【全5話】皇太子が探した女神様は悪女と名の知れた公爵令嬢【完結】

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ヴァイオレッタ公爵令嬢。この名を知らない人はいないと言われるほど悪い噂が絶えない。貴族間でいつも噂され話題に上がる名前。

男をとっかえひっかえし、かなりの男好きで散財しかしていない彼女は家からお金を渡されなくなり遂には男性からお金を巻き上げそのあとに捨てるという最悪の悪女だと言われていた。

踊り子と貴族の間に生まれ10歳まで平民として暮らしており血を重要視するこの世界では公爵家の血が平民に流れるとして公爵家の庶子と認められた。

「元々気が荒く公爵家は手の付けようがないと聞いたことがありますわ…。」
「やはり平民は平民の出。半分高貴な血が流れていようと純潔ではないだけの事はありますね。」
「そんなことより！もうじき皇太子殿下の妃選抜が始まりますね。」
「もうそんな時期でしたか…。私はすっかり忘れておりましたが貴方はやる気に満ちているようで…」
「貴族の令嬢なら誰しも妃に選ばれる可能性があると言いますのに自信がないとは。」

社交界では様々な情報が飛び交い話は皇太子殿下の妃選抜の話になっていた。

妃選抜…。それはいまだ空白である婚約者の席を決めるもの。この国の貴族なら自由に選ぶことができ皇太子が出した条件に当てはまる令嬢なら権利は平等に与えられている。

皇太子が出せる条件は3つまで。

一つは毎年恒例の年齢。皇太子の年齢から誤差5歳までと定められた。そしてその年齢に該当する令嬢は必ず皇太子殿下と2人で面会すること。そして3つ目が社交界で皇太子を見つけても婚約者について何も触れないこと。それを破った場合はその場で権利を失う。

今までの皇太子なら髪が長い女性などと容姿の条件や身分の条件を入れる人が多かったが今回の皇太子はとにかく社交界などの行事で邪魔させたくない様子。国を守るために自分の婚約者より国民たちの方に関心が言っていると早速噂が流れる。それでも婚約者は婚約者。気に入られればその座につける。皇太子の性格を分析しどのような女性がタイプなどを調べそれを演じる。

1年かけて婚約者を決める期間を妃選抜と人々はいう。

一対一で話してやるからそれ以外では触れるな関わるなと条件を通して伝えてきた皇太子。皇太子はみんな同じような服装に同じ会話、話し方にうんざりしていた。国民を平民と割り切り身分で見下す貴族たちが理解できなかった。

皇太子の名はフィズケル。お忍びで街に行くこともしばしば。国民にはあまり顔は知られていなく簡単に街に溶け込む。今日は街といってもその日の食べるものもない貧民街。その現状を把握するべく貧民街に向かった。

そしてそこにあった光景はみんなが柔らかそうなパンを喜んで食べているという予想ができない光景だった。

「どうして皆さんパンを…」

失礼な質問だとしても聞かずにはいられなかった。

「あぁ…。これかい？これは先ほど女神様が与えてくれたものだよ。」

「女神様…？」

「えぇ。名前を聞いても名乗ってくれないんだよ。だからここら辺のみんなはその方の事を女神様と呼ぶ。月に数回来ては食べ物をくれるんだよ。貴方は街の方かい？」

「そんなところです。その女神様という方はどちらに…？」

「さっきまで姿が見えてたんだけどねぇ。北に歩いて行ったからそっちの方に行けば会えると思いますよ。」

「ありがとうございます。では次はここの皆様で服でも買ってください。」

そういいながら金貨を手に握らせた。のちに女神様にちなんで男神様と呼ばれていたという。