赤の女王

みや いちう

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二章

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◆◆第二章 
 「寒い……寒いよ」
  その夜、彼女は極寒の石畳を舐める風に吹き荒ばれていた。まだ頑是ない彼女をくるむのは、煤けた水色のドレス。床に敷かれた藁をせっせと小さな手で集めて、なんとか身に纏う。
 「寒い、寒い、お父様、助けて……お母様、許して」
  その銀髪は白く染まり疲れ果て、牢の柵を掴むその手は凍てついている。吹雪はこの牢を白く冷やしていく。
 「誰か、誰か助けて……寒い、ここは寒い……誰か、助けて!!」
  急に、彼女の凍えるような冷たいまなざしにのぞき込まれた気がして、キキはこの恐ろしい夢から覚めた。

 「はっ!」
  光射すベッドの上にて目覚めたとき、キキは泣いていた。あの少女は何だったのであろう。氷色の瞳をした、美しい少女。あれは、どこかで見たことがある――。ふいに、隣のあたたかさに気が付いた。
 「あらん、おはよう、キキちゃん」
 「ひゃっ」
  キキはおののき、目をしばたいた。いつの間にか自分の粗末なベッドに、麗しいジョセフィーヌが眠っていたではないか。
 「ジョ、ジョセフィーヌ様、何故、こんなところに」
 「いやーん、ごめんねえん。昨日ちょっと怪しげな男を追いかけていたら、そいつがここの使用人室に逃げこんだみたいでねん。だから下女のみんなの部屋にお邪魔していたら、最後のキキちゃんの部屋に入って、あったかそうだから一緒に眠っちゃったのん」
 「あ、あ、はい……」
  まあ、女の人だし、いいか……と思っていたキキであったが。
 「それにしても、キキちゃん、あの大騒ぎに気が付かなかったの? よっぽど怖くて長い夢を見ていたのねん」
 「え、ああ……はい」
 「何かうなされていたわね。どんな夢だったの?」
 「えっと……」
  何故だろう。何か言うべきじゃない夢のような気がする。その予感にキキがしどろもどろになっていると。
 「ジョセフィーヌ、お前何をやっているんだ!」
  ドアを開けて、青の軍服を纏うアランが飛び込んできた。
 「あら、アランじゃない。昨日はキキちゃんのベッドがあったかそうで、一緒に寝たのよ」
 「一緒に寝たあ!?」
  アランが思わず大声を出した。それからキキをうろんげに眺めて。
 「……お前、本当にこいつと寝たのか」
 「え、あ、はあ。それが何か……」
  ふうと、アランが色気のあるため息をつく。
 「あのなあ、お前……」
 「まあ、アラン、げすいわねえん。さすが四捨五入して三十路。発想がおじさんよね。本当にただ添い寝していただけよ」
 「三十路は関係ないだろ! つったっていくらお前が女に興味ないおかまだとしても……」
  え? キキの顔から色が失われていく。
 今、何とアラン様は言ったのか。おかま……女に興味ない、おかま……。
 「ええええええええ、まさかジョセフィーヌ様、男でしたの!!」
 「そうよん、ばれちゃった?」
まるで悪びれず、愛らしく小首を傾げるジョセフィーヌに、キキはひいいと悲鳴をあげ、パニック状態になった。
 「あらん、大丈夫よん。私男にしか興味ないからねえん」
 「んなこと言われましても! いや、だって!」
 「あ、あのージョセフィーヌ様あ……」
  この騒ぎを聞きつけたか、下女の一人がキキの部屋のドアを開いた。
 「女王陛下がおよびでございます。どうかお急ぎ遊ばして」
  これにジョセフィーヌは「はあい♪」と答え、「じゃねん」と部屋を辞した。
ジョセフィーヌが去ったのち、キキは茫然としていた。しかし、その後で急に、頬を紅潮させて、彼女には珍しく大声で叫んだ。
 「や、やっぱり私ジョセフィーヌ様に文句を行ってきます! いくらおかまさんでも男性と同衾することになるなんて!」
  「……やめた方がいい」
これを怖い顔のアランがいなした。
 「お前、あいつの前歴を知ってるか」
 「え」
アランがほうっと息をもらし、肩を落とす。
 「あのな、あいつは元海賊なんだ」
 「えっ」
 「それも普通の海賊じゃない。七海の海を制覇し暴れまくった、残虐非道にして最恐の海賊のお頭だ」
  アランはそうしてキキの耳元で囁くように。
 「べスに捕まって心を入れ替えたらしいがな。だが現役の頃は、拷問暴行なんのそのだったぞ。男にも、女相手にもな」
 「ひっ」
  キキは絶句した。あのお優しそうなジョセフィーヌが、そんなに恐ろしい過去
を――。
 「だからお前もあまりたてつかない方がいい。この城の女はみんな、怖いからな」
 「は、はい」
  キキは恐る恐る、そしてゆっくりと頭を垂れた。
 「そういえば、昨日の騒ぎとは何だったのですか?」
  ふいにキキが尋ねると、アランが苦々しげに答えた。
 「ああ、それはな……どうもいま巷を荒らしまわっている……」

