13 / 35
第2部/鎖女の話をした少女の話
先輩の彼氏力が高すぎる
しおりを挟む
「おおおお待たせしましたっ!」
ガチャンと扉を開けると、先輩がバイクに寄り掛かって待っていた。メンズ雑誌のグラビアですか?
「いや。こっちこそ早く来て悪かったな」
……先輩って。
顔はコワモテ寄りなのに、気遣いにあふれてるんだよなぁ。
昨日と同じようにヘルメットを被せてもらい、バイクの後部座席に座る。
「しっかり捕まっていろよ。俺の腰に手を回していいから」
「は、はい!」
恐る恐る、先輩の腰に手を伸ばす。
腰回り、がっしりしてる。男の人だぁ……
徒歩三十分の通学路を、流れ星のように走る。
風が気持ちいい。心臓がドキドキしてる。
学校近くになると、イワシの群れみたいに登校中の生徒たちが次々と振り返った。
「おう柏木ー! なんだよカノジョかー?」
先輩の友達らしき男子生徒がからかってきた。
「うるっせぇ」
否定しない柏木先輩に、あたしの鼓動はもっと弾けた。
駐輪場で下りると……なんと、先輩はあたしの教室まで送ってくれた。
「放課後の予定は? 部活は入ってるのか?」
「帰宅部です。バイトとかしてないしっ」
「そうか。なら、6時間目が終わったら迎えにいく」
「へっ?」
さらりとトンデモナイ発言を残して、先輩は去っていった。
時間差であたしの頬が熱くなる。
いやいやダメだよ先輩、今の発言は。
なんかもうまるで……完全に……!
「莉々子ぉ! 今の柏木先輩なに!? 今の彼氏ヅラはなに――!?」
「そう、それぇえええ!!」
大興奮で抱きついてきた祐奈につられて、あたしも大声が出た。
それだそれ。さっきのはまごうことなき彼氏ヅラだぁ!
「莉々子、いつの間に彼氏できたの?」
「ずるーい! 裏切り者!」
バタバタとクラスの女子たちがやってきて、囲まれた。
「しかも鬼カッコイイじゃん!」
「背ぇ高くて細マッチョで! あんなんムリじゃん惚れるしかないじゃん!」
「バクハツしろ!」
なんて、好き勝手言ってくる。
きゃあきゃあ教室の出入り口で騒いでいると、ドンッ、と誰かとぶつかった。
「どきなさいよ、邪魔よ!」
同じクラスの英美香だった。
クラスでも美人系で通っていて、目立つタイプの英美香にギロリと睨まれ、肝が冷える。
ごめんと謝ったけど、英美香は「フン!」と鼻を鳴らした。
(えぇ……いきなり何?)
英美香は友達と合流した後、あたしの方をチラチラしてきた。
やけにキツい視線。鈍感なあたしでも分かる。
あれは敵意だ。
あのグループとはロクに話したこともないのに。
たじろぐあたしに、祐奈がコソッと耳打ちした。
「英美香のグループって、みんな柏木先輩のファンらしいよ。めっちゃ睨んでるね……嫉妬全開じゃん、怖い~~」
ほんとに。視線で呪い殺しそうな勢いだ。
……怖い、けど。
ちょっとだけ、気分いいかも。
英美香たちって男子に人気あって、先生の受けもいいから。
そんな子たちに嫉妬されるなんて、なかなかないし。
チャイムが鳴った。
昨日と同じ、退屈な授業が始まる。
でも昨日と違って、あたしは浮かれている。
だって放課後も、柏木先輩といられるんだもん!
*
「じゃあね、莉々子! 彼氏さん♡によろしくー!」
「もー、からかうなっての!」
放課後の教室。
部活へ急ぐ祐奈を見送って、柏木先輩を待った。
まだかなぁ。
できれば他の子たちがいるうちに来てくれないかなー、なんてね。
……「うちのオカンがさー」
……「これ、いとこから聞いた話なんだけどー」
うちのクラスには、あたしみたいに部活やバイトをしてない子がけっこーいて、そういう子は下校時間ギリギリまで残って、友達とおしゃべりしてる。
毎日寄り道できるほどフトコロあったかくないもんね。
でも今日は、先輩とカフェとか駅前のステバとか行きたいなー。
……「ジュース買ってきたぞー」
……「サンキュー。で、さっきの続きなんだけど」
(ベタだけど憧れだったんだよね……男の子と寄り道するの)
ダメ元で言ってみよっかな……
……
……
……あれ?
みんな、どこ行ったの?
さっきまで窓際や黒板の前の席に、二、三人集まって放課後トークしてたのに。
誰も、いない……?
あたしは不安になって周囲を見回して、それから……ジャラッ
今の音。
まさか。
鎖の音……どこから?
「……」
あたしは音が聞こえた方を向いた。つまり……振り返った。
一瞬で視界が、加工フィルターをつけたみたいに真っ赤になった。
その真ん中にいた。
頭部全体に鎖が巻きついた、血の色の女が。
ガチャンと扉を開けると、先輩がバイクに寄り掛かって待っていた。メンズ雑誌のグラビアですか?
