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本編
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しおりを挟む「…………は?」
突拍子のない提案──提案と呼べるものなのかどうかも怪しいが──に、反応が随分と遅れた。
ジニアはそれに気分を害した風もなく、寧ろ笑みを深くした。
『何だ、怖いのか?』
「怖いも何も、聞かれてることがよく分かりません」
『あー……そうだな。じゃあ、具体的に話すか』
考える素振りを見せていたジニアだったが、それもやめると、いつになく真面目な顔で話し出した。
『要するに、解呪すればいいんだよ。嘘から出た真ってわけじゃねえと思うが、あの娘の病気は確かに呪いの類だ』
「な……! 呪いなんて、そんな! 魔法があった時代にしかないはずじゃ」
そこまで言って、僕ははっとする。
魔法は、かつて人々が扱うことのできた不可思議な力の総称である。「かつて」であるから、もちろん今は使えない。時代とともに風化し、忘れ去られたのだ。魔法があったという事実さえ、今は物好きな人しか知らない。
そして、呪いもまた然りだ。魔法よりは認知度が高いが、それが何なのか、現代の民は詳しくは理解していない。
数百年前──それこそ、目の前にいるジニアが生きていた時代は、魔法や呪いの全盛期だったはず。ならば、彼が言っていることは信憑性を得てくるわけだ。
「魔法があった時代に付与された呪いが、今もまだ残り続けているということですか……?」
『ま、そうだな。何せ、当時の全人類の魔力を掻き集めても足りなかった俺の魔力で、直々に付与してやったやつだからな』
「…………あ?」
自分が出したとは思えないほどの低い声が馬車内を震わせた。今は王都を走っているが、馬車の外が一瞬静まり返った気がした。
『おー、どうどう。怒気が漏れてんぞー』
この人は、今何と言った。自分が、ローズを苦しめている元凶だとでも言うのか? 仮にでも敬われるべき王族であると言うのに?
僕が怒りで、目の前が赤く染まるような感覚を覚える中、ジニアは挑発的に嗤う。
『俺はな、この国の奴らが大嫌いなんだよ。例え今生きる奴らが、当時のクソどもに直接は関係しねえとは分かっていてもだ。嫌いだし、何なら全員殺したいとも思ってる』
そこまで聞いて、僕は自分を抑えきれなかった。
尊敬すべきジニアの胸ぐらを掴み、歯を食いしばる。そうしなければ、人として尊厳を踏みにじるようなことを口走りそうだったから。
『話は最後まで聞け』
ジニアは右の赤目を閉じて、呆れたように話を続ける。
『お前の知ってる通り、俺はずっと昔に死んでる。にも関わらず、お前とこう会話できてるっていうのは、つまり俺の魂が現世に留まり続けてるせいだ』
「だったら、さっさとあの世に行けばいい……! お前は人に仇なす存在だ。何でお前みたいなのが、国を建てた……──っ!?」
一瞬のことだった。僕には何が起きたのか全く理解できず、気づけば馬車の天井を背景に、僕はジニアに見下ろされていた。
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