
元々平民の義姉には婚約者などいるはずもなく、伯爵家の娘になってからお父様が縁談を結んできた。しかし、結婚適齢期を過ぎた義姉にはろくな相手が残っておらず、ようやく結んできたのは男爵家の令息。見た目も悪く、頭も悪い。当然義姉は猛反対したが、当主のお父様に逆らえるはずもない。
そこで、目をつけたのが私の婚約者のダロンだった。
義姉は私のいない隙を狙いダロンを誘惑した。
最初のうちは断っていたらしいダロンだったが、一度身体を繋げてしまえば男という生き物は容易い。
義姉はまんまとダロンの子を妊娠。
私はダロンを義姉に奪われた。
「ごめんなさいねぇ?貴方より私の方が魅力的だったみたい」
「すまない、カロリーナ。だが、私は自分の気持ちに嘘は付けない……」
潮らしく言うダロンの腕に腕をからませて、勝ち誇ったように言った義姉の顔は今でも忘れられない。
当然、お父様は激昂してくれた。
次期当主は白紙だと。意外な事に継母まで自分の娘である義姉を叱ってくれたのだ。それが私は本当に嬉しかった。
しかし、それが芝居だと気づいたのは、その日の夕食の事だった。
「ゴホっ!!!」
私の目の前に並べられた料理を一口食べた私は血を吐き倒れた。
意識を失う前に見たものは、薄ら笑いを浮かべる継母の姿だった……
こうして、次に目を覚ましたら霊体で自分が死んだ事に気付かされた。
まさか自分の葬式をこの目で見ることになるなんて思っても見なかったが、お父様の憔悴した姿には心が抉られるかと思った。
跡取りの私が死んでしまったので、お父様は仕方なくダロンと義姉の結婚を認め次期当主に返り咲いた。
そして、その夜。
私はコソッとダロンの部屋へと潜り込んだ。
いくら義姉と結婚が決まっていたとしても、元婚約者の私の事を悲しんでくれているはずと。
「……ははっ。あの女が言った通りに事が進んでるぞ。もうすぐ、この公爵家は俺のものになるんだ……」
真っ暗な部屋の中テーブルに肘をつき、誰も聞いていない事をいい事にベラベラと本音を話していたダロン。
私はその言葉に耳を疑った。
「正直、この公爵家が手に入るならカロリーナでも良かったんだがな。カロリーナは指一本触れさせてはくれなかったし、こっちは健全な男だ。ヤリたい時にヤラしてくれる方がいいに決まってる」
私は継母だけではなく、ダロンにまで裏切られていたって事?
「しかし、あん時は焦ったな。公爵が俺を次期当主から外すなんて言うんだもんな。今までの苦労が水の泡になるとこだったぜ。カロリーナには悪いが、死んでくれて助かったよ」
「あはははは!!」と笑うダロンを見て、まるで知らない人を見ているような錯覚に襲われた。
それと同時に、怒りと憎しみが心の奥底から黒い渦になって湧き出してくるのが分かった。
その感情を抑えきれる事が出来ず、ダロンはその黒い渦に巻かれ苦しみ出した。
正気に戻った時にはダロンは口から泡を吹き、息絶えていた。
私が悪霊になった瞬間だった……
私の目の前には今まさに、永遠の誓いを立てようとしている二人の姿がある。
ベールを挙げ、誓のキスに進もうとした瞬間バンッ!!と入口の扉が開き鬼の形相の女が入ってきた。
新郎はその顔を見るなり真っ青な顔になり、必死に言い訳を並べる。新婦はショックのあまり気を失い、新婦の両親は怒号をあげ、幸せな時間が一瞬にして阿鼻叫喚の時間に変わり果てた。
「──……ふっ。ふふふっ……あはははははは!!!いい気味!!私の目の前で永遠の誓いなんかできる訳ないのに!!!」
高々に笑っても私の姿は周りの奴らには見えていない。
私は俗に言う幽霊。しかも、悪霊と呼ばれるもの。
死ぬ前の私の名前はカロリーナ・ブロンド。一応公爵令嬢だった。
さて、何故私が悪霊になったのかと言うと……
