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第2部/鎖女の話をした少女の話
夢を持つ親友と、守られるあたし
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晩ごはんとお風呂を終えて、ベッドにゴロ寝スマホする。
着ているのはパジャマじゃなくて中学ジャージ。だって楽なんだもん。
SNSを探索していると、見つけた。
(あった、これだ)
【*※*※* @qsgpppplg
フォロー:0 フォロワー:0 投稿:1
都市伝説「鎖女」
全身に鎖を巻きつけた女
こいつの話をすると鎖女が現れて世にも恐ろしい目に遭う】
あたしが昨夜見つけた、鎖女の元投稿。
アカウント名やIDを見る限り、捨てアカっぽい。
「……」
ぽちぽちと、引用投稿する。
【リリ*日常アカ @lili_co_days
フォロー:51 フォロワー:48 投稿:3,000~
鎖女の噂、マジだった!ヤバい!】
そうポストした直後、祐奈から通話が来た。
「もしもし祐奈? 部活、お疲れー」
『莉々子! メッセ読んだよ! 色んな意味でびっくりしたんですけどー!』
だろうね。
祐奈には事の経緯を全部話した。
鎖女のことも。……柏木先輩のことも。
『とにかく無事で良かったよぉ。でも、柏木先輩? マジで漫画とかアニメの人みたいだね!』
「うん。すごかった」
『いっぺん見てみたいなーホンモノの除霊ってやつ。演技の参考になりそう』
「あはは、祐奈は演劇に対してだけはほんと真面目だよね」
『だけって何よぉ。まー確かにそうなんだけどさ。だってさ、わたし、推しの俳優さんといつか共演するのが夢なんだもん!』
脳内に、祐奈の笑顔がよぎった。
「……うん、そうだったよね。がんばってよ、応援してるからさ!」
――まあ、無理だとは思うけど。
声だけは明るいままで、祐奈の話を楽しく聞くふりをしながら、あたしは冷ややかな気持ちで思った。
だってそうでしょ。
祐奈の推しは、映画や舞台界隈でトップの人気を誇る俳優。
一介の演劇部の女子高生と、共演どころか出会うことすらありえない。
見るだけ無駄な『夢』じゃん。
(……あ)
あたし今、すごく嫌な人間になっている。
親友の夢を否定して、身の程知らずだって見下している。
最低なやつだ。
(だって、電話越しでも分かっちゃうんだもん)
夢を語る祐奈の瞳がキラキラしてるって。
あれ、あたし的にはちょっとだけツラい。
事実を突きつけられている気がするんだ。
祐奈と違って、あたしには『何も無い』んだって。
『――莉々子? 聞いてる?』
「えっ? 何?」
『さっきも言っただけど、もう大丈夫なんだよね? 柏木先輩が除霊したから、もう襲われないんだよね?』
「うん、鎖女はもう現れないとおも――って、あ!」
ヤバい。
あたし、祐奈に鎖女の話をしちゃった!
ていうか、SNSの引用投稿で出現報告とかしちゃった……つい。
黙ってられないんだもん……。
(いや、大丈夫だよね。名前だけポロッと口走っただけだし、文字だけだし!)
でも、気をつけないと。
十一時まで祐奈と話をして、通話を切った。
電気を消した後、……やっぱり点けたまま寝ることにした。
*
翌朝。
あたしは口の歯ブラシを落っことしそうになった。
「……おはよう」
歯磨き中、チャイムが鳴ったから出てみたら。
そこには寝ぼけ眼を強制覚醒させるイケメン――すなわち柏木先輩がいた。
「迎えにきた」
「そ、それは……一緒に登校しようって意味ですか?」
「それ以外に何がある。また鎖女が現れるかもしれない。朝だからといって、油断はできないからな」
キッパリ言い切る先輩に、あたしは大いに慌てた。
「ちょっとお待ちになってくださりませ!」
日本語崩壊する!
あたしは泡食って(物理的に歯磨き粉の)家の中に戻り、ダッシュで身支度をする。
(わーん、最悪ー!)
髪、寝ぐせついたままだし!
ていうか中学の芋ジャージだし!
