発見された地球。それは恩人である勇者の母星だった。なぜか起こった攻撃。両者は手を繋ぐ道を模索するにゃ。

久遠 れんり

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第四章 世界は戦乱へ

第20話 発生した新国家達

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 その頃、ヨーロッパでは、天候回復後から企業連合国家が作られていた。
 アメリカなどでも、復活をめざし、人々は動き始める。
 そう人々は、何時までも悲観はせず復興を目指した。

 だが少ない物資の奪い合い、モンスターの出現。
 魔法使いの登場。

 比較的平和な日本と違い、世紀末感が広がっていく。
 人々は武装し、チームが単位となっていく。

 最初は、警官の生き残りや軍が支配をしようとしたが、苦戦をすることになる。

 比較的無事だった地方は、町の周囲にバリケードを作り応戦をする。
 言わば戦国時代に突入。

 だが、原油と生産ラインを持った企業達は強かった。

 私有地を中心に、人を集め、集まった人たちに役割を与える。
 組織的な骨組みは、すでに存在する。
 立案と命令を下せば良いだけ。
 そう、彼らにとっては、簡単な話だった。


 警官や軍が、苦戦をしたのは、物資不足。
 軍がその事を思い付いたのは、レーションの残りが見えだしたから。
 あわてて、現地調達をしようとしたが、備えのないところは住民共々奪われつくされていた。

 かといって本格的に守りを固めた町は、簡単には落とせない。
 だが、背に腹は代えられない。
 軍は、従わない者達に懲罰を行うことにする。

「食料を渡しなさい。我々は君達をずっと守っている。これは強奪でもないし、役割に対する正当な報酬を求めているだけだ」
 そう。そんな理屈を言って、兵達は自身を納得させる。
 これは悪ではない。正当なものだと。

 だが、町側からの回答は、思いとは違った……
「やかましい。俺達が襲われて困っていたときに、軍は来なかった」
「それは結果論だ。此処以外にも多数の攻撃を受けている場所があった。祖国全体を守っていたのは我々だ」
「それこそ、勝手な言い分だ。守ってやったところに言え。うちは守って貰っていない」

 そう、戦闘していたところは、自らが敵を殺すため。作物を踏み潰し、砲撃で燃やしてしまった。クレーター近くに現れた、巨大なモンスター達。
 ついつい、羽目を外して撃ちまくった。
 だからこの羽目だ。

 そうして泥沼になっていく。

 その頃、企業連合達は提携し、物資の管理と流通。
 基本は現物。
 世界が不安定な状況で、手形のような扱いである金は意味を持たない。
 双方が欲しいものを擦り合わせ、交換をする。

 むろん企業内部では金が動き、報酬として支払われる。
 それは、きちんと品物と交換が出来る。
 国家の肩代わりを、会社が行っている。

 そんな所に、難民がやって来る。
「軍に蹂躙された。助けてくれ」
 そう言って。

「人手は欲しい。そして脅威は排除しよう」
 命令が下される。

 町を占拠し、居着いていた軍。
「隊長。あれは何でしょう?」
 兵が見つけたのは、大量のドローン。

 小型の物だが、どうやったのか長距離を飛んでくる。
 そして、軍の迷彩服を見ると追いかけてくる。

 そうこの小型ドローンは方向と、目標探査。
 迷彩などの、軍用制服を判断して、目標に飛んでくるだけ。
 銃を向けられると回避もする。

 非常に安価で効率が良い。

 逃げ惑い、隠れるが、なかなかドローンのバッテリーが落ちない。
 やがて太陽が沈み始めると、ドローンも落ち始める。
 爆発と共に。

 ドローンの空側には日本が開発したペロブスカイト太陽電池が貼り付けられていた。それは、二十パーセント以上の発電効率を持つ、それと同時に、内部では超小型水素発電機が動作をしていた。それにより、長時間の運用が可能だった。


 そう、軍も持っていない、最新技術。それを攻撃の主力として、大事な資源である人の損失を減らす。

 やっていることは、光希達と同じようなこと。
 だが、地球人にとって、未知の物質である魔素。
 それを使って、千年以上の歴史があるファジェーエヴァの技術。
 見たとしても、そうそう追いつけないであろう。

 そしてヨーロッパは、企業連合が国の役割を担うことになった。


 アメリカでは逆に、州単位で独立をして共和制を行っていた。
 元々州単位で、独立した法もあったことだし、おかしな事ではない。

 自治の及ばないところに怪しい連中が固まり、世紀末ごっこを行っていたようだが。

 他の国でも、組織を持つ者達が、その形を広げ、地域の掌握を行ったようだ。
 基本的に形はどうであれ、人々は安定を求める。
 
 だが、作られた組織が、何かの都合で統廃合をする。それが落ち着くまでの期間は、随分と差があったようだ。


 俺達は、三年となっていた。
 予定表に去年まで書かれていた、修学旅行などは存在せず。
 農業実習。

 体の良い労働奉仕。
「先生。どうしてこの畑、管理システムを入れてないんですか?」
「ばっ。こんな所で、俺にそんな事を聞くな」
 そう言って、人差し指を立てる。

 多分、自分の農法にプライドを持っているのだろう。
 気難しそうなじいさんが、指示を出している。

 去年までなら、お土産の野菜を貰って嬉しかっただろう。
 だが今年はもう、主要な物は余った。
 去年からで、わずか半年で復活させた。

 まあ、この辺りだけのようだが。
 市内の方や、他県はこれから何とかすると言っていたっけ。


 野良の猪が、出てくる。
 ただまあ、体高が三メートルほどある。

 最近は栄養が良くて…… まあ、ダンジョンでも近くにあるな。
 プギャーオと鳴いて、走ってくるのを、ドンと止めて、そのまま持ち上げて倒れ込む。
 垂直落下式ブレーンバスター。
 彼は自重により命を落とす。
 だが、倒れ込んだ俺は、彼に潰されそうになる。

「危なかった」
 額に湧いた冷や汗を、そでで拭く。
 服に付いた泥も払う。

「神谷。何だ今の?」
 聞かれたので、ちろっと見て答える。

「大きいけれど、猪です」
「そこじゃない」
 何か怒っている。

「垂直落下式ブレーンバスターです……」
「もういい」
 なぜか先生は、頭を抱えながら走っていった。
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