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第二章
新たなる始まり
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花の都・ウルディアスの首都。公都は、古い歴史と荘厳さを兼ね備えた場所だった。初めて足を踏み入れて、この目で見た時は、夢でも見ているかのようだった。
幼馴染のハウエルと、小さな頃から首都の噂や事柄を話してきたし、学校の授業でも学んできた。本で読んだり話に聞いただけと、この目で実際に目で見るのとでは、当たり前ながら全く違う。
「なによ。その間抜け顔は」
馬車の小窓から外の景色を呆然と眺めていたミルフィは、はっと目を瞬いて車内に目線を戻した。向かい合わせに座るソララは、胡乱げにこちらを見ている。だが、その瞳にはどこか面白がっているような色が浮かんでいた。彼女は、今は人間の姿だ。商店街の建ち並ぶ通りの菓子店で買った小さな焼き菓子の箱を抱え、もぐもぐと食べている。
「だ、だって。初めてなのよ? 仕方ないじゃない」
少し膨れて、間抜け顔と言われた自分の頬を無意識に撫でる。と、隣で軽く笑う気配を感じた。気がした。隣には、静かに寡黙に座るルシアスがいる。あまり笑うことをしない彼だが、気のせい? と思って顔を向けると、気のせいではなかった。唇が、柔らかく笑んでいた。
「な! る、ルシアスまで」
赤面してミルフィは今度こそ膨れた。
「すみません。あまりにもあなたが可愛いもので」
「なっ!?」
さらりとそんなことを言われて、今度は別の意味で赤面する羽目になる。
「どうせ田舎者よっ。意地悪!」
レゼリュウス街を馬車で出発して十日あまり。ようやく最初の目的地である公都入りを果たした。丁度昼時に街へと入り、空は抜けるように青かった。大通りを沢山の人達が行き交い、馬車が往来する。通りに建ち並ぶ店の多さにも圧倒されていた。商業地の喧騒さは、他に類を見ない。マルテ様式の建造物が所狭しとひしめき合い、色とりどりの屋根の色がいっそう華やかさを醸し出していた。
花の都・ウルディアスの首都。公都は、古い歴史と荘厳さを兼ね備えた場所だった。初めて足を踏み入れて、この目で見た時は、夢でも見ているかのようだった。
幼馴染のハウエルと、小さな頃から首都の噂や事柄を話してきたし、学校の授業でも学んできた。本で読んだり話に聞いただけと、この目で実際に目で見るのとでは、当たり前ながら全く違う。
「なによ。その間抜け顔は」
馬車の小窓から外の景色を呆然と眺めていたミルフィは、はっと目を瞬いて車内に目線を戻した。向かい合わせに座るソララは、胡乱げにこちらを見ている。だが、その瞳にはどこか面白がっているような色が浮かんでいた。彼女は、今は人間の姿だ。商店街の建ち並ぶ通りの菓子店で買った小さな焼き菓子の箱を抱え、もぐもぐと食べている。
「だ、だって。初めてなのよ? 仕方ないじゃない」
少し膨れて、間抜け顔と言われた自分の頬を無意識に撫でる。と、隣で軽く笑う気配を感じた。気がした。隣には、静かに寡黙に座るルシアスがいる。あまり笑うことをしない彼だが、気のせい? と思って顔を向けると、気のせいではなかった。唇が、柔らかく笑んでいた。
「な! る、ルシアスまで」
赤面してミルフィは今度こそ膨れた。
「すみません。あまりにもあなたが可愛いもので」
「なっ!?」
さらりとそんなことを言われて、今度は別の意味で赤面する羽目になる。
「どうせ田舎者よっ。意地悪!」
レゼリュウス街を馬車で出発して十日あまり。ようやく最初の目的地である公都入りを果たした。丁度昼時に街へと入り、空は抜けるように青かった。大通りを沢山の人達が行き交い、馬車が往来する。通りに建ち並ぶ店の多さにも圧倒されていた。商業地の喧騒さは、他に類を見ない。マルテ様式の建造物が所狭しとひしめき合い、色とりどりの屋根の色がいっそう華やかさを醸し出していた。
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はじめまして! 襲撃から始まる悲しい物語ですが、その世界に生きる人物達の情感豊かな表現に、勇気をもらいました。素敵な作品に出逢えて嬉しいです、ありがとう。
ミルフィが愛おしいよ。困難にどうか負けないで、進んでいってほしいな。応援してます♪
人探しに次ぐ人探し――それだけ想いはつながっている。ハウエル、頑張れと応援したくなる。新たなる始まりは、まさしく一転して新たなる〜だった。そう来るとは。早く続きが読みたいよ〜(新たなる始まりまで)