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第二章 接近遭遇、そして、いきなりコンタクト

第9話 変身と計画の失敗

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「ねえ、これなにかなぁ」
 杏と共に、コントロールルームから出てきて、いきなり見せられる。
 それは、魔力を持った腕輪。
 さっきじいちゃんが、貰ったものより魔力が強い。

「これって、この宇宙船のコントロールキーじゃ?」
 そう言っても、杏は手から離さない。
「ええ? 綺麗なだけの普通の腕輪だよ」
「だとしても、勝手に持って来ちゃいけません。返してらっしゃい」
 いかん。つい、杏のお母さんのマネをしてしまった。

「うーだめ?」
「すごい魔力を感じるから、そいつはまともなものじゃない。下手に持ち出して、船のセキュリティが発動して、爆発をしたらどうするんだ?」
「えぇー。そんな事……」
「ありそうだろ」
 そう言うと、渋々返しに行くが、あれは人の物。
 らしくもなく、欲望全開だったな。

 そう、腕輪からは人の心に作用し、懐柔をするようなシグナルが発動されていた。
 息吹には全く効き目も無いが、一般地球人である杏には効いた。

 ファジェーエヴァ側は、あの手この手を仕掛けていた。
 
 その日は、じいちゃんの鍵で外から施錠をする。

 そして、週末。

 有無を言わさず、杏の改造をする。
 山野家のお母さんには、お泊まり会をすると言ってある。
 ウキウキで参加をしてきた杏だが、いま、俺のベッドで呻いている。

 せっかく、シーヴが気を利かして、宇宙船のベッドを貸してくれると言ったのに断りやがった。

 あげくだ……
「息吹っ。ごめん…… 私もうだめ……」
 あわてて、抱っこしてトイレへ……

 だが布団を捲ると、幸せそうな顔。
 抱っこして、風呂場へ直行になった。
 あの幸せそうな顔は、何なんだよ。

「良いから脱がして。気持ち悪いから」
 風呂場へ行くと命令される。もうね。何がしたいのか?

「動けないし、好きにして良いからね」
 とまあ、らしくないことを言うし。
 まあ脱がして洗って、着替えさせるが、おむつをはかせる。
 流石に暴れたが、体が動かない。

「これは、こういうプレイだと思えば……」
 杏は、そこまで来て、思い至ったようだ。
 小だけではないことに……


 シーヴから話を聞き、息吹に介護をさせよう。
 あーんとかして、食べさせて貰って……
 などと、良い所だけを妄想していた。

 だがしかし、恥ずかしいが清拭とか。体を拭いている途中で…… 息吹も男の子。
 我慢出来ずに、『良いだろ』とか言って、手を出してきて……、あーれーとか言って……

 そう、恥ずかしいが、そこまでなら誰もが通る道。

 少し先に、漏らしたが、まあまあまあ。
 だけど、大きいのはだめよ。流石にマニアックすぎる。
 そう言うのが好きという性癖もある様だけど、お互いに違う。

 杏は考え。考え抜いた末に、シーヴを呼んで貰った。
 泣く泣く宇宙船への移動。

 ――だが、宇宙船の治療ポットは、もっと屈辱的だった。

 有無を言わさずカプセルに寝かされる。
 それは良いのよ。

 体は動かないけれど、意識はあるの。
 機械の中で、一瞬カエル足にされ、戻ると足の間に何かが挟まっている。

 そう、いきなり挿管される。

 体も時間で洗われて、乾燥される。
 床ずれを防ぐため勝手に体位が変えられる。

 食事は、シーヴがチューブに入った流動食をくれる。
 経験上、丸一日は体がそう。
「明日には、少しずつ動けるようになるから、頑張って」
 そう言って、慰めてくれた。

 シーヴ良い子。

 そうして日曜日の夕方、歩ける程度にはなった。

「体が、上手くうごかせないけれど軽い。なんだか素材が変わった?」

 そう思いながら、宇宙船のタラップを降りたら、目の前に化け物が居た。
 そう、今までそばに居ても、見る事も感じることもなかった。
 でも、今は見える。

 顔は変わらない。
 心配してくれたのか、私を見て安心してくれている。
 でも、その魔力は何?

「お疲れ。これから、徐々に体がなじむと、人間をやめられるからな」
 爽やかにそう言ってくれた。

 ええっ? 気になって聞いてみる。
「その…… 私も、息吹みたいになるの?」
「ああ。安心をしろ。すぐに強くなれるさ」
 爽やかに…… 違うのよ。

 私も化け物になったのね。

 息吹のお家で、大量のキャベツ炒めと、サラダ。そして親子丼を頂いて、お家へ帰った。
 宿題をしていて、少し賢くなっていることに気が付く。


 そして、意識を広げると、息吹を感じる。
「何の用だ? 念話なんか使えたのか?」
 思わず、意識を閉じる。
 頭の中で響いた、息吹の声。

 そうか、脳まで変わったのね。

 でもこれ、寝ぼけて息吹をを呼んだりしないのかしら?
 例えば、息吹のことが好きとか?


 その時、息吹はお茶でむせ込む。
「聞こえたぞ。まあありがとう」
 素直な返事が来た。

 当然、杏は引っくり返る。

「あうあうあう」
 そんな、念話がやって来る。

「杏、慣れるまで念話をするな。周りにいる人間に全部聞こえるぞ」
 むろん念話が出来る人間にだが…… じいちゃんとシーヴには聞こえただろう。


 
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