65 / 120
第2章 異世界開拓
第65話 噂
しおりを挟む
最近、プローペで、聞き捨てならない噂は流れる。
「ねえ聞いた?」
「なぁに?」
「あの軍団がいるでしょう」
「あーうん。例のあの人達ね」
「すっごく、色っぽくなって。モテモテみたいよ」
「わかるぅー。この前。道ですれ違ったけれど。なんて言うの? 男を引きつける魅力みたいなのが、すごかったわぁ」
道行く男達も、思わず振り返る。
「あれって、ダンジョン攻略のおかげかしら?」
「それなら、私もいけるかしら。最近旦那が、ほかの女に色目を使うのよ」
そんな噂が立ち、人材派遣仲介協会では、「募集はないのか」と問い合わせがひっきりなしに来始める。
「色気? そりゃ元々、まともに食えていなかったんだ。栄養が足りれば、出るところは出るだろ」
「あーそうか。そうよね。生理もなくなっていたって言う人。多かったもの」
美咲が、すっとぼけたことを言ってくる。
「突然どうしたんだ?」
「昨日。人材派遣仲介協会で聞かれたのよ。追加はないかって」
「追加なあ。当初はそう思っていたんだが、リスクを考えるとな。どうしたって俺たちの誰かが、付いていた方が良いだろう。おまえ、一チーム面倒見るか?」
そう言うと一瞬考え、
「私はまだ、妾を容認できない」
そう言い切る。俺が押し倒される前提かよ。
そうだよな。真一は、幾人かに押し切られたようだし。
「真一に家を建てるか」
「どうなんだろう? 順におたく訪問をしているみたいよ」
「その方が平和なのかね。まるで奈良時代だ」
「誰か手を出すのなら、先に会わせてね」
「随分毒されたな」
「だって、話をするたび、非常識扱いされるんだもの。独占欲丸出しで、旦那がかわいそうって」
「まあ。こっちはどうあっても、日本人と言うことだ。無理に合わせることはない」
「他の子。気にならないの?」
「……別に」
「なに? 今の微妙な間は」
「ナニモ、ナイヨ」
「隊長。最近、ダンジョンの中で、笑い声とか話し声が聞こえません?」
「幻聴かと思ったが、おまえもか?」
「大体あれが聞こえると、ダンジョンが消えるのですよね」
「やっぱりな。結構、子供ぽい声で怖いだろ」
「なんの話ですか?」
「いやな、」
この声の正体、ホラーではなく。
ダンジョンでは、階層が変わると音などは聞こえないが、魔力は連続している。
それに気がついた子供達が、魔力に声を乗せることを思いついた。
「大丈夫。降りてきて良いよ」
「分かった。皆突撃」
「いやっホー」
こんな感じで、階段ごとで声を掛け合う。
ところがこれが、日本側まで届いているようだ。
それが、情報として。俺たちのチームの中で、共有される。そして皆が使うようになった。
新技術により、悲劇は起こる。
「ねえねえ。真一さん。行こう」
「あん? 今攻撃中だろ。もうちょっと待てよ」
「だって、最近忙しそうだし。ちょっとだけ」
「ちっ。俺そんなに早くないぞ」
そう言って、別通路へ消える。
「あれ? ねえ、この声」
「あー。真一さんと? この声は、エルミかな?」
「そういえば、居ないわね。声が魔力に乗って」
「あーうん。こっちまで、変な気分になっちゃう」
そう。エルミの嬌声が、いや思念まで魔力に乗って垂れ流される。
皆影響を受け、モンスターを倒しながら、もじもじし始める。
「ひっ。隊長。とうとう、女性のすすり泣きまで、聞こえるようになってきました」
「ああ。俺にも聞こえる。全体攻撃中止。一度ダンジョンを出るぞ」
「これって、すすり泣きと言うより。あれ?」
一部の隊員は気がついたようだが、脱出し。それから、1時間ほどでダンジョンは消えた。
「やっぱり。真一さんとエルミ。何処でやってたの?」
