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第二章 宇宙人来襲

第21話 事態は複雑に

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「ご報告です。また力が使われまして、これがデータです」
 スクリーンが渡される。

「波形が歪んでおるな。変異をしなかったのか?」
「その様です」
「ふむ。今回搭載しておったのは?」
 聞かれた係員は、ぺらっと薄いスクリーンを取り出す。

「軍用原住生物殲滅用生物兵器。タイプベータのようです」
「ふむ。有効範囲の広いタイプを試してみろ」
「はっ。ですがあれは、原住民を強化いたしませんか?」
「些少のことだ。かれが変異をして、器が魂に引かれて元の姿に戻れば、きっと力を取り戻す。その時にの地の者達は彼をあがめるだろうし、かれも器の呪縛から解き放たれる。それはきっとの地の者にも良いことだろう」
「はっ。そのように手配いたします」
 そうして、彼は謁見の間を退出する。

 賢者達。彼らは、竜司に何かを望み。試しているようだ。


 そして、竜司が安易に力を使った影響が出る。
「君。何があったんだい?」
 担当医が、首をひねる。

「どうしたのでしょう? 痛みがなくなって。この数日、快適なのですけれど……」
「そうだろう。癌。キャンサーが消滅をしている。ステージ四で…… いやまあ良い。君の癌は治った。むろん経過観察は行うが、胃の炎症まで消えている」
 医者は、訳がわからない様子だ。

「ありがとうございました」
 診察室を後にする。
 彼女は、先日竜司に助けられた、ベルタ=スローンズ。

 彼女が怪我をしていたため、竜司が治療をした。
 その波動は満遍なく彼女を包み、異常をすべて治癒させた。

 その力は、遺伝子の異常まで修復をしていた。

 すべてを正しき道へ導く。
 地球で、その後。聖なる力と呼ばれることになる。

「沙耶、礼美。私、治ったって」
 そう言って、やっと実感が湧いたのか、ベルタは二人に抱きつき。涙をこぼし始める。

「本当? 良かったねぇ」
 二人も自分の事のように喜び、看護師さんに叱られる。

「嬉しくっても、ここに居る方は皆さんご病気なので、控えてください。でもまだ、寛解(かんかい)ですが、おめでとうございます」
 寛解(かんかい)とは、今はまだ完治とは言え無いが、症状が消えたことを表す。
 予後を見て、完治となる。

「ありがとうございます」
 三人はそう言って、会計の方へ向かい始める。

 そこへ、担当医がやってくる。
「何があったのだろう? 彼女、既知の症状がすべて消えた」
「えっ、薬が効いたのではないのでしょうか?」
「インターフェロンも上手く働かず、アポトーシスへの誘導も、うまく行っていたとは言えなかった。放射線で、少しは縮小したが。それが突然消滅だ。この前三センチを超えていて、さすがに切ろうかと言った矢先だ。訳が分からん」
 医師は完全にパニック状態だった。

 血管への浸潤。転移。はっきり言って、可愛そうだが、半年持たないと思っていた。

「ねえ。実は私も、この前からすごく体の調子が良いの」
「えっ私も」
 沙耶と礼美も暴露する。

 病院に併設されたコーヒースタンドで、三人は乾杯をしていた。

「何かあったと言えば、絶対あの人だよね」
「そうだね」

 三人はそろって思い出す。

 困っていた三人をスパッと助け、気がつけば痛かった怪我が消えていた。

 後ろに、かわいい感じの女の子、二人を連れていた人。
「でも、かっこよかったね」
「名前を聞いたのに、たいした事は無いとか言って。後はやっておくから。その格好じゃなんだし。気をつけて早く帰って。なんて、言ってくれて、あの時後ろに居た人。どちらかが彼女かなぁ」
「モテそうだから、二人共だったりして」
「えー。でも、それでも良いよね。超優良物件そう」

 二人の会話は、キリスト教徒のベルタを驚愕させた。
 ジャパニーズカルチャーに、二人は毒されている。ハーレムは駄目よ。

 だが言葉には出せなかった。
 もし彼が治してくれたのなら、彼は奇跡を与えてくれた。

 信じてきた、宗教を捨ててもいい。そこまでふと考えた。
 でもハーレムは……
 ベルタはつまらない妄想で、せっかく治った胃を痛める。


「ただいまぁ」
「あらあら、お客さんが一杯ね」
 いつの間にか、母さんが帰ってきていた。

「あっ。すみません。しばらくお世話になります」
「えっとまあ、はい。いらっしゃい」
 意外と寛容だった。

「もう、彩ちゃんは来ているわよ。冷蔵庫の中に入っている物も使って良いんですって。材料はお鍋よね。あれ?」
「そうです。あれは、彩じゃなく。私と竜司君が買い物してきたもので、彩の買ってきた物は昨夜調理している物がそうです」
 そう言うと思い当たったのだろう。
 加熱をすれば、オーケーシリーズ。

「ああ。あれね。ありがとう。伶菜ちゃんだったわね。使わせて貰うわ」
「はい」
「じゃあまあ。上がって。あっ学校から連絡があって、少し前倒しで期末試験をして冬休みを長くしますって、良かったわね」
 母さんは和やかに伝えてくれる。だが。

「冬休みが長いのは良いけれど、試験の前倒しって」
「あら。授業を聞いてれば、焦らなくていいわよね」
 そういった母さんの目は、笑顔だが怖かった。

「そうだね。勉強するよ……」
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