「パンティー泥棒~?」
  場面は玉座の間に移る。紅茶を口に含んで干してから、白の玉座に腰掛けるべスが訝しげに声を出した。これへアランとジョセフィーヌが言葉を継ぐ。
 「ええ、陛下。どうも貴族庶民問わず夜中にその乙女の……パンティーを盗まれる事態になっておりまして」
 「ついには昨夜、ここで働く者たちのパンティーも盗まれたみたいなのん」
  「昨日の大騒ぎはそれか。私の部屋にまで騒ぎが聞こえていたぞ」
  テイーカップを置いて、べスがほうっと息をつき目を眇める。
 「で、お前のパンティーは大丈夫だったのか? ジョセフィーヌよ」
  これにジョセフィーヌは実に美しく笑んだ。
  「もちろん私の勝負下着もやられましたわ。ですから捕まえた暁にはたっぷりお礼を与えてやろうと思いますのん♪」
  気の毒なパンティー泥棒だ……とキキはこれを聴き心底思った。
 「まあ、民の人心を安堵させる為にも、犯人は早く捕まえなくてはいかんな。ちなみに、私の勝負パンティーは無事だったのだろうね?」
  べスが問いかけると、碧髪の下女の一人が進み出でて言った。
 「それが、陛下のパンティーだけはなぜかご無事でした。どうも、紫色の渋すぎるデザインをうら若き乙女のものと思えなかったようで」
  そうして恭しく頭を垂れ、下女は去っていく。べスはしばしにこにこしていたが、そののちうふ、とひときわにこやかに笑んで。
 「懸賞金をかけよ! 犯人は車裂きか私がうっかり焼き殺してやろう!!!」
と嵐が吹き荒れた。

  「という訳で」
  その夜、自分のパンティーがおばんくさいという理由で盗んでもらえなかった女王べスは、珍しく怒りをあらわにして、やや高揚したような声音で、こう啖呵を切った。
 「奴は私がこの手で焼き殺さん。今日だけは女王べスでなく、下女のエリ―としてな!」
 「陛下……」
  キキは、自分と同じ黒のお仕着せを纏ったべスの姿に、思わずため息をついた。洗濯係の下女として身分を偽り姿を隠し、直にとらえてやろうと言いだしたのは無論べスの方だった。――なぜかジョセフィーヌも下女コスプレをしている。
 「な、なぜジョセフィーヌ様まで」
  これにジョセフィーヌがくす、と微笑し小首を傾げる。
 「あらん、決まっているじゃない。女王に先に焼き殺されたらつまらないもの。陛下、ここは真剣勝負よ」
 「ふん、いいだろう。どちらが先に犯人を殺せるか勝負だ」
 「あ、あの……」
  しどろもどろになるキキなどお構いなしに、二人は眼をぎらつかせた。
 「バトルスタートだ!」
  そうしてその宵も三日月が空に上がった。洗濯干し場に、折れればすぐ行ける距離の塔に、闇に紛れて自称下女たちが顔をそろえた。
 「本当に、来るんでしょうか……下着泥棒」
  キキが不安げに目を上げると、先ほどの碧髪の下女がええと顎を引いた。
 「おそらく、来るでしょう。今日はやけにおばんくさい陛下のパンティーと一緒に、巷で人気の可愛らしい若々しいデザインのパンティーを餌として干しっぱなしにしてありますから」
 「すごい失礼な下女だなお前は。まあ、なんにせよ泥はとっとと捕まえなくてはならん。早く現れて欲しいものだ」
  キキはこういう時、存外好戦的なべスが冷えたまなざしをしているのに気が付いた。
(そうだ、陛下は……)
 十年前、家族ごと焼き殺されたあの事件は当初、物盗りの仕業だという者もいた。王冠や宝飾が一切盗まれていないことで、その説も自然に消え去ったが。
(きっといやなことを思い出すので、早く捕まえたいと思われるのだわ……私も協力しなくては)
「きた! 怪しい人影!」
びくりと、キキは身をこわばらせる。見れば禍々しいまでの三日月のもと、物干し台に何か怪しい影が動いている。
 「あいつだ! 死ね!」
  べスが髪の毛を遠投し、その後でジョセフィーヌがカラトスを放る。
 「ぐわああ」
  燃え盛る剣と冷えた短剣に襲われた男は、のたうちもんどりうって草原に倒れた。
 「やったか!」
  しかしキキは、その正体を素早く見抜いた。
 「……陛下、あれ」
  べスもジョセフィーヌも眼をしばたく。
 「アラン様じゃありません?」

