(完結)オフトゥン大好き黒猫令嬢と狼王子。王子は私を婚約者に選ばないでください! (手直しをしております)

深月カナメ

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三十七

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 コンコンと従者席側の壁が叩かれた。

「リルか、どうした?」

「リチャード様、もうすぐ王都に着きます」

「そうか……ミタリア起きろ、学園にもうすぐ着くぞ」

 狼姿の王子は長い鼻で、起きろと私の頬を突っついた。オフトゥンの上で寝ていた私はのっそり起きた。

 欠伸をして目を覚まして、前足でうにうに顔を洗う。

「学園に? もう着いたにゃっ?」

「そうだ。俺も着替えるから、ミタリアも制服に着替えろよ!」

「ふわぁい」

 うちの屋敷から、獣化した私を連れて馬車に乗り込むと、王子まで腕輪を外した。そのあとは、2人寝そべり、王子は隣で眠っていたのか知らないけど、私は学園までぐっすり寝ていた。

 いま腕輪を付けていそいそと馬車の中。背中合わせに学生服に着替え中だ。

「俺は着替えが終わったが、ミタリアは終わったか?」

 王子には背中越しに聞かれて「はい」と振り向くと、サラサラな王子の黒髪がピコンと跳ねていた。


(寝癖だ、王子もぐっすり寝ていたのね)


「リチャード様、ここに寝癖が付いていますよ」

「ん? ここか?」

「違います、ここです。少しかがんでください」

 目の前てかがむ、王子の髪を直した。

「これでよし、寝癖が直りました。リチャード様、学園に行きましょう」

「待て、ミタリア」

 今度は王子の手が伸び、私の後頭部を優しく撫でた。驚きピクッと体が反応したけど、頭を撫でられるのは嫌いじゃない。むしろ気持ちよくて、もっと撫でてと擦り寄せてしまう。

(やばい、王子の手って気持ちいい)

「ふふっ、ミタリアの寝癖も直ったよ」

「あっ、寝癖? ありがとうございます、リチャード様」

「あ、待って、ここにも寝癖だ」

「ひゃっ、ま、待って、そこは耳です……うっ!」

 敏感な耳を触られると体が動かなくなる、王子はそれを知っていて、いいだけ私の耳を触った。

「あっ、ごめん。寝癖じゃなくミタリアの耳だった」

「もう、最初から知ってるくせに。リチャード様の耳も触っちゃいますよ! リチャード様も耳を触られるのお嫌いでしょ?」

 偶然、指が耳に触れた時。私と同じく体が強張ったもの。

 王子はうんうんと頷き。

「そうだな、ミタリアにだったらいいぞ。2人きりの時に触らせてやるよ」

「言いましたね、約束ですよ」

「あぁ、約束だ」







 王都の西側にある学園。ここで乙女ゲームが始まる。学園の門を潜ると学校に通う学生たちは、みんな私たちの登場に振り返った。

(この風景、ゲームのスチルで見たわ)

「お似合いの2人だわ」

「リチャード王子殿下とミタリア様、素敵」

「お近づきになりたいわ、ミタリア様」

 令嬢たちが頬を赤らめてリチャード様を眺める。中には嫉妬して睨みつける令嬢もあれっ、いない? 私を含めてみんな見ていた。

 そして、みんなに和やかに挨拶された。

「なんて、お似合いの2人なのでしょう」

 あれれっ? 

「どうした、ミタリア? 周りの目が気になるのか?」

「いいえ、皆さんその……穏やか瞳? 温かく私たちを見守ってくださってるから」

(もっと、嫉妬の目を向けられると思っていた)

「当たり前だろ、舞踏会でのチココの一件、食糧難の一件で、ミタリアの株は貴族会、国民の中で上がり続けているのだからな」
 
 私の株? 

「そ、そうなのですか?」

「みんなはミタリアに話しかけたくても、俺と後ろから着いてくる側近リルが側にいるから、側によることも、話しかけもできないからな。まっ、話しかけなどさせないけどな、クックク」

 横で王子は楽しそうに笑い、意地悪そうな顔をしていた。

(王子のこういう顔は初めて見た)

 そんな私たちのところに「そこ、どいて!」と叫び、1匹のピンクが突っ込んできた。

(えっ、長い耳、丸い尻尾、う、うさぎ?)

 ゲームの時とは異なる、ヒロインの登場の仕方だった。
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