可愛い部屋着とか持ってないし! もぉおおおお!
大反省しながら玄関に戻る。
ママに「朝ごはんは?」と言われたけど断った。ごめんママ。
着ているのはパジャマじゃなくて中学ジャージ。だって楽なんだもん。
SNSを探索していると、見つけた。
(あった、これだ)
【*※*※* @qsgpppplg
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都市伝説「鎖女」
全身に鎖を巻きつけた女
こいつの話をすると鎖女が現れて世にも恐ろしい目に遭う】
あたしが昨夜見つけた、鎖女の元投稿。
アカウント名やIDを見る限り、捨てアカっぽい。
「……」
ぽちぽちと、引用投稿する。
【リリ*日常アカ @lili_co_days
フォロー:51 フォロワー:48 投稿:3,000~
鎖女の噂、マジだった!ヤバい!】
そうポストした直後、祐奈から通話が来た。
「もしもし祐奈? 部活、お疲れー」
『莉々子! メッセ読んだよ! 色んな意味でびっくりしたんですけどー!』
だろうね。
祐奈には事の経緯を全部話した。
鎖女のことも。……柏木先輩のことも。
『とにかく無事で良かったよぉ。でも、柏木先輩? マジで漫画とかアニメの人みたいだね!』
「うん。すごかった」
『いっぺん見てみたいなーホンモノの除霊ってやつ。演技の参考になりそう』
「あはは、祐奈は演劇に対してだけはほんと真面目だよね」
『だけって何よぉ。まー確かにそうなんだけどさ。だってさ、わたし、推しの俳優さんといつか共演するのが夢なんだもん!』
脳内に、祐奈の笑顔がよぎった。
「……うん、そうだったよね。がんばってよ、応援してるからさ!」
――まあ、無理だとは思うけど。
声だけは明るいままで、祐奈の話を楽しく聞くふりをしながら、あたしは冷ややかな気持ちで思った。
だってそうでしょ。
祐奈の推しは、映画や舞台界隈でトップの人気を誇る俳優。
一介の演劇部の女子高生と、共演どころか出会うことすらありえない。
見るだけ無駄な『夢』じゃん。
(……あ)
あたし今、すごく嫌な人間になっている。
親友の夢を否定して、身の程知らずだって見下している。
最低なやつだ。
(だって、電話越しでも分かっちゃうんだもん)
夢を語る祐奈の瞳がキラキラしてるって。
あれ、あたし的にはちょっとだけツラい。
事実を突きつけられている気がするんだ。
祐奈と違って、あたしには『何も無い』んだって。
『――莉々子? 聞いてる?』
「えっ? 何?」
『さっきも言っただけど、もう大丈夫なんだよね? 柏木先輩が除霊したから、もう襲われないんだよね?』
「うん、鎖女はもう現れないとおも――って、あ!」
ヤバい。
あたし、祐奈に鎖女の話をしちゃった!
ていうか、SNSの引用投稿で出現報告とかしちゃった……つい。
黙ってられないんだもん……。
(いや、大丈夫だよね。名前だけポロッと口走っただけだし、文字だけだし!)
でも、気をつけないと。
十一時まで祐奈と話をして、通話を切った。
電気を消した後、……やっぱり点けたまま寝ることにした。
*
翌朝。
あたしは口の歯ブラシを落っことしそうになった。
「……おはよう」
歯磨き中、チャイムが鳴ったから出てみたら。
そこには寝ぼけ眼を強制覚醒させるイケメン――すなわち柏木先輩がいた。
「迎えにきた」
「そ、それは……一緒に登校しようって意味ですか?」
「それ以外に何がある。また鎖女が現れるかもしれない。朝だからといって、油断はできないからな」
キッパリ言い切る先輩に、あたしは大いに慌てた。
「ちょっとお待ちになってくださりませ!」
日本語崩壊する!
あたしは泡食って(物理的に歯磨き粉の)家の中に戻り、ダッシュで身支度をする。
(わーん、最悪ー!)
髪、寝ぐせついたままだし!
ていうか中学の芋ジャージだし!
可愛い部屋着とか持ってないし! もぉおおおお!
大反省しながら玄関に戻る。
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