「いやあ、まさか見張りにきてうっかり見張りに殺されかけるとは、思いもしませんでしたよ」
  べスの炎によってアフロ頭に変じたアランは、頭をかきかき、嘆息した。
 「俺はただ陛下のおばんくさいパンティーがご無事かと、気になって参っただけだというのに」
 「え、なにこれ? みんな私に焼き殺されたいのか?」
 「陛下、落ち着き遊ばしてん。アラン様はただ陛下のパンティーをまじまじと見たいがために来たのですわん」
 「ジョセフィーヌ、お前は黙ってろ」
  塔の一室にて歓談する三人に、思わずくす……とキキが微笑む。
 「とまあ、夜も更けてきましたし、もう出ないのかもしれないですね」
  碧髪の下女がそう言って、
 「一応、陛下のおばんパンティーを見てきますわ」
  と、部屋を辞した。
 たちまちみなが話に興ずる。
 「いやーしかしまさかアランに変態趣味があるとはな」
 「だから違いますって陛下! 俺はただ陛下のパンティーのご無事をですねえ!」
 「あ、あの」
  その折、キキはようやっと大切なことに気が付いた。そしてそれを口に出した。
 「今更ながら、あんな下女さん、いましたっけ」


「ほーほほっほほ」
  碧髪の下女に扮したヨルノディアの使徒は、高笑いをしながら物干し台に近づいた。
 「この城への侵入も、容易だったわ! 予行のつもりで奪った貴族のパンティーも、庶民のパンティーも、思いがけず高く売れたし! あとはこのうっかり女王のおばんくさいパンティーを、あの方にお渡しするだけ」
 「待て!」
  そこへ急ぎ女王とジョセフィーヌ、アランにキキが駆け寄って輪になり下着泥を押しとどめようとする。べスなどはもう髪を抜いていた。それから叫んだ。
 「私のおばんくさいパンティーを返せ!」
(陛下、ついに自分で言っちゃった……)
 キキがそう思ったとき、スパイがけらけらと笑い出した。
 「嫌よ、これはこの上なく美しいあの方への最高の貢ぎ物! 愛するあの方のため、渡すものですか」
 「……ならば焼き切れよ!」
  女王の剣が燃え盛り、宙を切った。その時。
 「くくくく」
  どこからか、男の笑い声がキキの耳に入った。聞いたことのない声だ。どこか甘く、低く、聞いたすべての者をとろかすような――。
 「閣下! 」
  キキはおののいた。スパイは化粧の落ちるほどの滂沱の涙を振りこぼしていたのである。
 「愛する閣下! 私めが、やりました! これを、あなた様に……」
  あたりに不気味な程の静寂が訪れる。風がない。草も花も、あまりの恐ろしさに身じろぎさえしない。
 「奴か……!!」
  べスがそう忌々しげにつぶやくと、キキの前にアランとジョセフィーヌが立った。
(何か、来る……んだ)
 突如、暗い空に禍々しい赤光が射した。すると、空に小さな穴があき、そこから何か、まがまがしい気配が感じられた。
 「ひっ……」
  キキは怯え、思わずアランの背に隠れた。あれは、何だ……?見てはいけないもののよういに思った。黒き、黒き、黒衣に隠れた長い腕。
その腕は恭しく捧げられたパンティーをつまむと、すぐに穴の中へ去っていった。
 「よくやった。ご苦労だった」
 「閣下! では私めをあなたの下僕に……」
 「いや」
  黒き低い声は、なだめるような調子で言い捨てた。
 「お前はここで死になさい。では、さようならだ」
ボッ。次の瞬間、スパイの体に漆黒の炎が点じられた。
  「ぎゃあああ熱いいいいいいいい閣下ああ閣下ああああ」
  そのまま彼女は炎の渦になって焼き切れ、絶命した。


 「残念ねえ。あの男の手先なら、生け捕りにして情報を漏らさせればよかったわん」
 「……それを恐れて焼き殺したんだろう。自分を愛する女を容赦なく切り捨てる。あいつはやはり、恐ろしいものだ」
  焼け焦げた黒の死体を下男たちに埋めさせている間、ジョセフィーヌとアランが口々に言った。女王はしばし黙っていたが、ややあって白んだ空のした、口を開いた。
 「……ああ、こんな真似をするのは残忍なあの男しかおらんな」
 「ええ」
  べスの一言に、ジョセフィーヌもうなずく。
あの男、あの禍々しい腕の主。甘い声。むごいスパイの処断――。
 「陛下、あの男とは……」
  キキの問いかけに、べスが重々しく応える。
 「この夜を統べるもの、魔王だよ」
 「えっ」
  陛下は、魔王に魅入られていた、のか……? 
  キキの胸はふさがり、何の言葉もなかった。