「いや。こっちこそ早く来て悪かったな」
……先輩って。
顔はコワモテ寄りなのに、気遣いにあふれてるんだよなぁ。
昨日と同じようにヘルメットを被せてもらい、バイクの後部座席に座る。
「しっかり捕まっていろよ。俺の腰に手を回していいから」
「は、はい!」
恐る恐る、先輩の腰に手を伸ばす。
腰回り、がっしりしてる。男の人だぁ……
徒歩三十分の通学路を、流れ星のように走る。
風が気持ちいい。心臓がドキドキしてる。
学校近くになると、イワシの群れみたいに登校中の生徒たちが次々と振り返った。
「おう柏木ー! なんだよカノジョかー?」
先輩の友達らしき男子生徒がからかってきた。
「うるっせぇ」
否定しない柏木先輩に、あたしの鼓動はもっと弾けた。
駐輪場で下りると……なんと、先輩はあたしの教室まで送ってくれた。
「放課後の予定は? 部活は入ってるのか?」
「帰宅部です。バイトとかしてないしっ」
「そうか。なら、6時間目が終わったら迎えにいく」
「へっ?」
さらりとトンデモナイ発言を残して、先輩は去っていった。
時間差であたしの頬が熱くなる。
いやいやダメだよ先輩、今の発言は。
なんかもうまるで……完全に……!
「莉々子ぉ! 今の柏木先輩なに!? 今の彼氏ヅラはなに――!?」
「そう、それぇえええ!!」
大興奮で抱きついてきた祐奈につられて、あたしも大声が出た。
それだそれ。さっきのはまごうことなき彼氏ヅラだぁ!
「莉々子、いつの間に彼氏できたの?」
「ずるーい! 裏切り者!」
バタバタとクラスの女子たちがやってきて、囲まれた。
「しかも鬼カッコイイじゃん!」
「背ぇ高くて細マッチョで! あんなんムリじゃん惚れるしかないじゃん!」
「バクハツしろ!」
なんて、好き勝手言ってくる。
きゃあきゃあ教室の出入り口で騒いでいると、ドンッ、と誰かとぶつかった。
「どきなさいよ、邪魔よ!」
同じクラスの英美香だった。
クラスでも美人系で通っていて、目立つタイプの英美香にギロリと睨まれ、肝が冷える。
ごめんと謝ったけど、英美香は「フン!」と鼻を鳴らした。
(えぇ……いきなり何?)
英美香は友達と合流した後、あたしの方をチラチラしてきた。
やけにキツい視線。鈍感なあたしでも分かる。
あれは敵意だ。
あのグループとはロクに話したこともないのに。
たじろぐあたしに、祐奈がコソッと耳打ちした。
「英美香のグループって、みんな柏木先輩のファンらしいよ。めっちゃ睨んでるね……嫉妬全開じゃん、怖い~~」
ほんとに。視線で呪い殺しそうな勢いだ。
……怖い、けど。
ちょっとだけ、気分いいかも。
英美香たちって男子に人気あって、先生の受けもいいから。
そんな子たちに嫉妬されるなんて、なかなかないし。
チャイムが鳴った。
昨日と同じ、退屈な授業が始まる。
でも昨日と違って、あたしは浮かれている。
だって放課後も、柏木先輩といられるんだもん!
*
「じゃあね、莉々子! 彼氏さん♡によろしくー!」
「もー、からかうなっての!」
放課後の教室。
部活へ急ぐ祐奈を見送って、柏木先輩を待った。
まだかなぁ。
できれば他の子たちがいるうちに来てくれないかなー、なんてね。
……「うちのオカンがさー」
……「これ、いとこから聞いた話なんだけどー」
うちのクラスには、あたしみたいに部活やバイトをしてない子がけっこーいて、そういう子は下校時間ギリギリまで残って、友達とおしゃべりしてる。
毎日寄り道できるほどフトコロあったかくないもんね。
でも今日は、先輩とカフェとか駅前のステバとか行きたいなー。
……「ジュース買ってきたぞー」
……「サンキュー。で、さっきの続きなんだけど」
(ベタだけど憧れだったんだよね……男の子と寄り道するの)
ダメ元で言ってみよっかな……
……
……
……あれ?
みんな、どこ行ったの?
さっきまで窓際や黒板の前の席に、二、三人集まって放課後トークしてたのに。
誰も、いない……?
あたしは不安になって周囲を見回して、それから……ジャラッ
今の音。
まさか。
鎖の音……どこから?
「……」
あたしは音が聞こえた方を向いた。つまり……振り返った。
一瞬で視界が、加工フィルターをつけたみたいに真っ赤になった。
その真ん中にいた。
頭部全体に鎖が巻きついた、血の色の女が。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
どうしてそこにトリックアートを設置したんですか?
鞠目
ホラー
N県の某ショッピングモールには、エントランスホールやエレベーター付近など、色んなところにトリックアートが設置されている。
先日、そのトリックアートについて設置場所がおかしいものがあると聞いた私は、わかる範囲で調べてみることにした。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる