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第四章 世界との関わり
第53話 王はいつの間にか、邪知暴虐の王へ 終焉
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「ええい。あれを黙らせろ」
エサイアス=アルホ=ミッドグランド王は馬車の中から叫ぶ。
だが、精霊魔法。
その辺の魔術師に分かるはずもない。
「無理でございます。あれは、空に光の壁を作り絵を描いている様子。人間の業ではございません。おそらくは、リギュウムディ王国か、精霊の御業かと」
「ええい。大体どうして辺境伯の横に、リギュウムディ王国がいる。わしは聞いておらんぞ」
「最近話題の魔道具。魔族からではなく。リギュウムディ王国からの物だったのかも」
宰相セヴェリエ=エロヤッバイは、ぼやきながら顔色が変わる。
「とにかく、精霊相手の戦闘では、此方に勝機はありません。一度引かれますか?」
「引く? そんな事」
「まだ遊んでおられるようですが、向こうが本気になれば。あの伝承に残る戦闘が再び我が国で起こりますぞ」
そう言って宰相の顔が、さらに青くなる。
王国ミッドグランドが東西に細長く、メリディアム国と山岳の小国の間に楔のように存在している理由。
それこそが、リギュウムディ王国との戦闘の痕跡。
『獄炎の七時間戦争』そう呼ばれている。
あるとき、欲を持ったある小国が、宝を求めリギュウムディ王国へと、兵を派遣した。
その事を知ったプローペ=ディウム王は怒り、精霊を派遣する。
精霊達は人間など、ゴミを見る目で躊躇無く、派遣した兵ごと数万の国民もろとも一撃で吹き飛ばされた。山脈の脇から放たれた魔法は扇状に土地を焼き付くし、その恐るべき炎は、すべての物を焼き尽くした。
千年以上も前の話。
そこに定着し、再度開発をしたのが、王国ミッドグランドである。
まあ言うなれば、火事場ドロボーからできあがった国。
その後、都市ができるたび、教会が勝手に作られる様になったと言われている。
その精霊達が、今スクリーンに映っている。
若き王のそばで、おとなしくしている様だが、指先一つ動かさず、落とし穴を造る。
むろん本気になれば、この国など、あっという間に地図から消滅をするだろう。
まだ、辺境伯と関わりがあり、おとなしくしていることが救い。
そう精霊が本気で動けば、文字通りこの国は消滅をするだろう。
一瞬で、宰相はそこまで考えが至る。
そうなれば、することは一つ。
いきなり王へ襲いかかり、後ろ手にロープを掛ける。
馬車の扉を開くと、王を蹴り出す。
「戦闘やめーい。諸悪の根源。王を捕らえた。相手方に謝罪を行え。王は引き渡す」
それを見て、一瞬固まった兵だが、すぐに命令を実行する。
「戦闘停止」
そう叫びながら、前線へ向けて走っていく。
やがて、戦闘の停止とともに、兵達が左右に分かれて道ができる。
その中を、宰相と兵が、王を引きずっていく。
できあがっていた塹壕が一瞬で復元し、這い上がろうとしていた兵達がトーストのように地上へ跳ね上がってくる。
けが人はいるが、それは押されて転落した者達。
場が治まった後、宰相と兵が王を突き出す。
「今回の騒ぎ。首謀者は、この愚かな王でございます。リギュウムディ王国の王。望様。今回の仲裁と裁定をお願いいたします」
そう言って宰相と、兵は頭を門に向けて下げる。
当然、スクリーンの表示も戦場全体から、パンとズームをして三人を中央に捉える。
半分が、三人の姿。
半分は望達と、画面が分割される。
「ほう。王がすべての根源と言うことだが、王だけの問題なのか?」
そう聞かれて、宰相の肩が一瞬跳ねる。
どこまで知っているんだ。相手は精霊使い。精霊だけではなく周囲にいると言われている妖精も管理をしていると聞いたことがある。
ぐるぐると、頭の中で考える。
「無論王だけではありません。今回の一件を画策した者達を捕らえ、国として。その、清廉潔白な道へと歩みたいと考えます」
「よく言った。だが言葉だけでは信じられん。ここに居るウーベル=ナーレ辺境伯は、友人ともいえる御仁。彼を中心にまとまるなら、国として認めよう。そうでなければ…… 今一度、滅んでみるか。前王を怒らせて、滅んだことがあったようだな」
そう。望は、辺境伯から伝承を聞いた。
「はっはい。そのようにいたします」
反射的に、宰相は答えてしまう。
その頃、王都の王城では悲鳴が上がる。
「やばい、やばい、やばい。リギュウムディ王国の王からの推薦。それも友人だと。国民でも彼の国の伝承は知っている。勝ち目などないではないか」
そんなことを言い出し、証拠隠滅に奔走する貴族達。
そんな様子を見張る者達が多数。
焦った貴族達は、何とかするという命題を達成するため、周りなど見ている暇はない。
今まで秘密裏に行った悪事を、全暴露状態。
諜報をしている者達は、ウハウハで情報を集めていく。
今回の戦闘に兵を出した、八割の家が取り潰される大掃除が後日敢行される。
そして、その後。ウーベル=ナーレ国王の命により、一気にミッドグランド王国は近代化という、リギュウムディ王国の実験場へと進化をしていく。
プロトタイプを含む魔道具の実験場。
まあ確かに、最先端だけどね。
悪乗りする望達。それに気がついても文句の言えない王。
だが、人間の国としては最新で最強。
ウーベル=ナーレの胃は限界を迎えるが、一瞬で治療される。
文字通り、血反吐を吐く困難を迎えるが、この時の本人はまだ知らず。
反逆者の汚名から王へ。ただ浮かれていた。
