集団転移から始まる、非現実な日常。-人間死ぬ気になれば、何とかなるかもな。-

久遠 れんり

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第3章 周辺国との協力と発展

第47話 双方の思惑と王の決意

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「ええい。奴らはどうした」
 デニス=ヘルストレーム伯爵は怒るが、帰ってこない者は帰ってこない。
 もう出発の時間がやって来る。

 そう言っても、目と鼻の先には敵は見えている。

 片付けの時間を取ったため四日前になるが、相手は、警戒を解かずじっとこちらを見ていた。

 当然、ジャンパオロ=オリヴェル伯爵とエミリアン=リクハルド男爵は下品な妄想を垂れ流して怒りを買った。

 貴族とも思えない下品なモノ。

 そう、領を救済したと女神と称えられている慶子に対し、白昼往来で見世物にするとか、ピーするとか。

 まあまあ、下賎な奴らよと隊長である、セルソがため息を付く。
 そして、練習がてらの殲滅戦は見事はまった。
 相手は打開策も見つけられぬまま、ただの標的として、倒された。

 本当に、この世界の戦いとしては、あっという間というのが正しい。
 普通は、日没まで、わあわあと戦い、数日を掛ける消耗戦。

 徴用兵である、農民達が減ってくると、手打ちなども結構ある。

 だが今回は、貴族達も含め殲滅。
 あまり有ることではない。
 貴族が死ぬと、王を挟んで色々とややっこしい貴族社会。後々問題となる。

 今回は、開き直った事もあるが、下品な貴族を生かしておくな。
 そんな気持ちが、爆発をした。

 武器を持ち、強くなった農人達。
 普通なら、剣の支給などもってのほか、棒きれを持ち、農民同士で殴り合い。
 下手をすると、その最中に背中側から矢が飛んでくることもある。

 それがだ、革に金属を埋めたものだが、鎧を貰い。
 服に靴。
 指なしの革手袋。
 矢よけのマントまで。
 すべて支給された。

 訓練は厳しかったが、武器の扱いは簡単ですぐ覚えられた。

 その好待遇を、決めて執り行ってくれたのが、女神様。
「徴用兵とはいえ、仲間であり戦力です。この方達が死んでしまえば、作物の生産をあなた方が出来るのですか?」
 聞けば理不尽な話だが、農民達にとっては、ありがたい話だ。

 当然だが、文句を言っていた、貴族達も従う。

 国中から蔑まれていた、この領の貴族。
 すべてが貧乏だったが、すべての家に役割を与え、目に見えて生活が楽になってきた。
 その差配も彼女だというのだ。

 従わなければ、元の生活に戻ってしまう。
 今更それはできない。

「気に食わんが、あの能力は本物だし、領主であるアルトゥロ男爵が心酔をしている」
 そんなことを言って、渋々だった者達も、今回の戦いで本当の恐ろしさを理解する。
 武器が変わったからと言って、どうなるものか。そう言っていたのもわずか。
 同程度の人数だとしても、一方的。
 そう一方的なのだ。

 見たことのある、隣のへぼ領主達が相手だったが、そのために中に混ざっていた武の者を見知っている。
 それが、何も出来ず倒れていった。

 時間が経ち、それが事実だと頭が理解したとき、人を小馬鹿にして笑う女。
 その姿が、恐ろしくなってきた。
 あの笑いは、すべてを見通し出ていた笑い。

「大丈夫ですから、迎え撃ってください。よほど馬鹿じゃなければ王様は引いてくれるはずです。引かなければ、いっそ倒しちゃいましょうか? あーまあ。これは、冗談ですけれどね」
 そう言って、笑っていた。

「ひょっとすると、本気で?」
 『倒しちゃいましょうか?』
 その言葉が、主立った貴族の中で繰り返される。

 先代、先々代から聞かされていた打倒王家。
 現当主が、あれは間違った情報だったと言って、拳を降ろし、影ではふぬけだと言われていた。
 だが大義さえ有れば、やる気だった?
 理由が誤りだから、一旦反故にした?
 本質は……

「いやあ、実際目にすると怖いよ」
「そうだな。後ろで控えていた騎兵達。まさか、直接矢で射貫かれるとは思っていなかっただろう」
 セルソが、ホアキンの問いに答える。
 今回は、アルトゥロの親友である、セルソ=エスピノ騎士爵が指揮をしている。
 どうこう言っても、ここは男爵領。人材は乏しい。
 
「ああ。今までの戦場と距離感が全く違う。もう歩兵など必要ない」
「いやあ、単純な歩兵など、此方の軍には居ないけれどね」
 フアニートが嬉しそうな顔で、突っ込んでくる。

「そうだったな。一番数の多い徴用兵が射手になる。これは大きい。向こうなど、肉壁にもなっていなかったからな」
 オスバルドがそう言って、みんなの顔が歪む。むろん嫌そうな顔。

「戦闘を見ていなかった、王国軍来るかな?」
 みんなが、ちらっと相手の軍を見る。

「どうだろう? 戦闘後に状況は見たからな。想像が出来れば、こわいぜ。きっと」
 そう言って、座り込んでいる敵兵を見ながらしゃべっているが、頭の中では、そこはすでに射程内だぞ、そう思い。敵に対して哀れみを感じる。

 先頭にいるのは、どう見ても農民。
 心情としては、早く逃げろと言いたい。

 だが、引くことはしないようだ。
 ここで数人だけ、調査と言い出せば、受けても良いと女神様から言われていたが、そんな気は無いようだ。

 王国軍は、全滅を見てすぐに、王に対して早馬を送っていた。
「敵、受け入れ拒否。強敵であり、エルヴィ=ヘンリクとジャンパオロ=オリヴェル両伯爵戦死。応援を請う」

 王都では、それを伝えられたとき、多くの貴族はまさかと思った。
 弱小の領。貧乏なのは知っているし、人も居ない。

 管理している、寄親の所にも顔を出すことはなく、はぐれ者。

 ただ王だけは、危惧していたモノが現実になったと理解をした。
 平穏な国内へ舞い降りた一人の女性。
 それはきっと、優れた薬にもなっただろうが、取り扱いを間違えれば、強力な毒となる。

 報告を受けたとき、王国にとっての毒になったと後悔をする。
 自身では分かっていたのに、周りがそれを許さなかった。
「いや。今更。これは言い訳だな」
 王はぽつりと言うと、自身も出ることを決定する。
 責任を取ろうと。
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