スローライフとは何なのか? のんびり建国記

久遠 れんり

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第六章 魔王と獣人族

第104話 試合の合間に起こった出来事

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「大体リギュウムディの王に、普通の人間が勝てるわけが無いんです。精霊を従え契約をしているのですから」
 熱弁を振るっているエリサベト。
 その前では、何故か好実と美葉が拍手をしている。

 カサンドラ=アードラー伯爵との戦いの後、好実が話を振ったのが始まりだ。
 姿はあるのにはじめの声と共に横への移動。
 アナウンスで、エリサベトが説明をしたが、好実には理解ができなかったようだ。

 そこで俺はあることに気がついた、最近精霊達の服が扇情的では無くなり、実体を持っていることに。
 伽羅は仕事の関係上、長く一緒にいるため、ちょくちょく実体化をしていた。

 だが他の連中。碧まで実体化をしている。
 だからどうということはないが、気になった。


 そしてお祭り騒ぎの魔人族領だが、北の端で獣人族の連中が入り込んでき始める。
 それを見て、報告が魔導具により伝えられる。

「獣人どもめ。何故我が国へ」
 ぷるぷると怒っているのは、宰相アマンシオ=ベルグラーノ。

 主力は、大会へ全員参加中。

 獣人達は、基本山際をぐるりとヒト族の住むホミネス=ビーバレへと進んでいるようだが、はぐれ獣人が悪さをして村を襲う。

 そこで戦端が開かれ、両者に応援が来て騒ぎが広がる。

 今その状態。

「ええい。こんな大事なときに」
 四天王、武の将軍であるルッジェーロ=ガッローニはまだ治療中。
 まあ、こいつが出ると、獣人と真っ向でど突き合いになるため、戦火は拡大をするだろう。
 だが獣人達の身に纏う魔力は、中途半端な魔法は効かない。

 悩んだ末に、元魔王であるセルビリに助言を求め、望の所を訪れる。

「失礼いたします」
 入った瞬間ものすごい威圧を感じる。
「くっ。これは」
 武人であっても体が軋むような威圧。

 それは、対話を望んだセルビリに対するもので、相対する相手は、リギュウムディの王。山川望のモノ。

 見た目には一触即発の雰囲気。

 そう、美葉が作ったイチゴ大福を、みんなが試合を観戦している間に、セルビリが美味い美味いと一人で食べてしまった。
「一人一つじゃなくて、もっと作ればよかったね」
 そう言って、美葉がフォローするが、そんな問題ではないと、みんなが怒る。

 最初はセルビリも、「あっすまん」とまあ軽く謝ったが、当然怒りは収まらず。みんなの圧は臨界へと向かう。

 そして、セルビリがそこまで怒らなくても良かろうと、開き直ったのが今の状態。

 ルッジェーロは、自身へと向けられていない圧で、すでに動けなくなっていた。
 いや、セルビリも開き直った勢いは良いが、実は焦っていた。

 しまった。望の奴本気だ。
 食い物一つ。いや多数だが……
 その時、望が口を開く。

「なあ、セルビリ。俺の暮らしていた国では、食い物の恨みは恐ろしいという言葉がある。昔読んだ本では、殺人まで起こるような話だ。お前にはイチゴ農場での作業を申しつける。アリに食われないように退治をするんだ。一匹……一匹……な」
 それを聞き、セルビリは想像をする。

 広い農場を這いずり回り、小さなアリを一匹ずつ退治をする。
 恐怖以外の何物でも無い。
 そうか。そんな苦心をして育てたモノを、ただ美味いと食ってしまった。
 己の行動を、反省する。
 己の無知による、軽はずみな行動。

「くっ。すまなかった。許してくれ」
 セルビリは、きちんと謝れる子だった。

 だが、見ていなかったから知らなかった。
 リギュウムディにおいて、イチゴの栽培開始時にアリに食われて腹が立ち、水耕栽培のプラント内で栽培されていることを。
 床は石化され、アリなど入り込める余地などないことを。

 そして馬鹿馬鹿しい殺人未遂が収まり、圧が解放される。
 やっとルッジェーロは息ができて、膝をつく。

「あれ、宰相さん。どうしたの?」
 美葉が膝をついているルッジェーロに気がつく。

「ああ皆さん。すみません。実はお願いがありまして」
「あん。なんだ?」
 すでに復活をした、セルビリが聞き返す。

「あー。実は獣人達が国境を越え我が国で悪さをしていまして、対処に困っておりまして」
「四天王はどうした?」
「ガッローニ様は入院中。ドミター様は行方不明。オードラン様はそこにおられますが……。グスタフソン様、エドガー様は、今試合に参加中です」
「ちぃ。しょうがない。俺が行ってやる。場所を教えろ。望。連れて行ってくれ」
「では、私も参ります」
 キリッと、エリサベトが手を上げる。

「ガッローニが、まだ入院中?」
「そうでございます」
 望が、碧のお願いして、薄めの神水を貰う。

「これを、ガッローニに飲ませてくれ。怪我の薬だ」
 こうして、魔王と四天皇が勢揃いで事に及ぶ。

 これが切っ掛けで、獣人国は国として半死の状態へと向かうことになる。

「うおお。すげえぜこれ」
 復活したガッローニが部屋へ飛び込んできたと同時に、転移魔法が発動する。

 目的地は、あらかじめ望が確認して決めた小高い山の上。

 最近、星のエネルギーの中から情報を拾う、本人が神の目と呼ぶ技が使えだした。
 星の外からでも地上を感じることが出来る。とっても便利な能力。

 獣人達の動きを鳥瞰して、この場を決めた。

「さてやるか」
 情報を、望と共有してエリサベトが指示を出す。

 そこへ対して、セルビリが殲滅魔法である火焔竜を撃ち込む。
 とぐろを巻き、大口を開けた魔法の竜達がさらに火焔を吐く。
 ドラゴンと違い、何故か東洋型の竜だがそれは気にしない。

 そして、追い込まれた獣人達は、一点へと集まっていく。

 そこへ極大の火球が降ってくる。

 望は怒っていた。
 宰相から聞いた、襲われた村の惨劇。
 それは女子供まで、時間を掛け、もてあそばれ殺された。
 物見達、テノフォー系の兵が調べた情報。

 慈悲は必要なかった。
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