遡ること数十年前。
私にはダロンと言う伯爵令息の婚約者がいた。
誠実で優しくて生真面目な人で、一目見て恋に落ちた。
ダロンも私を愛してくれた。
ダロンはブロンド家の婿養子になる事が決まっていて、次期当主としてお父様と一緒に領地発展の為に奮起していた。
空き時間を見ては私の元にやって来てくれて、しばし他愛の話をするこの時間が大好きだった。
この関係が壊れたのは、お父様が後妻を娶った事から始まった。
その後妻には一人の娘がいた。私より二歳年上で、私の義姉になる人。
継母はとても素敵な人だったが、義姉は自分よりも素敵な婚約者がいる私を妬んでいた。
元々平民の義姉には婚約者などいるはずもなく、伯爵家の娘になってからお父様が縁談を結んできた。しかし、結婚適齢期を過ぎた義姉にはろくな相手が残っておらず、ようやく結んできたのは男爵家の令息。見た目も悪く、頭も悪い。当然義姉は猛反対したが、当主のお父様に逆らえるはずもない。
そこで、目をつけたのが私の婚約者のダロンだった。
義姉は私のいない隙を狙いダロンを誘惑した。
最初のうちは断っていたらしいダロンだったが、一度身体を繋げてしまえば男という生き物は容易い。
義姉はまんまとダロンの子を妊娠。
私はダロンを義姉に奪われた。
「ごめんなさいねぇ?貴方より私の方が魅力的だったみたい」
「すまない、カロリーナ。だが、私は自分の気持ちに嘘は付けない……」
潮らしく言うダロンの腕に腕をからませて、勝ち誇ったように言った義姉の顔は今でも忘れられない。
当然、お父様は激昂してくれた。
次期当主は白紙だと。意外な事に継母まで自分の娘である義姉を叱ってくれたのだ。それが私は本当に嬉しかった。
しかし、それが芝居だと気づいたのは、その日の夕食の事だった。
「ゴホっ!!!」
私の目の前に並べられた料理を一口食べた私は血を吐き倒れた。
意識を失う前に見たものは、薄ら笑いを浮かべる継母の姿だった……
こうして、次に目を覚ましたら霊体で自分が死んだ事に気付かされた。
まさか自分の葬式をこの目で見ることになるなんて思っても見なかったが、お父様の憔悴した姿には心が抉られるかと思った。
跡取りの私が死んでしまったので、お父様は仕方なくダロンと義姉の結婚を認め次期当主に返り咲いた。
そして、その夜。
私はコソッとダロンの部屋へと潜り込んだ。
いくら義姉と結婚が決まっていたとしても、元婚約者の私の事を悲しんでくれているはずと。
「……ははっ。あの女が言った通りに事が進んでるぞ。もうすぐ、この公爵家は俺のものになるんだ……」
真っ暗な部屋の中テーブルに肘をつき、誰も聞いていない事をいい事にベラベラと本音を話していたダロン。
私はその言葉に耳を疑った。
「正直、この公爵家が手に入るならカロリーナでも良かったんだがな。カロリーナは指一本触れさせてはくれなかったし、こっちは健全な男だ。ヤリたい時にヤラしてくれる方がいいに決まってる」
私は継母だけではなく、ダロンにまで裏切られていたって事?
「しかし、あん時は焦ったな。公爵が俺を次期当主から外すなんて言うんだもんな。今までの苦労が水の泡になるとこだったぜ。カロリーナには悪いが、死んでくれて助かったよ」
「あはははは!!」と笑うダロンを見て、まるで知らない人を見ているような錯覚に襲われた。
それと同時に、怒りと憎しみが心の奥底から黒い渦になって湧き出してくるのが分かった。
その感情を抑えきれる事が出来ず、ダロンはその黒い渦に巻かれ苦しみ出した。
正気に戻った時にはダロンは口から泡を吹き、息絶えていた。
私が悪霊になった瞬間だった……
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