(完結)オフトゥン大好き黒猫令嬢と狼王子。王子は私を婚約者に選ばないでください! (手直しをしております)

深月カナメ

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五十四

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 会場の入り口で呼び係に名前を呼ばれて、リチャード様にエスコートされて中に入った。

 なかは、この前に行われた学生だけの舞踏会とは違い。
 中には多くの貴族が集まっていた。

 お昼過ぎから開催された舞踏会のためか、バルコニーも解放されて、中庭に出られる様になっていた。

 時折バルコニーから吹く爽やかな風と、中庭に咲く薔薇の良い香りが会場内に香っている。

「ミタリア、怖気付くな行くぞ」

「はひっ、リチャード様」

「なんだよそれ。クックク、可愛すぎだろ」

 さっきまでの緊張した王子とは違い、いつもと変わらない王子に戻っていた。

(落ち着いたみたいね?)

 中に進むに連れて私に注目が集まる。そして、令嬢たちは騎士団との訓練で、一回り体付きが変わった王子を見て頬を赤らめて。

 私になんであの子が選ばれたの? と王子の隣にいる私に鋭い嫉妬の視線を送ってくる。
 分かるよその気持ち……ほんと王子は素敵に男らしくなったもの。
 
 気付かないように、カッコ良すぎる王子を見上げて、ドキドキしていた。

「ミタリア、桃のジュースだって、飲むか?」

「……は、はい、桃のジュース? いただきます」

「なんだよ。俺の横で何か考え事してたのか?」  

 と、王子に覗き込む様に見られた。

「えぇ、えっと考え事というか……リチャード様が素敵だなぁって。リチャード様を見ている令嬢たちが頬を赤らめているわ」

 チラッと令嬢たちを見たけど、王子には興味がないらしく。
 私の手を引き、人混みを避けるように歩いて行ってしまう。

「あっ、リチャード様どこに?」

「黙って、着いて来て」

 王子が向かっていたのは側近リルと、近衛騎士二人がいる所だった。みんなに合図して彼らの背に隠れた。

「ふうっ、ジロジロ見られて気分が悪い。それに、俺のミタリアを睨むなんてな」

「え、リチャード様は気付いていたの?」

「あぁ、この会場内で気配サーチを使っている、今日、何か起きると父上が前に予想したんだ。で、何かすると言えば人族ーーカーエンと側近だと思い、奴らの位置をいま把握している」

「カーエン王子がですか?」

「それと、彼を手助けている者がいるかもそれない。目星は一応ついてはいるが……俺は信じたくない……ミタリア、絶対に俺が、いや俺たちで守る」

 王子は耳をピンと立てて会場を見渡した。そして彼の視線の先には軍服を見にまとったカーエン王子と側近がいた。

(こんな、大勢がいるの中で彼らは何をしてかすというの?)

 こちらに視線を向けフッと笑ったかの様に見えた、カーエン王子に緊張と喉がゴクリと鳴った。

(自惚れてはいないけど、私に笑った? まだ、彼は私を狙っているの?)

 



 そのとき、会場内が湧く。

 国王陛下と王妃殿下、生まれたばかりの王女様が壇上に現れたのだ。
 今日の舞踏会は王子の誕生会を兼ねているから、王子も壇上に向かうのだと思ったのだけど、王子はその場を動かなかった。

(……いまなら、プレゼントを渡せる?)

 用意した、ハンカチと栞は胸元に隠した、ポーチの中にしまっている。

 胸元を気にしつつ、一応王子に聞いてみた。

「リチャード様は、壇上に行かれないのですか?」

 壇上に視線を向けると、気付いた様で。

「俺は行かない……名前を呼ばれたら、ここで挨拶をするよ」

 と王子は言った。
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