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第1章 旅立ちと冒険者活動

第7話 盗賊退治は計画的に。

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 ガタガタと揺られて、街道を進んで行く。

 寝ているフィアとアミルを、クノープと手分けして、膝に抱えて眠らせる。
 リーポスは甘やかしすぎと文句を言っていたが、寝不足で怪我でもされたら困ってしまう。

 なぜか先に起きたフィアが、クノープに抱っこされた状態が判り、飛び起きる。
「ごめんなさい。クノープありがとう」
 そう言って御礼を言っていた。

「いや良いさ。フィアは軽いしな」
 クノープが気を使ったのか、そんなことを言う。

「そう」
 そんな感じで返事をするフィアと目が合う。
 気が付き、なんだか居心地悪そうに目をそらされる。

 そう、フィアはアシュアスに抱かれて眠っている夢を見ていた。
 心地よく体温を感じ、心拍も? 魔力が? あれ違う。
 アシュアスの魔力は、もっとこう温かく。優しく包み込む感じがするはず……
 目を開くと、居たのはクノープだよ。
 あわてて飛び起き、膝から出る。

 そして目の前には、本来私の席であるアシュアスの膝の上で、アミルが気持ちよさそうに寝ている。アミル…… 友人だけど殴りたいわ。
 そんな事を思って見ていると、アシュアスと目が合う。

 心を見透かされたような気がして、つい目をそらす。

 そして馬車は、盗賊達の出現エリアの端へとやって来た。

 ここからは、歩きで奴らを探す。
 見つけたら、笛を吹くこと、それと出来る人間は、位置を示すように魔法を打ち上げる。

 まあ何でも良いから、知らせろという事だな。
「音なんか出したら、逃げられるじゃない」
 リーポスが当然の疑問を、聞いてみる。
 
「ああ、ここから真っ直ぐ探していくから。各チームで、そんなに差は出ないだろう。音が聞こえれば、すぐに駆けつけるから大丈夫。それよりも君達は対応できるのかい」
 ああ、言っていた話だな。殺せるかという事。

「ええ。幾度か経験がありますし。大丈夫です」
「そうか、なら見ていなくても、単独で良いな。元々盗賊の規模にしては、こちらのメンバーが少ないんだ。どうしたって、結構エグいからギルドメンバーでも皆が嫌がってね」
 少し悲しそうな顔になる、シュレーターさん。

「大事な事なんですけれどね」
「そうだね。それじゃあ、行くよ」
 そう言って、ぞろぞろと、山側へ入って行く。

 入ってすぐに、皆で探査をする。

 谷を一つ挟んだ向こう側に、大人数が居るな。
「どうだ?」
「谷かな、その向こう側」
「俺もそう思う」
「そうだね」
「うん」
 皆の賛同が得られた。ただ問題は。

「街道側から回った方が早いな。皆が山から行くのなら、街道側へ逃げられると面倒じゃないか?」

 探査をすると、まだ近くに『安寧の守護者』と『双頭の騎士』。両チームが居る。
 ああは言ったが、試験だし、見てくれているのかもしれない。

 近い方の双頭の騎士、ルーラントさんに話をしに行く。
「ちょっと行ってくる」
「いってらぁ」
 真っ直ぐに、ルーラントさん達に近付く。
 あれこの人達、探査を撃っていない。警戒中か?

「あの、すみません」
 こちらに気が付き、警戒をするので声をかける。

「脅かしてすみません」
「いやいい。どうした。怖くて帰るなら却下だ。もう作戦は始まった」
「いいえ。探査をしたら、少し向こうに谷があるんですが、その対岸側に集落っぽい物があります。それで、あれが盗賊達なら、一チームくらい街道側から行かないと逃げるかと思いまして」
 そう聞いても反応が微妙。

「―― はっ? 探査?」
「ええ。探査。魔力をこう、ピコーンと広げる奴です」
「えっ。ちょっと待って、探査が使えるの? そんな遠くまで」
「ええ。全員で答え合わせをしたので、合っているはずです」
「全員?」
「ええ。全員」
 なぜか静かになった。

「おい、シルヴィ探してみてくれ」
「あっうん」
 なんだか、難しい顔をして手を広げる。
 あっ、出た。でも弱いし、収束がいまいち。
 もっと細くして、それで範囲内を走査しないと絵にならない。

 四角い紙だと考えると、横一列に、点々で返ってくる魔力の強弱を描いていく。
 それを、縦に少しずらして、横一列、横一列と降ろしていくと、点々で描かれた絵が出来上がる。
 その点が大きいと、無駄な魔力が必要だし、隣り合った物が塗りつぶされてしまう。

 母さんが、背後に立って言うんだ。
『駄目駄目ね。もっと細く高速に走査させるの。出来なければ、ご飯が食べられるのは一週間後かなぁ。途中ではお父さんとの剣術も、お稽古があるし大変ねえ』
 それ以前に、肩幅よりちょっと広めに足を開き、立っているのは大変なんだ。
 体術における足腰の鍛錬。

 僕たちは、遊びや練習の中で複合的に訓練をした。
 あれが訓練だとは、後で聞いたことだけれど。
『お父さんもお母さんも、あなたたちがかわいいの。怪我をしたり死んでしまったら辛いの。だから、目の届くところで、死なない程度に訓練をするのよ。分かった』
 そう言って、微笑みを浮かべると、一瞬で回り込んで背中にしがみつき、体重をかけられた。
 あの日は、本気で足腰が死んだ。

 そんな思い出を回想していると、シルヴィさんが何かを言い始める。
「谷はある。でも感じ五キロくらい先」
 そう言うと、なぜか皆が一斉にこっちを向く。

「そう、その谷…… さらに、向こう側です」
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