おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅

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9.君は、どうしたいのか?

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「彼から暫く住み込みでウチで働くように言われたんだろうけど、困ったわね」

 命令絶対は分かる。けど、意思はありますよね。

「私は」
「とりあえず中に入ろっか」

 わざわざ立ちっぱなしで話さなくてもいいじゃないと気づいた私は彼を部屋に招き入れた。

「どうぞ」
「ありがとうございます」

 彼には独断でミルクタップリの珈琲をだした。ちなみに自分はブラックだ。

しかし、なんというか。

「自分のプライベートエリアに人を入れるのは2回目か」

2回とも目の前の騎士様というのが、面白いというか。

「さて、少しは落ち着いたかな。私、早く帰りたかったから殿下には詳しく聞いてないのよ。それに、本人と話をしたかったし」

 なによりもドレスが凄く嫌なのよね。歩くのすら難易度が高いと思うのは私だけかな。

「城で、私と会われましたか?」
「レインさんと?会ってないですよ。あ、なんちゃっては居ましたけど」
「なんちゃって…。おそらく殿下の近くを警護していたはずですが」

何故に困惑してるのよ?

「黒髪で青い目で背も貴方と同じ人はいたわ。ただ、レインさんと全く違くない?」
 
話が噛み合わないな。

「あの者と私が違うと分かるのですか?」

いや、だって。

「別人じゃない。あの一癖も二癖もありそうな人でしょ?」
「ブッ」

飲みながら吹き出すな。

「はい、タオル」
「すみません」
「よくわからないけど、君は騎士でしょ? 厨房にいる人じゃないわよね」

 正直、短期間でも厨房にいてくれて助かった。しかも、無口な彼とはとても働きやすかった。

「私は双子なんですが、産まれて直ぐに一人はいない者として処理されたので戸籍はヴァンリーフのみ登録されています」

 小説であるパターンの一つよねぇ。

「それで?」
「私達は、殿下の任務により陰でとして入れ替わり生活をしております」
「その陰は主に私がお城で会った子かな。いや、わかりますよ」

 そんな事まで分かるんですかという驚きの顔をしてるけどね。君は、変装は得意みたいだけど、行動や言動は騎士さんだもの。

「それで、レインさんはどうしたいんですか?」

 いくら縦社会でも、否と言う権利はあると思うの。

「此方で働かせてもらえますか? ご迷惑はかけないようにします」

え、そっち選んじゃう?

「顔色がまだ良くないですね」

 不意に伸ばされた手が、スルリと頬を掠めていく。

「護れなくてすみませんでした」

 ただ頬に触れられただけなのにゾクゾクする。

「いや、自分の身は自分でなんとかするから。お菓子もあるから、ちょっと待ってて」

 その手から逃れる為に戸棚にお菓子を取りに行く。

「くっそう、年下なくせに。まさか、ワザとだったりして」

見た目は硬派でも違うのか?

 ちらりと背後に目をやれば、彼はキッチリ座り優雅な動作で飲んでいる。

 そこだけ場違いな空間が仕上がっているな。

「敬語なしで話すけど、私には防御壁があるから本当に大丈夫なの。あ、これナッツのクッキーね」
「ありがとうございます。あの、殿下から聞いた話では」

そっか。まだレインさんには話をしていなかった。

「先程お城でざっくり説明は済んでいますが攻撃する力を防御に変化させる事が可能なったんです」

納得いかないって顔ですね。

「えっ、ナオ様!」

 ドレスから着替えた私は、白いシャツとロングスカートというシンプルな服装をしていた。

「だって、疑ってるじゃないですか」

 そのシャツのボタンを外して袖を抜き、透けないように着ていたタンクトップも脱ぎ捨てスポーツブラのような下着になる。

「ちょ」
「此処、魔力量が多い君なら触ったほうが、分かりやすいのかも」

 彼の左手を半ば強引に心臓近くにもってこさせた。

「……埋め込んだのですか?」
「そう。光ったね」

 タンクトップをずらして見せた所には約3センチ程の透明な半球の形をした物が顔を出している。

「私の攻撃は赤い光がでる。それを防御壁に変換すると緑色になるの」

 透明の石が赤色から緑へと変化していく様は美しい。

「綺麗でしょ?」
「身体への負担は」
「多分大丈夫」
「そんな曖昧な!」

 私が掴んでいた手を振りほどく彼の顔は真っ青である。

「魔塔のおじいちゃんに作ってもらったんだけど試作品なの」

 ちなみに試作品を試すと言ったのは私である。

「どうして、そこまでして」

どうしてですって?

「人の命を奪うより、よっぽど良いじゃないですか」

 無意識とはいえ、命を奪いたくないに決まってるじゃない。

「何? 何か…え」

 レイン君に強く抱きしめられていた。

これって、どういう状況?

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