◆◆第三章
  <魔王は闇の世界を統べる王――。自らと契約した者を自らの下僕とし、その膨大な力を分け与える。魔王を倒す術はなく、封印の五芒星によって冥界に送ることくらいしか対処の仕様はない>
 そうまで読んでから、キキは古書を置き、城のライブラリーを辞した。その顔はショックに打ち沈み、暗く陰っている。
(魔王は大国の王、女王を次々呪って傘下に入れ、憎しみを糧としてこの世界を闇一色に染め上げようとしている。女王はそれを止めるおつもりだ。その命に代えても――)
 しかし、とキキはさらに思考を巡らせた。
(陛下は己が命を賭してまで、なぜそうも魔王をその手で殺したいのか……もしや何かあったのではないか)
「キキ、視察に行くぞ! 支度をしなさい」
  そこで、女王のきりりとした声音に思考を破られ、キキははっと我に返った。急ぎ腰をあげ、図書館を出る。
 視察先の街は商人町人入り混じり、大変な活気に満ちていた。そこで目立たぬよう辻馬車をゆっくり走らせていく。
 「ここは平和だが、今、ここをめぐる政情は不安定な状況にある」
  そこで、キキの隣に腰掛けた女王がぼそりと呟く。
 「魔王が傘下の国を増やしている。その筆頭が侵略を続けるヨルノディア帝国だ」
  「……大帝を毒殺し、ご自分が帝位を奪った、あの女帝の治める国で……」
  「そうだ」
  女王の重々しい頷きに、同乗するジョセフィーヌもアランも、黙りこくっている。
  「あの女はもはや悪鬼と化している。人間ではない。悪魔なのだ。話し合ってなんとかなるものではない。隙を見れば殺す。キキ、だからお前もそのつもりであるように」
  「え……」
キキはこの女王の厳しい言いぶりに目を見開いた。弱者にたかる真似はしない、と、支配地政策を是としなかったべスが、ここにきて話し合いも持たず、即座に殺す、とは……。
 「陛下、しかし話し合いの場を持たれた方が」
 「いや、持たぬ――持つまでもない」
 「ですが武力で得た平和など――!」
 「キキちゃん!」
  鋭いジョセフィーヌの声が走り、キキは思わず言葉を詰まらせた。
 「それ以上、女王のお言葉に逆らってはならないわ」
  キキは恐る恐る女王の顔に目をやった。
 「焼き殺されるわよ」
  その顔は凍てつき、眼だけが憎しみに燃えていた。


 領地視察はこのような結果に終わった。城に戻り、一人厨房に入って昼食のパンケーキを作っていたキキは、思案にあけくれていた。
(おそらく陛下は支配地政策の巨魁、ヨルノディアさえ滅ぼせばこの世の闇が払えると思っていらっしゃる。けれど、もう魔王によって闇に覆われた世界は、軍靴の音高く手を取りつつある。もはやヨルノディアという魔だけを払えばいいというものではないのだ)
 しかしそれならばどうすれば――。そう悩んでいる間に、キキはお手製のパンケーキを焼き焦がしてしまった。
 「あっいけない」
  急いで火を消し、フライパンからケーキを皿に逃したが、黒焦げになったそれはもう食べられそうになかった。
 「ああ、やっちゃいました」
  そうため息をついてから、キキははっとして、
 「そうだ、これだわ!」
  と一人歓喜に叫んだ。


