はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第三章 大陸統一

第38話 お話し合いは決裂

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 ある日、隣の国、サンドウ皇国から、使者がやって来た。
「我が国は、怒りに震えている。協定を守らず、我が国の国民を不当に連れ去る行為。断じて許さん。貴国には再発の防止と、賠償をしていただこう」
 使者である、ツータエル=イトーヲ伯爵は偉そうに言ってくる。
 国同士の使者に伯爵級。
 そう、我が国は舐められている。

 それか、まだ病気が怖く、この人が捨て駒にされたのか。

 サンドウ皇国は、今年いい加減麦の収穫量が少なく、国自体が疲弊をしていた。
 だが税は、法による決まりだという名の下にきっちり徴収されて、農民達は物や子供を売り、現物の代わりに対価を払った。

 これは異国のことだが、日本でもこれと同じことが行われる。食料供給困難事態対策法という、ふざけた法が二〇二四年に可決された。
 国の指示に従い増産せよと。
 長年米を作るな、田んぼを減らせと言ってきた口がだ。
 従わなければ、二〇万以下の罰金。

 いきなり増産と言われても、枯れた田んぼを復活させるには、何年もかかる。
 そう何年もかかるのだよ。作物を作るには適した土にしないと、まともに育たない。小学校で習うことだ。

 そんな事など、米を作ったことのない国の関係者は、忘れてしまったのだろう。
 きっと知っているのは、猿でも出来る米作りとか、ゲームならば、クエスト米を増産しよう、ここを田んぼにしますか? イエス、ノーで増産できる。

 現実では、無理だ。
 木が生えているなら、根っこまで引き抜き、適度な深さに耕耘し、肥料をすき込み、不足している栄養分を補充。手間ばかりが増えて、その田で病気でも出れば、増収どころか減収となる。

 よく発生をするいもち病とかは、カビの一種で土中にいる。
 昔は、作付け前に焼けば、ある程度防げたが、今は焼けない。

 焼けない代わりに、当然農協から買った、いや買わされる、高価な薬を散布する。耕すには、税金を上乗せた高価なガソリンが必要。米なら、土壌の鉄分も必要だしpHの調整も。
 当然必要な物はすべて農家が買って追加。微生物の育成、有機肥料を買って追加。

 国の命令に従っても、膨大な費用と手間、従わないと罰金。
 まあ、どちらにしろ、バカみたいにただ金がなくなる話し、当然農家はいなくなる。


 それはさておき、サンドウ皇国の状態もひどいもので、農民達は自身が食うものも確保できず、なんとかしなければとあえいでいた。

 そこに、商人がやって来る。
 その人の良い商人は、困っているだろうと、安く食料を持って来てくれた。
 
 その商人こそ、ニワカー=シノーギ伯爵が、寄親である辺境伯、ワラオー=ツーカム侯爵に相談をして始めたエージェント。

 今回の騒動があり、急遽陞爵しょうしゃくを受けて、任命された者達。
 広大な土地はあっても、人が居ない。

 国としては、細々でも良いから、また開墾を行い。治めてほしいと考えていた。
 だが任命されて張り切り、すぐに結果を出そうと考えた。

 彼らは考えた。
 隣では、飢饉で人が苦しんでいる。
 口減らしが絶対に出る。
 救ってあげれば、うちも人が増える。

 だが、正式な手続きでは認められないだろう。
 商人を送り、帰りはその従業員ということで、少しずつ連れてこよう。
 偽物身分証明札を持たせて、商人達を放つ。

 だが、徐々に欲張り、多くの人間を樽などに隠して入国させようとしてバレた。
 その時は、強引に検問を突破し我が国へ。

 その後いくつかの商人が泳がされて、尻尾を掴まれた。
「間違いないな。国も厳しき折、丁度良い。吹っかけようぞ」
「ほーっほっほ、あの国は争乱があった後、人もおらず無理にはねのける力はありますまい。皇王様もお人が悪い」
 皇王=天皇と同じ感じの国である。
 皇王アレクシス=マルット=ハーテロと、宰相ツカサドールゼ=スベテーオの悪巧みは続く。

 この国は元々インセプトラ―王国の元辺境。
 公爵が管理をしていた。
 そこが独立をして、長らく公国だったのだが、それが力を付けて皇国となった。
 その時には、ダイモーン王国も手助けをしたのだが、世代が変わり忘れてしまったようだ。


「使者殿はこうおっしゃておるが、王様いかがなさいます?」
 楓真が、笑いをこらえながら聞いてくる。

 奥側の通路では、半分だけ顔を出して、澪とデレシアがこちらを覗きぼそっと一言。
「旦那様、すてき」
「龍ちゃんかっこいい」
 そう言ってとろけた顔。

 そんな中、練習をした台詞を披露する。
「そう言うのなら証拠があろう、証拠を出せ、出来ねば言いがかり、逆に賠償を頂こう」
 その言葉に、使者は驚く。
 『どうせ、壊れ掛かったダイモーン王国、反論は出来ずに払うだろう、帰りは盗賊に気を付けて帰ってこい。』こんなことを言われていた。
 よもや、手ぶらで帰ることになろうとは……

「なっ、その言葉、まことですか?」
 思わず、睨んでしまう。
 だが、そんな木っ端貴族のメンチにはビビらない。

 メンチとは、不良用語である。
 相手を睨み、ビビらせること。
 用法としては、『あーん? てめえ今ぁ、メンチ切りやがったなぁ、なんか文句でもあんのかくぅぉらぁ』このように使います。
 此処での注意点は、かぅぉぁの『く』と『ら』にアクセントを置きましょう。
 言葉にあわせて、顔を上下に振ると良いでしょう。

 その時、顔が大体キスできるレベルまで近くに来るので、相手の鼻をめがけて、ヘッドバッドを喰らわせます。
 その時、素直に顔が下がれば膝蹴り、手で顔を押さえた場合は、腹に一発入れてから、膝を入れます。相手の行動をよく観察をして、最適な対応が必要です。
 特に相手が多数の場合は、攻撃を受けた相手を盾に使い、なるべく相手を分断します。

 その後は後頭部への打撃と続きますが、危険な箇所なので力加減はしましょう。
 傷害と殺人では、学校に掛かる迷惑が天と地ほども違います。
 状態によっては、学校の判断で埋め、すべてをなかった事にしますので注意してください。

 出典:私立徳井天世高校、一年生教材、ハイポサイクロイドの式を使った、正しい喧嘩の吹っかけ方、またその対応方法。第一章、一三項。
 第二章、肩のぶつけ方から、リサージュ曲線を使った美しくスムーズな、かまし方へ続く。
 
「ああ、ダイモーン王国の国王として、つまらぬ嘘は言わん」
 そう言って、見下ろしながらにやりと笑う。

「その言葉、覚えていろ」
 使者は勝手に出て行ってしまった。

「国境に兵の配置。見えないようにな」
「はっ」
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