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しおりを挟む「セバスさん、2階にある開かずの間には誰が居るんですか?」
「開かずの間ですか。あぁ、ノゼッタお嬢様のことですか。」
このマーティナ家には現在私、使用人のセバスさん、家主のゼルレッジの3人が住んでいる。しかし、私が食事を作る際には4人分の量を作る。その内の1つは、セバスさんが例の開かずの間に持って行くのだ。あまり、お家事情を詮索するのは失礼かもしれないが、どんな人物か分からないと食の好みも分からないので聞いてみることにする。
「ノゼッタお嬢様は、ゼルレッジ様の実の妹ですよ。」
「え、妹さんがいらしてたんですか。」
「えぇ、それは活発で可愛らしいお嬢様でした。」
「でも今は…。」
「はい、2年前に奥方様のノミリア様を亡くしてからあの様に塞ぎ込む様になってしまって…。」
「えっ!2年も出てきてないんですか?!」
「それは私の不徳の致すところです。ゼルレッジ様もそうですが、お二人が1番辛かった時に支えて差し上げることが叶わなかった。」
「セバスさん…。」
「お部屋に籠ってることが悪いとは思っていないのですが、叶うことならまたお嬢様の笑顔を見てみたいものです。それはゼルレッジ様も思っていることでしょう。」
まさか、この家にそんな重いバックグラウンドがあったなんて。泣かせてくれるじゃないか。
ここは見習い侍女(領主さまには認められてない)が人肌脱ぎますか!
お節介かもしれないけど。
「セバスさん、今度から私がノゼッタお嬢様に食事を持っていきます。それとお嬢様に挨拶も済ませたいのですが構いませんか。」
「えぇ。構いませんよ。」
「ありがとうございます。」
---昼食時---
フッフッフ。もちろん挨拶だけで終わるはずないんだよなぁ。あわよくば、ノゼッタお嬢様の心を開いて、私のことを領主さまに認めさせるんだ。
コンコンッ
「はじめまして、ノゼッタお嬢様。先日この屋敷のお手伝いをさて頂いてるシェルエッタと申します。食事を持ってきたので、もしよろしければ私と召し上がりませんか?」
…反応はナシ。しかし、この程度は想定済み。よってプランBに移行!
「で、では昼食は扉の横の机に置いて置きますね。」
私はトレーを机に置き、距離を取る。これぞプランB!
お嬢様が扉を開け、トレーを取る瞬間を取り抑える。
扉から10歩ほど離れて待ち構えるが、流石にすぐに扉が開かれる気配はない。
我慢よ、我慢強く待つのシェルエッタ!
と自分に我慢を言い聞かせていると、ガチャリッと鍵が開く音がした。私はじっと身構え、扉が開くのを待つ。
扉が徐々に開き、扉の向こう側から手が伸びてきた。しかし、その手の先にキラリと光る手鏡があった。手鏡が私の姿を捉えると、その手はパッと扉の向こう側に引っ込み、扉が閉まってしまう。しかし、その前に私は走った。
「ちょっっっとまったぁーーー!」
予想外の手段でプランBを潰されかけた私は扉の前にダッシュし、ドアノブに手を掛ける。
「ねぇ!お嬢様!独りって寂しくない?よかったらお姉さんと遊ばなーい?」
こんな人に詰め寄られたら恐怖以外の何者でもない。しかし、そのことを気にもせずドアノブに力を込めると。部屋の中から慌てふためいた可愛らしい声が響いた。
「あ、あなたっ!正気でして?!こ、こんなこと私にして許されると思っているのですか?!」
「ははーん。ようやく口を聞いて下さいましたねお嬢様!失礼ついでにこのままご尊顔を拝見させて頂きます。」
年齢差があるのか徐々に扉が開いていく、このままいけば扉は開くだろう。しかし、お嬢様ははたまた予想外の一手を使った。
「ちょ、ちょ待っ!セバスに言いつけてクビにしてやりますよ!」
「へぇ?」
バタンッ
お嬢様の一言により私の力は抜け、私がしでかしたことを振り返る。
やっちまったぁーーーーーー!!
功を焦った私はお嬢様に対してやらかしてしまう。
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