翌月のよく晴れたある日に、城内が騒がしいことに騎士団長アランは気づいた。先ほどからコックやパテイシェがおおわらわで、小麦粉、澄んだ水、骨つき肉に寝かせたパンにジャムを外へ運び出している。向かう先は前庭のようだ。思わずアランがついていく。
 「こ、これは、一体……」
  アランは前庭の景色にあんぐりと口を開けた。そこには世界各国の旗が天高く飾られ、簡易のキッチンが並べられ、城に垂れ幕までかかっている。そこには
【ようこそおいでませ、フィラードシェルドへ!】
  「な、何だこれは一体、誰が指図している!」
  あきれながらもアランは大声を出す。そこでせわしく働いていたキキが飛んできた。
 「ああ、アラン様、手伝って下さいます?」
  「何? キキ、これは何の真似だ。言ってみろ!」
  あきれ半分怒り半分のアランのこわもてに、皆が怯える。しかしキキはまるで悪びれなかった。
 「これは我が国の庶民に伝わる謝肉祭、いわゆるお料理対決です」
 「は、はあああ?」
  アランがますます渋い顔つきになる。キキはなおもめげずに。
 「我が国の庶民に伝わる伝統なのです。既に各国に使者は飛ばしました。つまりは、仲を深めたい相手を呼び、料理の腕を競った後で一緒に食事をするのです。こうすることで、一体感が生まれ仲も睦まじうなります」
 「ば、馬鹿かお前。そんなので仲良くなる訳ないだろう! 大体誰の名前でこんなことを」
 「びらもちらしも使者もすべて私個人の名前にしてあります! 責任はすべて私が取ります! お願いです。どうか協力して下さい。これには料理で仲を深める以上に意義があることなんです!」
  キキの真剣なまなざしに、アランも渋い表情をほどいていく。
 「だが、こんな催しに緊迫した現状で一体だれが……」
 「フランセーヌ王国王太子殿下および王太子妃殿下ご入来!」
  その時であった。城のアッシャーが、ヨーロピアンヌの古き貴顕の代表格、ヨルノディアとも密接なフランセーヌの王太子、王太子妃の到着を告げた。それからも続けて。
 「ブリンタリア帝国女王、ご入来! 」
 「エスパーニャ王国、国王陛下、並びに妃殿下ご入来!」
と、様々なヨーロピアンヌの貴顕が数多押しかけ、芝の生えた前庭は古き貴顕でいっぱいになった。
 「な、何だと……」
 「あらん、すごいわねえ」
  白のレースで袖口を隠したデザインのドレス姿で、ジョセフィーヌも現れた。彼女はキキを見やり、にこりと笑う。
 「考えたわね、キキちゃん。女王直々の会談のお呼びでは政治的に支障が出るけれど、その腹心のお招きならば私的なものとして、あくまで内々にこちらの顔を立てることが出来る……」
  それに……と、ジョセフィーヌがにっこりしつつあたりの王侯貴族を見回す。彼らは皆、今日招きに応じた理由を様々言い繕いながら、本音を漏らしている。
 「確かにこの国と親しくなるのは、敵対するヨルノデイアの機嫌を損ねるかもわからない。しかし、いかにヨルノディアの女帝の機嫌を損ねようと、このフィラードシェルドとの貿易に支障が出てはたまらん」
 「ましてや支配地政策は長く続くものではない。いつか必ず反乱の種が芽吹き、面倒なことになる。そうなる前に自国のみの力で大国になりあがった、この国の施政を見ておきたかった」
 「それに国民感情の件もありますわ。ヨルノディアの女帝の意に反して、多くの国民は先の大戦で疲弊し、これ以上の戦争を望んでおりません。それならばこの平和主義ともとれるような政策を打ち出すフィラードシェルドと親しくしておいた方が、のちのち得策ではございませんか」
  ふふ、とジョセフィーヌが声を漏らしてキキを見つめるので、キキも嬉しくなって笑顔を返した。そこへ。
 「これは何の騒ぎだ?」
  と、女王べスが美しい琥珀色のドレス姿でやってきた。
 「陛下、これは……」
  アランが口ごもっていると。
 「なにやら久しく見ない顔がそろっているな。どれもヨルノディアと親しかったはずだが」
とべスが目を眇めた。これにキキは震えを押し殺しながら。
 「私が独断でヨーロピアンヌの貴顕の皆さまをお呼びしました。これを手伝わされたコックもパテイシェも下女にも罪はございません。どうぞ、罰するならば私を罰してくださいませ」
  ――これを聴き、べスはほうっと息をつくと、その後でにんまりと笑った。
 「そうか、今日は謝肉祭であったのだな。キキ、手配の方、よくやった。礼を言う」
  キキの顔に光が射すようであった。キキは涙を流しつつ、
 「はい!」
と頷いた。


