神の都合と俺の都合

久遠 れんり

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第二章 異世界暮らし

第17話 その者達……

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 異世界の神イスカリオテは、地上を覗き非常におかしな現象と非常におかしな力を感じた。
 そうそれは、地上にあってはいけない力、神気。

 劣化版といえる魔素により、地上では魔法が使える。
 だが、明らかに魔法の枠を超えている。

 それに、死んだはずの男が、なにも無しで自身の魂を再構築。
 肉体まで治した。

 そして他人まで……

「おいー。おいおいおい。これは一体?」
 あることをふと思いつき、そんなはずはと考える。
 魂を盗んでいたこと、バレた?

 かわいく、小首をかしげてみる。
 十秒もすると、そのポーズのまま冷や汗が流れ始める。

 体から、神気が流れていく。
 それが地上へと落ちると、ツアーリボンバー並みの爆発が起きて、衝撃波は一瞬のうちに星を周回をするだろう。


 深呼吸をして、男女、二人を覗く。
 …… 見えない。
 そう、少なくとも男の方は見えていたはずだが、見られなくなっていた。
 それも、ブロックとかそんなモノではなく、自身より遙か高みに存在する波動。

 そう、自身のレベルが低くて見られない。

「おっ、おおおおおー。落ち着け自分。まだ滅せられる雰囲気はない」
 なぜあんなモノが、この世界にいて受肉まで。

 そうして、異世界の神イスカリオテは椅子に座り込み、考える人状態で思考のループにはまってしまう。

 なぜという言葉が、脳内を占拠していく。

 遊びに来ただけで、なにも手を出す気が無い八重。
 受肉して、悠人といちゃつければ、それが幸せ。
 触らなければ、神のたたりは無い。

 悠人は今、記憶が戻ったばかり。
 時が固定されている空間で、同級生達の体を満喫をして満足。

 生き返ったし、現状をよくするため少し働いているだけである。
 とりあえず今、この世界の神をどうにかしようという気は無い。

 そう何もしなければ、なにも起こらない。


「うん? この有様は? 味方がこんなにどうしたことだ?」

 一区画の味方が消失。
 当然、犯人ボンジー=タダーノくんは、めくれていたようだが、消滅。

 レオポルド=アウグス侯爵は生き返ったばかり。
「あなたの所の兵が、愚かにも、私たちに対して攻撃をしたから、少し力が暴走をしたのよ」
 八重がざっくりと説明をする。

 そこでやっと、俺は頭に刺さっている矢を引っこ抜く。
「頭痛がすると思った」
 そうぼやいて、頭の傷を治す。


 当然、侯爵は見てしまう。
 あの深さで矢が刺されば普通死ぬ。
 この世界で使う矢は加工が悪く、反しがかなり大きい。
 それが、十センチちょっと刺さったなら、鼻の下にまで矢の先端が届いていてもおかしくない。

 それを自身で引っこ抜き、頭痛がするで済ますなど……

 勇者とは言え恐ろしい、先ほどファースティナ王国の兵を消し去った魔法。
「そっ、そなた達を優遇をしよう。王に掛け合う故、我が王国で存分に力を振るってほしい」

 侯爵は英断をする。

 絶対に、敵対をしてはいけない。
 なんとか王を説得しなければいけない。
 回りに居て、状況を見ていた者を集める。
 一度、領都へ帰った後、王都フェデリーカへと旅立つことになる。

「なんか豪勢」
 皆を乗せた馬車は、ゆっくりと王都へ向けて進んでいく。

 この旅は、俺達もだが、ミリー達村の子からすると、馬車イコール偉い人という感覚らしい。
 初めて乗った馬車の中で固まっていた。

 俺達はすぐに解凍され、尻が痛いと呻くことになる。

 ミリー達に聞くと。商人とかも使っているが、判断が遅れて横切り、馬を脅かすなどの不敬などすると、普通に鞭うちとかがあるらしい。
 変態の中には、わざと言いがかりをつけて、いたぶる奴もいるとか。

「いやな世の中だな」

 これ以上無いもてなしを受けながら、俺達は王城へと到着。

 王都はフェデリーカと言うらしい。
「こちらで、おくつろぎください」
 案内された部屋、壁にんーと計四個の監視穴。

 巧妙に隠されているが俺には無駄。
 自身の力を思い出し、今楽勝状態。

 上級神が八重として受肉をして、クラスの連中の記憶改ざんまでして紛れ込み、肉体による快楽を享受するのは、少しぶっ飛んでいるが、この方は昔からそうだった。

「ねえ、魂魄こんぱくを重ね合わせて力で抜くと、変な感覚がするの。おもしろいわね」

 この神、地上を見ては、変な知識を得て試す。
 そう変なお方だった。

 なんか、事あるごとに絡んでくるし、一度など、デスサイズ。 
 俺の、ファルカリウス=メッサー=トルーシーでゆっくりと切ってみてとか、言いだして、なだめるのが大変だった。
「先っちょだけでいいから、ねえ私を刺してみて」
「だめです危険ですから」
「いいじゃない。死にはしないわよ。ねえお願い入、れ、てっ」
「だめです」
 そんな事もあった、強引にさして、この神引っくり返ったんだよな。

 おかげで、ファルカリウスが強化されて、謎の能力がくっ付いたし。

 来る道中の宿でも、
「おねがい。刺して」
 あの頃と一緒か。
 思い出した力を使い、痛みを付与して抜き差ししてみたが、それすら快感らしく、喜んでいた。
 
 さて、王はどういう判断をするのか、今なら王国くらい滅するのは簡単だが、八重がねだる。
「もう少し、この世界で遊ぶの。まだ皆を殺しちゃだめ。ゆっくりじわじわ逝きましょう……」

 死に神の、俺よりこの神の方が怖い気がするのは、俺だけだろうか?
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