最悪な人生を、華やかに。-能力を得て自分のために使う。 世界を救う? えっ、何で俺が。-

久遠 れんり

文字の大きさ
20 / 36
世界の救済

第20話 直樹と秘密の部屋

しおりを挟む
 そんな電話の後、ドアがノックされる。
「お母さん開けて」
 十六夜そっくりの声色?

 そして、玄関チャイムが二度鳴る。
「もう、開けてってばぁ」
「手をお見せ、お母さんなら白いはず」
 お母さんから、そんな事を言われる。

「もういい。帰る」
「ちょっと待って」
 あっさりドアが開いた。

 すかさず、靴を差し込む。
「お嬢さんを連れて参りました。わたくし、使徒山上と申します」
「使徒山上? 昔そんな感じの名前をした、宝石商がいて捕まっていなかった?」
 あれは、ココ?

「さあ? これ名刺です。こっちは教会からの許可証」
「許可証って、これは何語でしょうか?」
「ラテン語らしいですよ」
 まあそれで納得をしてもらい、上がり込む。

「と、言う事で、金銭的な物は収めました」
 そう言うと、いきなり態度が変わる。

「まー。まあまあ。それはそれは。お寿司でも取ろうかしら?」
「あーいや。話は付けたと言うだけです。まともなところに対しては返してくださいね。まあ、任意整理という奴でしょうか」

「???」
「良くある、おまとめとか、まあそんな物だと思ってください。うちの場合この方が取りまとめを行った弁護士です。此処に忘れず入金をしてください。将来金利は放棄させていますので、お安いでしょう」

 必要なことは言ったので、後は、十六夜ちゃんの話だ。

「それで、もうお金の無心はしてこないで。いい? わたし。引っ越すから。大事なとき以外には電話をしてこないで」
 そう言って、とりあえず距離を置くことにした。


 帰り道。
「どこか良いところを探さないとなあ。本当ならセキュリティの付いているところなら安心なんだが」
 そう言いながら、彼女が魔の者に狙われていることを思い出す。

「そう言えば、放置するとまずいんだったな。うーん、家に来るか」
「えっ。良いんですか」
 そう言って嬉しそうな彼女。

 仕方が無いな。そう思って、手を上げる。
 すると、どこからともなく、車がやって来る。

 それに乗り込むと、家に向かう。

 車に乗り込んだ彼女だが、俺に対して思っていたイメージと違うのか、車の中を見て、俺の顔を見るという変な行動をしていた。

 彼女は助けた後、ホテルに住んで貰っていた。
 当然見張りは付けてあった。
 だがまあ家の方は、初めてだな。
 到着して、すっかり慣れたエレベーターで昇って行く。

 家に入ると、二人が飛んでくる。
「この子ね」
「どうして分かった?」
「うーん、なんとなく」
 と言う事で、その晩は部屋で食事をしながら、親睦会を開く。

永礼 十六夜ながれ いざよいさん。家庭の事情でここに住むことになった」
「桜井小雪です。私は…… 私もまあ家庭の事情かな?」
「私は、三浦 瑠璃みうら るりよろしくね。今院生の一年」
「あっ私も」
 小雪があわててフォローする。

「私は学部一年です。山上さん…… 直樹さんに助けられなかったら、きっと死んじゃっていました」
「あら、それは皆一緒よ」
 そうして不幸自慢と、マウントの取り合いが始まる。

「適当なところで、休めよ」
 そう言って、おれの部屋へと入る。

 ここは内側から鍵が閉まる。

 大学は良いが、まだ他にも困っている人は居るはずだ。

 あの地下で見た人たちが、魔の者達に誘われ、集められた困った人たち。
 大学で、相談室のような物が作れないか聞いてみようか?
 学生向けの相談室は、学務係と、医務室…… 保健管理室だっけ? そこの担当だったような気がする。

 非営利で紹介を受けて、もう少し踏み込んでみるという。

 翌日、俺と十六夜が大学に行く時間になったが、それに合わせて二人も出かけるようだ。
 ところが、二人のときは、両側に張り付き通行人に迷惑をかけていた。
 三人だと、そのバランスが少し崩れる。

 幾度か押し出されて、小雪が電信柱や、家の壁に追突をする。
 意地悪な顔をしているから、瑠璃のいたずらだろう。

 大学に到着をしてから、相談をしに行って見る。
 バックに教会がいるが、別に勧誘ではないこと、金銭的な物ならある程度まで救済が出来ること。
 望まれれば、弁護士さんを付けて動くこと。

「うーん。ありがたいとは思います。今って、日本国内やばいですからね。金銭的なフォローや弁護士的なところまでサポートが頂けるなら。少し教授会の方にかけるかどうか提案をしてみます」
 ついでに自分の身分と、神崎 慎一郎の名刺を伝える。

 すると、あっという間に話が決まった。

 うーん。権力は便利だな。
 自分が偉くなったような気になる。
 ―― 自重をしよう。


 そして、部屋まで貰ってしまった。学生相談室分室。
「こちらに、直接来ることはありません。普段は施錠をしておいてください。それでその、大学側で手に負えない案件が、紹介されてきますので、それを受け入れてくだされば。ああ。むろんあらかじめ。スケジュール調整アプリで、双方都合を合わせて面会をするようにいたします」

 とまあ、懇切丁寧にお願いをされる。

「部屋が出来て、人をお迎えするなら準備が必要ね」
 そう言って、十六夜が張り切る。

 そう彼女だけのときは、普通の小部屋だった。

 だが、そんなおもしろそうな話は、すぐに二人の耳に入る。
 彼女達は、個別にファミリーカードを持っているようだ。

 部屋に絨毯が敷かれ、ドアや壁に吸音材が貼り付けられる。

 パイプ椅子や、なが机が放り出されて、応接セットが入り、いつの間にか奥側に給湯設備が設置された。
 かくして、専用個室が出来上がる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...