「ではこれより、各国VIPによる、お料理対決を始めます!」
  キキが音頭をとると、抜けるような青空のもと、各国の女性陣が続々と割り振られたキッチンに入った。
 「ルールは簡単! 今から私が出す問題の料理を、その場で調理して提出してみせること!
何度失敗してもかまいません! 制限時間は六十分です!」
  この騒ぎに、王都の町民商人も続々と集って、やんややんやと盛り上げてくれる。心なしか女性陣も緊張に顔をこわばらしつつ、口元は緩んでいるようだ。
 「では、今回のテーマはこれです。じゃじゃん!」
  キキが思い切り看板の布をはがす。そこには。
   【東洋の伝説の料理・OMISOSHIRU】
とあった。しばし女性陣、黙りこくる。
 「これはいわゆる母の味、です! これが出来ないと嫁いけません! 作り方は簡単。今から配るお水を沸かし、その中に具を入れだしをとりあるものを入れ完成です! ちなみに審査員はこの王都の町民から選びました」
  キッチン奥には、テーブルにつきにまにましている町民の姿があった。
 「それでは、ようい、ドン!!」
 「な、何ですって……」
 「OMISOSHIRUって何よ。私にはわからないわ」
 「でも出来ないと嫁にいけないくらい、東洋ではありふれたメニューなのでしょう」
  皆がひたすら清水とにらめっこをしている間に……。
 「く、ふふ……」
  この場に東洋の小国、ヤーパンヌ出身の姫がいた。彼女はヨーロピアンヌのさる王族に嫁いでいたが、長らくこの味噌汁の味を忘れたことはなかった。彼女は黒髪をたなびかせ、自信満々の笑みを湛えた。その右手には鍋が、左手にはみそが。
 「ふふ、みなさんご存じないようね。今がチャンスだわ! こっそり作って、私がNO1に提出してみせる! ふふ、まずは水を沸き立たせ、かつおぶしを入れて、または昆布か臓腑を抜いたにぼしでだしをとる! 続いて豆腐、ネギを刻んで入れ、沸騰した後にあるもの、つまり味噌を投入する! おお、よい香り!」
  沸き立つ鍋に味噌を入れ味見をし、姫は高らかに言い放った。
 「ふふっ。悪いけど、この勝負、頂きね!」
  はっ。――その時姫は、自分のセリフがだだもれだったことにようやっと気が付いた。
 「かつおぶしっかつおぶしよっ」
 「またはこんぶか煮干しでもいいって言ってたわね!」
 「早く、ネギを刻まなくてはっ」
あたりはもうしっちゃかめっちゃかの騒ぎである。町民たちは腹を叩いて爆笑し、料理を作る女性陣たちも、楽し気に汗をかいている。
 「くうう」
 「まったく人のことは言えないが、あなたもなかなかのうっかりさんのようだ」
  しおれるヤーパンヌの姫へ、あたりを見回っているべスが笑みを向ける。
 「あなたにとっては失策だったろうが、おかげで会場はおおいに盛り上がった。ありがとう」
  べスの美しい神々しいまでの微笑みに、姫はどぎまぎしたのか、赤面しながら、
 「はっはい」
と答えた。
 「どうぞ、ゆっくりこの国を楽しんでいってくれたまえ」
  べスはそれから、ヨルノディア懇意の国々のVIPと親しく語らいながら、キッチンをめぐっていく。キッチンのVIPは皆々楽しんでおり、ヨルノディアとの会談ではついぞ見せなかった明るい笑顔をべスには見せていた。中には、
 「ヨルノディアの傘下に入っていたが、そこを抜け、こちらと同盟を結びなおしたい」と内々に申し出る国も一つならずあった。
 「何だか妙だな」
その異変には女王付きのアランが誰より先に気づいた。
 「どうしたのだ、アラン」
 「いや、普通お料理対決しただけで、ここまで打ち解けるものでしょうか。皆、面相も変わって清々しいような……」
 「あ、それは」
  忙しく立ち働いていたキキがやってきて、皆に配っていた水に目を転じた。
 「……味噌汁用のあの水は実はただの水ではなく聖水なのです。魔王に呪われ、毒されていた貴顕の皆さまも、聖水を口にされれば少しは呪いが解け、元のお姿に戻られるのでは、と思いまして……料理対決は自然に聖水を飲ませる口実でございました」
 「なにっではお前の行っていたお料理対決の最も大切な意義とは」
 「はい。これが狙いでございました」
  そう言って、にっこりと笑うキキの頭を、くしゃとべスが撫でて乱した。
 「ふふ、キキ、お前も化け物の跋扈するこの城の一員に、より一層ふさわしくなってしまったな」
あたりは和気あいあいと盛り上がっていた。その時である。
にわかにあたりに黒雲が押し寄せ、晴天は空を追われ、あたりを闇が包み始めた。
 「何だ?」
 「急に天気が、それになんだか、ひどく寒い……」
  皆も異変に気づき始めた。寒い、寒いよ……キキはなぜかあの夢の少女の声を思い出していた。次の瞬間。
キキンっ 
キンっ
「おわっ」
 「きゃああ」
  並べられたキッチンが、地を貫く冷えた剣のようなもので刺しぬかれていた。これに各国の貴顕も、町民たちも悲鳴をあげて逃げ出していく。
キンっ キンっ
 その後を追うように幾重にも剣が地を貫き飛び出、そびえる。
 「これは……っ」
 「まあまあ、楽しそうな会合ねえ」
  この声に、べスとキキはゆっくりとそちらへと顔を向けた。
  ――彼女の歩いた跡は、氷に凍てついていた。
 「ひどいわあ、こんな楽しそうな会合にわたくしを呼んでくれないなんて。ねえ、べス?」
 「はは」
  べスは紫の髪をうねらせ、たなびかす、美しいその女へと目をとがらせた。
 「うっかりお呼びでない者まで招いてしまったか。のう、ヨルノディア女王、セレンよ!」◆◆第四章

