令嬢に転生したけど婚約破棄されたので侍女として成り上がります。

北南東西

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「シェルエッタ様…あまり勝手をされては困ります。」
「はい…。」

ノゼッタお嬢様に粗相をしてしまった私は、絶賛セバスさんからのお説教を受けていた。

「まぁしかし、食事を運ぶことを許可したのは他ならぬ私ですし、ノゼッタお嬢様の心を開こうとして頂いた気持ちは伝わりました。なので、今回は一緒にノゼッタお嬢様に頼み込んで許しを請いましょう。」

セバスさんの慈悲深さには頭が上がらない。領主さまも見習って欲しいものだ。しかし、このままは問屋が卸さない、卸させない。2年間あの個室に籠るなんて寂しすぎる。彼女が寂しがっていると決めつけるのは良くないかもしれないが、どうせ仕えるなら楽しい家の方が私は良い。

「セバスさん。そのことなのですが、私にチャンスを下さい。」
「チャンスですか…?」

セバスさんは不安そうな顔をしながら聞き返す。

「はい、私にお嬢様との関係を改善するチャンスを下さい。」

私はセバスさんの目を見て答える。

「…わかりました。私も主からの指令で家をしばらく離れなくてはいけませんので、ノゼッタお嬢様のお世話は貴方に任せる他ありません。」
「はい!」
「しかし、私が帰って来る前に必ず先の件は許して頂くのですよ。」

それからして領主さまとセバスさんは家を離れた。1週間程、工房や農場の視察に出向くそうだ。
それと同時に私はノゼッタお嬢様攻略を始めた。直接顔を合わせたコミュニケーションは先の件でキツイと分かったので、手紙を通したやり取りから徐々に心を溶かしていく作戦にシフトした。

「先日は大変失礼な働きをしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。もし宜しければ、お返事の手紙を食器を返す際に添えて下さいっと。」

手紙を書き終え、トレーに添える。そして、トレー開かずの間の前に置く。しかしその後、返された食器には手紙は見当たらなかった。それでも、手紙は部屋の中には入ったので、きっとノゼッタお嬢様は読んでくれているだろう。
こうして、私からお嬢様への一方的な文通が始まったのだった。手紙の内容は、何の変哲もない日常の話題だ。庭の花が咲いたとか、買い物の時に若い女の子が好きそうな化粧品が売ってたよとか、そんな当たり障りない話題を少し脚色して私なりに面白おかしく書いてみた。様々な内容の手紙を届けが、やはりノゼッタお嬢様の反応は無かった。
お手紙作戦も失敗に終わるのかと、諦めかけていた5日目の朝食時に異変が起こった。返された食器に手紙が添えてあったのだ。
私は息巻いて手紙を拾った。確か私が書いた手紙の内容は私の髪についてだ。私の髪は少しクセがついているのだが、先日の夜に大雨が降っていたせいも相まって、朝起きると髪が爆発していたのだ。そのこともあって、ノゼッタお嬢様の頭の具合について聞いたのだった。
そして、手紙の返事には小さくこのように書かれていた。

「私も。」

ノゼッタお嬢様との初めてまともなコミュニケーションが取れたことに、思わず笑みが浮かんだ。
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