「なんの話だ?」
「隠しても無駄。エルミの思念が、ダンジョンに響いていたから」
それを聞いて、真っ赤になるエルミ。
さすがに、恥ずかしかったようだ。
「窪田さんずるい。さっきので女が疼くの。責任とってよ」
「さすがにこの人数。できるか」
そう言って、逃げ始める。
現れたモンスター達は、災難をうける。
結果。ダンジョンは最短時間で、攻略されることになった。
だが、逃げられず。
真一は、転移して姿をくらます。
そのせいか、その晩。
プローペで、酔って暴れたチーム連中により、悲劇が起こされる。
話を聞いた俺は、頭の中にサバトが浮かぶ。
不幸中の幸い。そのおかげで、幾人かカップルができたようである。
笑いながら、魔力に思念を乗せるのは危険だなと痛感する。
俺たちの魔力なら、この世界中に声を降らせそうな気がする。
「笑い事じゃないわよ。とんでもないわ」
「そうだな。気を付けろ。町中に嬌声を降らすと、町中が発情するぞ」
「げっ。それでなくとも、こっちの世界。皆そういう事にオープンなのに。とんでもない事になりそう」
「ほれほれ。我慢しろ」
「あっやっ。ちょだめ。ああっ」
「真一様。噂ですが、幾人かお手付きにしたと、聞き及んでおります」
目の前に居るのは、カリーネ。そして、横に控えるシーラ。
「迎えるなら迎える。お遊びでしたら金銭でも払い。きちっと収めてください。お立場上。醜聞でも出れば、松田様にまでご迷惑が及びます。よろしいですね」
「えーあ。はい。気を付けます」
親に紹介をすると言い出した時から、カリーネに妙な貫禄が出始め。すっかり尻に敷かれている真一。
「それと土地を、ハーパラ様を通し、キルペライネン様より頂きました。間借りではなく、屋敷を御用意下さい」
「はい」
「ねえ聞いた?」
「なぁに?」
「あの軍団がいるでしょう」
「あーうん。例のあの人達ね」
「すっごく、色っぽくなって。モテモテみたいよ」
「わかるぅー。この前。道ですれ違ったけれど。なんて言うの? 男を引きつける魅力みたいなのが、すごかったわぁ」
道行く男達も、思わず振り返る。
「あれって、ダンジョン攻略のおかげかしら?」
「それなら、私もいけるかしら。最近旦那が、ほかの女に色目を使うのよ」
そんな噂が立ち、人材派遣仲介協会では、「募集はないのか」と問い合わせがひっきりなしに来始める。
「色気? そりゃ元々、まともに食えていなかったんだ。栄養が足りれば、出るところは出るだろ」
「あーそうか。そうよね。生理もなくなっていたって言う人。多かったもの」
美咲が、すっとぼけたことを言ってくる。
「突然どうしたんだ?」
「昨日。人材派遣仲介協会で聞かれたのよ。追加はないかって」
「追加なあ。当初はそう思っていたんだが、リスクを考えるとな。どうしたって俺たちの誰かが、付いていた方が良いだろう。おまえ、一チーム面倒見るか?」
そう言うと一瞬考え、
「私はまだ、妾を容認できない」
そう言い切る。俺が押し倒される前提かよ。
そうだよな。真一は、幾人かに押し切られたようだし。
「真一に家を建てるか」
「どうなんだろう? 順におたく訪問をしているみたいよ」
「その方が平和なのかね。まるで奈良時代だ」
「誰か手を出すのなら、先に会わせてね」
「随分毒されたな」
「だって、話をするたび、非常識扱いされるんだもの。独占欲丸出しで、旦那がかわいそうって」
「まあ。こっちはどうあっても、日本人と言うことだ。無理に合わせることはない」
「他の子。気にならないの?」
「……別に」
「なに? 今の微妙な間は」
「ナニモ、ナイヨ」
「隊長。最近、ダンジョンの中で、笑い声とか話し声が聞こえません?」