えーん えーん
「ここは寒いよ……誰か、助けてっ……」
  まだ頑是ない美しい少女が、泣きじゃくりながら牢の中で寒風に捲かれている。
 彼女のしゃがみこむその地面は凍てついて、長くそこにつけられた彼女の足は凍傷を起して真っ赤に腫れていた。
 「寒いよ、寒いよ……お父様、お母様、許して、わたくしを助けてえええ」
  そこへ、紅い光が射したかと思うと、闇の中から穴が出来、一人の男が現れた。
 「おお、可哀想に。君の――はこんなにあたたかい場所にいるというのに」
  それからその黒衣の男は水晶を凍える少女に見せ、こんなことを言った。
 「見てごらん。ほら、君の両親と、君の――だよ」
  少女はうつろな目でその水晶を見やった。その中では。
 「お父様っお母様っ……」
  自分の大好きだった父と母が、見慣れぬ少女と花畑に遊んでいた。その声も聞こえず、両親は背中しかこちらに見せていなかったが、少女の楽し気な様子から、きっとさぞや楽しく笑いあっているのだろうと察せられた。
 「わたくしが、こんな、ところに、いるのに、お父様、おかあ、さまっ」
  少女の眼からは涙がぽろぽろとこぼれて、それはすべて水晶のように凝結した。
 「ああっお父様、お母様どうしてっどうしてそんなに楽しそうなのっわたくしのことを、こんなところに一人置いて、どうしてそのように……」
  うっうっ……牢に一人入れられた姫君は、ふと牢の床が赤く染まっていくのを見た。自分の涙が、血の滴となって床に割れていく。
 「ねえ、お前は憎くないかい? お前をこんなところに置いた父も、母も、そして何より、自分の場所を奪ったこの少女にも!!」
  パキンっ!! 気づくと水晶に氷の柱が通っていた。姫は血の涙を拭いながら。
 「……憎い、憎いわ……わたくしはこの者たちが、憎いっ!!」

  ◆
はっとキキは白昼夢から目覚めた。あたりは逃げ惑う人々の罵声悲鳴に大変な騒ぎになっている。
 「キキちゃん!!」
  と、ジョセフィーヌの声がして、顔を上げると、彼は珍しく焦った表情をして、キキの手をとった。
 「早くここから逃げましょう」
 「は、はい、しかし陛下を置いて逃げるわけには……」
 「大丈夫よ」
  ジョセフィーヌは苦笑をかみ殺しながら、一点を見つめた。
 「陛下しかあの女を止められない。陛下を信じましょう」
  そこではヨルノディアの女帝セレンと、べスが睨みあっていた。

 「久しぶりだわね、エリザベス。相変わらず醜くて、愚鈍そうな顔だこと」
  セレンは片手で扇をそよぎつつ、にやりと口の端をあげた。
 「ま、それもそうね。いつまでも我が傘下に入らず、こうして小国の女王に甘んじているんだもの」
 「それは違うぞセリンヌ!」
 「セレンよセレン! まったく、相も変わらずこ憎たらしいうっかり小娘だこと! いいわ」
  その時、セレンが紫の髪を一本抜いた。それはみるみる巨大化し氷の剣と化した。
 「私たちに言葉はいらない。さあ、殺し合いましょう」
  べスも剣を抜いた。二人は氷と、炎の剣をかち合わせ、剣戟を始める。
  カキンっ バキンっ 
  二人の剣の腕は互角だった。一人が氷の刃を凍てつかせると、炎でそれを薙ぎ払う。あたりは凍てつき、人の影も見えず極寒の世界のようになった。
 「なんて憎たらしい!  早くその首差し出しなさいよ! あんたなんか、あんたなんか」
  セレンが急いた様子で吐き捨てる。
 「あの日燃え尽きてしまえばよかったのよ!!」
  パキンっ
 その時、炎の剣が氷の剣をたたっ斬った。
 「勝負あったな。うっかり死んでもらおうか」
べスが炎の剣を高く掲げ、セレンの首を刎ねようとする。
  そこで、べスは闇がおぼめいているように感じた。よく見ればそれは蝙蝠の大群であった。それがいずこへか飛んでいく。あっちは……皆が逃げた方角だ。
 「まずいっ」
  べスが急いで山を下り丘に出る。
 「きゃああああ」
  既に蝙蝠は、華奢な彼女を連れ去らわんとしていた。
 「陛下っ」
 「キキっ」
  蝙蝠の大群がキキをいずこへか連れ去っていく。その後を追うように、どこからか甘く。低い声音が響いてきた。
 「この子を返してほしくばヨルノディアまでおいで。そこで待っているよ」
  振り返ればセレンの姿もなかった。魔王が連れ去ったのだ。
 「な、なんてことだ……キキっキキー!!!」


