野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ

文字の大きさ
17 / 171
第一章

15話

しおりを挟む
 アール君と急いでキッチンに向かったけど、パパとママは怒ってはいなかった。
 むしろ、シュワシュワを美味しそうにコップで飲むママと、密封容器ごとゴクゴク喉を鳴らせて、飲んでいるパパがいた。

「うまい、病みつきになる……何だ? この喉がピリリする飲み物は!」

「美味しいわ。コレ、エルバが作ったの?」

 ちょうど、冷やし庫で冷えて……飲みごろを全部飲まれた。

「そうだけど……パパ、容器のまま全部飲んじゃうなんて、アール君とシュワシュワが冷えるのを待っていたのに」

「すまん。これはシュワシュワというのか……仕事からの帰り、少し飲むつもりが、喉を通り過ぎる爽快感とピリリが美味くてな」

「ごめんね、エルバ。もう一度シュワシュワ作ってみて、ママが魔法で冷やすから」

「ええ、ママが魔法で冷やしてくれるの? アール君、冷えたシュワシュワが飲めるよ」

「おお、それは楽しみです」

 新しいピッチャーに水瓶から魔法水を入れて、さっき畑から採取したシュワシュワの実を、アイテムボックスから取り出して一粒入れた。

 この赤い実にママが食いつく。

「エルバ、その赤い実はなに? 食用なの? エルブ原っぱで見つけたの?」
 
「そうだけど……ちゃんと、食用だから安心して」

「わかった。――でも、見たことがない実で驚いたわ。エルブ原っぱに……まだ、私たちの知らない植物があるなんて。発見したエルバはすごいわ。コメ草の時もそうだけど、エルバには不思議な力があるのね」

 ――ドキッ!

「そうなのか、俺の娘は凄いな。ガハハハッ!」

 詳しく聞かれるかもとドキドキしたけど。パパとママは嬉しそうに笑い、それ以上聞いてこなかった。


 ピコン。

《調理レベルが1レベルに上がりました》

 調理レベル?

 なんと、いま"シュワシュワを作って"私の調理レベルが上がった。その調理レベルって――ただ、魔法水に赤い実を入れただけなんだけど……まっ、いいっか。

《エルバ様の調理レベルが上がりましたので。新しく"エルバのレシピ帳"を取得いたしました。シュワシュワの調理法をレシピ帳に載せますか》
 
 エルバのレシピ帳?
 私の新しいアイテム?

《レシピ帳に載せますか?》
 
 はい、お願いします。
 
 エルバのレシピ帳に、シュワシュワの調理法が載った。
 あとで、ステータス画面を開いて確認しよっと。

 

 ママはシュワシュワを冷やすために、氷魔法の「【アイス】」を唱えた。目の前に水色の魔法陣が現れ、シュワシュワが入っているピッチャーの中に、小さな氷がコロンコロンと増えていく。

「わぁ――氷魔法って綺麗」
「フフ、綺麗ね」

「キレイだな。俺には魔法の事はよくわからんが、面白いな」
 
「はい、面白いです」

 そして、ついに飲みたかった……冷やしたシュワシュワ。ママが魔法でだした氷で冷やされて、炭酸水がプクプク泡を出しコップにそそがれる。

「はい、エルバ、アール君。冷えたシュワシュワ」

「ありがとう、ママ、いただきます……ゴク、ゴクゴク、んんっ、喉がシュワシュワする。んん、冷えたシュワシュワ最高!」

「ほんとうです! エルバ様、パパ様、ママ様、冷やすとまた格別です!」

「ンン! ホントうまいな!」

「ええ、美味しいわね。みんなに、ものは提案なんだけど――これに果物を入れるのはどう?」

「果物? いれたい」
「僕も入れたいです」
「美味そうだな」
 
「じゃ、いま温室から持ってくるわね」

 と、ママが裏庭にある温室へ果物をとりに行った。

 冷えたシュワシュワに果物かぁ。
 炭酸水、シュワシュワに果物を入れたら。絶対、美味しいに決まってる!
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

【完結】 学園の聖女様はわたしを悪役令嬢にしたいようです

はくら(仮名)
ファンタジー
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にて掲載しています。 とある国のお話。 ※ 不定期更新。 本文は三人称文体です。 同作者の他作品との関連性はありません。 推敲せずに投稿しているので、おかしな箇所が多々あるかもしれません。 比較的短めに完結させる予定です。 ※

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

処理中です...