ちなみに前回の『獄炎の七時間戦争』に対して『無血の七時間戦争』と言う伝承が今回できあがった。
エサイアス=アルホ=ミッドグランド王は馬車の中から叫ぶ。
だが、精霊魔法。
その辺の魔術師に分かるはずもない。
「無理でございます。あれは、空に光の壁を作り絵を描いている様子。人間の業ではございません。おそらくは、リギュウムディ王国か、精霊の御業かと」
「ええい。大体どうして辺境伯の横に、リギュウムディ王国がいる。わしは聞いておらんぞ」
「最近話題の魔道具。魔族からではなく。リギュウムディ王国からの物だったのかも」
宰相セヴェリエ=エロヤッバイは、ぼやきながら顔色が変わる。
「とにかく、精霊相手の戦闘では、此方に勝機はありません。一度引かれますか?」
「引く? そんな事」
「まだ遊んでおられるようですが、向こうが本気になれば。あの伝承に残る戦闘が再び我が国で起こりますぞ」
そう言って宰相の顔が、さらに青くなる。
王国ミッドグランドが東西に細長く、メリディアム国と山岳の小国の間に楔のように存在している理由。
それこそが、リギュウムディ王国との戦闘の痕跡。
『獄炎の七時間戦争』そう呼ばれている。
あるとき、欲を持ったある小国が、宝を求めリギュウムディ王国へと、兵を派遣した。
その事を知ったプローペ=ディウム王は怒り、精霊を派遣する。
精霊達は人間など、ゴミを見る目で躊躇無く、派遣した兵ごと数万の国民もろとも一撃で吹き飛ばされた。山脈の脇から放たれた魔法は扇状に土地を焼き付くし、その恐るべき炎は、すべての物を焼き尽くした。
千年以上も前の話。
そこに定着し、再度開発をしたのが、王国ミッドグランドである。
まあ言うなれば、火事場ドロボーからできあがった国。
その後、都市ができるたび、教会が勝手に作られる様になったと言われている。
その精霊達が、今スクリーンに映っている。
若き王のそばで、おとなしくしている様だが、指先一つ動かさず、落とし穴を造る。
むろん本気になれば、この国など、あっという間に地図から消滅をするだろう。
まだ、辺境伯と関わりがあり、おとなしくしていることが救い。
そう精霊が本気で動けば、文字通りこの国は消滅をするだろう。
一瞬で、宰相はそこまで考えが至る。
そうなれば、することは一つ。
いきなり王へ襲いかかり、後ろ手にロープを掛ける。
馬車の扉を開くと、王を蹴り出す。
「戦闘やめーい。諸悪の根源。王を捕らえた。相手方に謝罪を行え。王は引き渡す」
それを見て、一瞬固まった兵だが、すぐに命令を実行する。
「戦闘停止」
そう叫びながら、前線へ向けて走っていく。
やがて、戦闘の停止とともに、兵達が左右に分かれて道ができる。
その中を、宰相と兵が、王を引きずっていく。
できあがっていた塹壕が一瞬で復元し、這い上がろうとしていた兵達がトーストのように地上へ跳ね上がってくる。
けが人はいるが、それは押されて転落した者達。
場が治まった後、宰相と兵が王を突き出す。
「今回の騒ぎ。首謀者は、この愚かな王でございます。リギュウムディ王国の王。望様。今回の仲裁と裁定をお願いいたします」
そう言って宰相と、兵は頭を門に向けて下げる。
当然、スクリーンの表示も戦場全体から、パンとズームをして三人を中央に捉える。
半分が、三人の姿。
半分は望達と、画面が分割される。
「ほう。王がすべての根源と言うことだが、王だけの問題なのか?」
そう聞かれて、宰相の肩が一瞬跳ねる。
どこまで知っているんだ。相手は精霊使い。精霊だけではなく周囲にいると言われている妖精も管理をしていると聞いたことがある。
ぐるぐると、頭の中で考える。
「無論王だけではありません。今回の一件を画策した者達を捕らえ、国として。その、清廉潔白な道へと歩みたいと考えます」
「よく言った。だが言葉だけでは信じられん。ここに居るウーベル=ナーレ辺境伯は、友人ともいえる御仁。彼を中心にまとまるなら、国として認めよう。そうでなければ…… 今一度、滅んでみるか。前王を怒らせて、滅んだことがあったようだな」
そう。望は、辺境伯から伝承を聞いた。
「はっはい。そのようにいたします」
反射的に、宰相は答えてしまう。
その頃、王都の王城では悲鳴が上がる。
「やばい、やばい、やばい。リギュウムディ王国の王からの推薦。それも友人だと。国民でも彼の国の伝承は知っている。勝ち目などないではないか」
そんなことを言い出し、証拠隠滅に奔走する貴族達。
そんな様子を見張る者達が多数。
焦った貴族達は、何とかするという命題を達成するため、周りなど見ている暇はない。
今まで秘密裏に行った悪事を、全暴露状態。
諜報をしている者達は、ウハウハで情報を集めていく。
今回の戦闘に兵を出した、八割の家が取り潰される大掃除が後日敢行される。
そして、その後。ウーベル=ナーレ国王の命により、一気にミッドグランド王国は近代化という、リギュウムディ王国の実験場へと進化をしていく。
プロトタイプを含む魔道具の実験場。
まあ確かに、最先端だけどね。
悪乗りする望達。それに気がついても文句の言えない王。
だが、人間の国としては最新で最強。
ウーベル=ナーレの胃は限界を迎えるが、一瞬で治療される。
文字通り、血反吐を吐く困難を迎えるが、この時の本人はまだ知らず。
反逆者の汚名から王へ。ただ浮かれていた。
ちなみに前回の『獄炎の七時間戦争』に対して『無血の七時間戦争』と言う伝承が今回できあがった。
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