第五章
  うふふ、あはは
 どこからか楽しそうな声が響いてくる。キキはうつらうつらとした、ぼんやりした花の咲き揃う世界の中で、少女たちらしき楽し気な声を聴いた。
(ここは、どこでしょう……あ)
 うふふ、あはは
 そのキキの脇を、少女二人組の後姿が駆けていった。
(あれは……)
 二人とも笑いながら駆けていくので、顔は見られなかったが、それでも声だけはしっかりとキキの耳に入ってきた。少女の一人が少女に問いかけた。
 「ねえ、私たち、ずっと一緒よね?」
 「当たり前じゃない」
  もう一人の少女もくすぐったいように微笑む気配がする。
 「私たちは世界に二人きりの、――じゃないの」
  「それもそうね」
  うふふ あはは
 ばっ。そこでキキは、ようやっと目を覚ました。何だろう。何かすごく悲しい夢を見た気がする。白い天蓋のついたベッドにて、黒いシーツを引き上げて、キキはあたりを見回した。
(ここは一体、どこだろう……この寒さは、年中暖かいフィラードシェルドではなさそうだけど)
 ふと、隣に温かみを感じた。
 「ひっ」
  キキは絶句した。隣に美しい男が寝ている! そう、それは異常事態だった。また、また男と同衾しかけてしまうなど! しかしキキの悲鳴は声にならなかった。
(なんて美しい男だろう……)
 その黒髪の、腰までうねらせた男の美しさは稀有のものだった。まるで人間ではないような――。しばしその姿に魅入られていると。
 「ん、さあ、怖がらないでこちらへおいで……」
  突然、男が腰に手を回してきて、こんなことを囁くので、キキの喉はやっと悲鳴を絞り出すことが出来た。
 「きゃあああああ」
  その時、あたりを飛んでいた蝙蝠の大群が、にわかに集結し、人の形をとったかと思うと、見るまに銀髪の美しい少女と化した。
 「閣下、お戯れもほどほどになさいませんと、マダムに叱られますよ」
 「ひっ閣下……? まさか、あなた……」
  キキが恐ろしい思いに顔を引きつらせている。それへこの美男が、にやりと口の端をあげて。
 「おや、お前は頭がいいようだねキキ。そうさ、私が魔王サタンだ。どうぞ、よろしく?」
 「ま、まさか、本当に……」
  確かに納得できる。その床にまで届く黒衣に、漆黒の髪。厳寒の森に浮かぶ、呪われし月のような金の瞳。深山の新雪のような、作りもののような白い肌。
 「まだ信じられない? ならばこれをご覧、キキ」
  そう言って魔王が懐から取り出したのは、
 「あっこれ陛下のおばんパンティー!!」
  であった。その紫色のパンティーを再び懐に戻して、魔王はにっこりと笑む。
 「な? 私は魔王なのだよ。信じられるだろう?」
 「は、はあ」
  キキが訝し気に頷くと、魔王は先ほどの蝙蝠の化けた少女へ手を伸ばし、その胸もとになんと手を差し入れた。
 「くく、キキは疑り深いなあ、そう思わないか? 可愛いミシェル」
 「閣下、蝙蝠相手に欲情しないでくださいませ。またマダムに私がしめられますよ」
  二人がそう言いながらキスを交わすのを、キキは身の置きどころもないように感じつつ見つめたが、その後でぼそ、と尋ねた。
 「あ、あの、お二人は付き合っているんですか?」
  蝙蝠が答える。
 「いや、全然」
 「えええええ」
  キキは再び絶句した。付き合ってもないのにこの不埒なふるまいとは!
「痴漢に痴女だわ……(モテない)うちの陛下がご覧になったらきっと燃やされましょう……」
 「ふふ、あのうっかり女はモテないからねえ」
  その瞬間、ブシュンブシュン! と鋭い音が響いた。キキがはっと顔を上げると、壁に蝙蝠少女が射しぬかれていた。
 「あ、あなたは……」
  それをにっこりと満足そうに見据えているのは。
 「ヨルノディア女王……セレン、様……」
  キキはそこでようやっと、自分がヨルノディアに連れ去らわれた事を知った。

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