「幻聴かと思ったが、おまえもか?」
「大体あれが聞こえると、ダンジョンが消えるのですよね」
「やっぱりな。結構、子供ぽい声で怖いだろ」
「なんの話ですか?」
「いやな、」
この声の正体、ホラーではなく。
ダンジョンでは、階層が変わると音などは聞こえないが、魔力は連続している。
それに気がついた子供達が、魔力に声を乗せることを思いついた。
「大丈夫。降りてきて良いよ」
「分かった。皆突撃」
「いやっホー」
こんな感じで、階段ごとで声を掛け合う。
ところがこれが、日本側まで届いているようだ。
それが、情報として。俺たちのチームの中で、共有される。そして皆が使うようになった。
新技術により、悲劇は起こる。
「ねえねえ。真一さん。行こう」
「あん? 今攻撃中だろ。もうちょっと待てよ」
「だって、最近忙しそうだし。ちょっとだけ」
「ちっ。俺そんなに早くないぞ」
そう言って、別通路へ消える。
「あれ? ねえ、この声」
「あー。真一さんと? この声は、エルミかな?」
「そういえば、居ないわね。声が魔力に乗って」
「あーうん。こっちまで、変な気分になっちゃう」
そう。エルミの嬌声が、いや思念まで魔力に乗って垂れ流される。
皆影響を受け、モンスターを倒しながら、もじもじし始める。
「ひっ。隊長。とうとう、女性のすすり泣きまで、聞こえるようになってきました」
「ああ。俺にも聞こえる。全体攻撃中止。一度ダンジョンを出るぞ」
「これって、すすり泣きと言うより。あれ?」
一部の隊員は気がついたようだが、脱出し。それから、1時間ほどでダンジョンは消えた。
「やっぱり。真一さんとエルミ。何処でやってたの?」
「なんの話だ?」
「隠しても無駄。エルミの思念が、ダンジョンに響いていたから」
それを聞いて、真っ赤になるエルミ。
さすがに、恥ずかしかったようだ。
「窪田さんずるい。さっきので女が疼くの。責任とってよ」
「さすがにこの人数。できるか」
そう言って、逃げ始める。
現れたモンスター達は、災難をうける。
結果。ダンジョンは最短時間で、攻略されることになった。
だが、逃げられず。
真一は、転移して姿をくらます。
そのせいか、その晩。
プローペで、酔って暴れたチーム連中により、悲劇が起こされる。
話を聞いた俺は、頭の中にサバトが浮かぶ。
不幸中の幸い。そのおかげで、幾人かカップルができたようである。
笑いながら、魔力に思念を乗せるのは危険だなと痛感する。
俺たちの魔力なら、この世界中に声を降らせそうな気がする。
「笑い事じゃないわよ。とんでもないわ」
「そうだな。気を付けろ。町中に嬌声を降らすと、町中が発情するぞ」
「げっ。それでなくとも、こっちの世界。皆そういう事にオープンなのに。とんでもない事になりそう」
「ほれほれ。我慢しろ」
「あっやっ。ちょだめ。ああっ」
「真一様。噂ですが、幾人かお手付きにしたと、聞き及んでおります」
目の前に居るのは、カリーネ。そして、横に控えるシーラ。
「迎えるなら迎える。お遊びでしたら金銭でも払い。きちっと収めてください。お立場上。醜聞でも出れば、松田様にまでご迷惑が及びます。よろしいですね」
「えーあ。はい。気を付けます」
親に紹介をすると言い出した時から、カリーネに妙な貫禄が出始め。すっかり尻に敷かれている真一。
「それと土地を、ハーパラ様を通し、キルペライネン様より頂きました。間借りではなく、屋敷を御用意下さい」
「はい」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
216
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる