新しい年、新しい自分、変わる切っ掛けは…… 一つの出逢い

久遠 れんり

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第17話 知らなかった世界

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 それはそれ、これはこれ。

 見知らぬ他人を巻き添えにして、あまつさえ頭から御茶までかけてしまった。
 本来ならすぐに謝り、許しを請うの本筋。
 だけど彼女は、そう言う行動が不得意だった。

 この子はかわいげがない。よく言われた言葉。
 だから私は、勉強を頑張って武装をした。
 だけど男達は、おバカそうな女とばかり、付き合い始める。

「きっと、相手の知能が低い方が制御しやすいからなのね。男は女を奴隷か何かと勘違いしているわ」
 愛しているから、好きだから、そんな理由を付けて男に尽くす。
 影では、何を言われているかも知らずに、でれでれとたらし込まれる男達。
 そう愛しているからと言いながら、彼ならきっと一流の会社へと入って頑張ってくれる。そんな事を平気で口にする女達。

 どちらもこちらも、打算とだまし合い。

 だけど、三〇歳近くになると、次々に知っている者達が結婚をしていく。
 親も口やかましくなり、釣書つりしょが写真と共に回って来始める。
 釣書とはお見合い用の、身上書のような物。

 結局二八の時にお見合いをして、二九で結婚。
 今三二歳で、旦那は浮気中。

 自分は、見知らぬ男を道で拾い、ホテルへと入り、頭から御茶をかけて……

「ナニをしているの私……」
 嫌だけど、流石に謝らないといけない場面。
 やったのは、立派な暴力行為……

 ドライヤーが唸る洗面所へ向かうと、上半身裸の男性。
 旦那と違い締まった体と、一廻り大きな体。
 肌の感じも若そう。

「あの……」
「なんだよ、もう良いだろ。俺は服が乾いたら出て行くからな」
「えっ、あっそうね、ですね」
 なぜか言い直す。
 そして謝れず。

 仕方が無いから話題を変える。
 声について……
 旦那がいる部屋、隣からも聞こえていた。
 実はテレビの音だったのだが、そんな事は彼女には判らない。

 ただ、隣から聞こえた楽しそうな会話と、すぐに始まった嬌声。
「声って出る物なんですか?」
「ああ、そうみたいだな。頭が真っ白になって、何も考えられなくなるって言っていたな」
 そう言われると、彼女は考え込み始める。

「あれで、そんな事になります?」
 そう、彼女には理解できない。
「だから言っただろ、あんたのは単なる子作り。愛し合ってはいないって」
 しらけた感じで、答えられる。

「そんな」
 そしてさらに考える。

 旦那は浮気をしている。
 だから私もしていい。
 私だけ、あの人しか知らないのは不公平……

「言っているのが本当なら、してください」
 開き直り、一歩踏み込むことにした。
 無茶苦茶怖い、でもそれは、旦那との初めてした夜よりは気楽。
 経験があるから、どうなるのかを知っている。

「はっ? 本気か?」
「はい」
 今度は、新道が悩む。
 どう考えても、面倒になる気しかしない。

 だけどまあ、守備範囲には入っている。
 一五〇センチ後半の身長と、そこそこある胸、サングラスを外すと、ちょっと惜しい感じの美人さん。

 もうほぼ、シャツは乾いた。

「本気でするなら、ほら湯は張ってある、風呂へ行け」
 これは賭けだった。
 浴室もトイレもガラス張り。
 口だけなら、嫌がって終わるだろ。

 だけど、浮気された女の意地があった。

 景気よく脱ぎ、浴室へ入って行く。
「マジか……」
 新道はシャツをクローゼットへかけて、戻ってくる。
 体を洗い始めていた彼女……

 覚悟を決めて、ズボンを脱ぐ。

「ほら、触るぞ」
「―― はい」
 がっちがちの緊張状態。

 少しため息を吐くと、背中側からゆっくりと覆い被さる。
 軽く抱きしめると、耳元で囁く。
「強引にはしないから、そんなに奥歯を噛み締めなくても殴りゃしない」
 体育会系男子にしか通じない話。

「昔は、そう言われたら、殴られる準備だったんだぜ」
 そんな話を幾度か聞いた。

「何ですかそれ?」
「昔の運動部じゃ、歯を食いしばれって言われると、殴られたんだ」
「うわこわ、野蛮だったんですね」
「だが殴られたくなければ、悪さはしなくなる。抑止力だな」
「でも口で言えば」
「口で言って、皆素直になるのか? あんたは旦那に何も言われたことはないのか?」
 まあ少し賭けだが、夫婦ならば、夜のことについて、何か言われたこともあるだろうと考えた。

 そう言われて、思い出すと、初期は色々と言われた。
 確かに、二人で色々と確かめるとか、言っていた気がする。
 だけど私は、子作りの行為だと言い張った。
 怖かったし、慣れていなかったから、夫婦だからするものだと、自身に言い聞かせて受け入れていた。
 最近になって、夫婦だからしなきゃいけない事はないと世間が言い始めて、やっぱりと納得をした。

 だが、前提が違う。
 仲が良ければ、毎日でもイチャイチャしたい。
 いやだと思い始めたときから、夫婦関係は、惰性か打算かその関係は終わっている。
 少なくとも、新道はそう思っている。

 そしてそんな話をしながら、彼の手はボディソープを使い、彼女の体を優しくずっと洗っていた。

 体をなでる、優しい感触。
 でがそれは、決して自分の手ではない。
 その違和感が、別の感覚を呼び覚ましていく。
「あっ」

 自分の口から出た声に彼女は驚く。
 意識的に出したものではない。
 彼の手が、胸の先をなでたときに、つい出た声。
 そして、ぞくぞくとした感覚。
 ついきゅっと、お尻に力が入る。
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