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第1章 壊された生活と異世界の村

第19話 村の発展

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 この所。
 村のあちらこちらで、水柱や火柱が上がっている。
 言わずと知れた、村人による魔法の練習だ。

 すぐに、火については練習場所が決められ、そこ以外では禁止となった。

 おれは、魔法の練習を兼ねて。
 鉄鉱石から鉄の抽出と錬成をしている。

 鉄鉱石の谷まで、線路を敷設するか、ワイヤーを張ってリフトを作るかで悩んでいる。

 いまは、時間のある村人が、鉄鉱石を掘りに行って、担いできている。
 そのため、非常に効率が悪い。
 それに、カルストからの石灰石の採取を考えれば、線路を試す必要はある。

 それと、練習を進めるうちに気がついたが、人により得意魔法に、偏りがあることも分かった。
 俺は精霊から力をもらい。その為特別なのだろう。
 特に不得手はなく、全部ぶっ飛んだ出力。
 コントロールがまともにできない。
「これは、使えないのと一緒ね」
 と、川瀬さんに揶揄されている。

 川瀬さんで思い出したことがある。
 あれから、皆が抱っこをねだるようになった。
 抱っこして、あまり動かずに、長時間つながったまま全身を刺激するのが、家の女性陣にはやりらしい。やはりこちらの慣れない生活のせいで、抱き合っていると安心するのだろうか?

 他には、蒸留用のポットスティルはテスト用の1mくらいの物を作製したが、鉄臭いと不評だ。俺の目的と違い、村の中では焼酎が目下の目的になっているようだ。

 材質を銅か真鍮に変えよう。
 真鍮は、確か銅に亜鉛を混ぜたものだ。
 どっちにしろ、銅は要るな。どこかで見つけよう。
 噴火の痕跡。

 分かりやすいのは、柱状節理の近く。やっぱり温泉か?
 でも、この前の地層を見た感じ、あったとしても、火山性の温泉より、プレート性の温泉のような気がするけれど、大丈夫だろうか?

 どうあれ、熱水鉱床があることを願おう。
 物があれば、イメージだけで抽出できる。
 魔法は有用だよな。精製で、いろんなステップや準備が必要ない。ただ純粋な物が出てくることを、願えばいいのだから。

 ああそうだ、磁器用の粘土も熱水鉱床の作用で産生されると、タ〇リさんがぶらぶらする番組で見たよな。

 川瀬さんとの約束もあるし、温泉を探しに行こう。

 当面の目的を決めて、それまでに、魔法の練習を兼ねて錬成をしまくった。

 村の井戸が浅かったためか、多少鉄っぽい匂いがあったので、水の妖精と土の妖精に頼み。きれいな水脈を探して、そこに杭打ち。と、言っても錬成した金属パイプをつなぎながら、土の妖精に水脈まで掘ってもらった。

 上部にモンスターの魔石を触媒にして、回転するギアポンプを組み付ける。
 簡易的だが、水道設備を作製した。水道側経路にバルブを付けて、そちらが陰圧にならなければ、畑側の給水タンクへ送る仕様にした。

 これのおかげで、魔法が使えない人も、お風呂が使えるようになる。

 お風呂と言えば、こちらも、ファンと火魔法を組み合わせて、魔道具を作った。
 キーとなる魔石に、魔力を与えると動き、停止側魔石に魔力を流せば停止する。
 

 同じ感じのコンロも作成。
 後は、光魔法を利用して、各家に明かりが灯った。
 同じ構造に氷魔法を組み込み。
 冷たい風の出るクーラーも作ってある。
 ちょっと足せば、温かい風の出る機能を組み込みもできるが、温度のコントロールができず、エアコンには至っていない。
 同様に炊飯器は、設定が難しくて試作中。脱穀機と籾摺り機と精米機は比較的簡単に作れた。

 こうして村は、一気に文明が発展をした。


 村長と長尾さん。
「村長。あの佐藤君が来て、いきなり文明が加速するし、精霊ですか? 出会って情報を仕入れ、子供ができなかった原因までわかるとは。予想外の出来事ですな」
「こちらに来て7年間、細々と生活環境が整って来ていたが、あっという間に水道まで使えるとはね。魔法も使えるようになって、ずいぶん安全になりました」

「試作中だった、先込めの銃どうします?」
 長尾さんが聞くと。
「もう要らんだろう」
 あっさりとした村長の言葉。

「やっと、硝酸が安定したんですが」
 長尾さんが、頭を抱えながらぼやく。
「花火でも作るか?」
 そう言って、笑い始める村長。

 おれ、長尾義一は1年前。
 大学の研究室で研究中。
 ドラフト内で試薬の調整をしていた。

 その途中で、今度学会へ出すデータの事で、共著の先生が話をしに来て。
 そうたしか、軽くディスカッションをした後。作業に戻った。
 面倒なので、あらかじめ分注しておいた、試薬類をまぜる順番を間違えた。たぶんだが。
 普通。最悪でも、突沸する程度の反応のはずが、なぜか大爆発をした。

 そのため、途中で女神に会った時。こいつが、何かをしたと考え確信した。

 まあ。死んでしまったならしようがない。
 一人で来たため。
 森の中で呆然とした。
 慌てて周りを見回して、道の痕跡をたどり。
 この村にたどり着いた。

 村の人たちは、優しく俺に接してくれて、スローライフも良いなと思い。
 この村の中で、できることを探した。
 肥料や、銃の開発もその中の一つだ。

「彼、佐藤君。忙しそうだが、女の子一人分けてくれんかなぁ。なんで俺、もてないんだろう」

 硝酸を作る試行錯誤をして、村の中に居るときには、かなり匂いがきつい。その為だれも近づかなかったし、門番でNPCごっこをしているのも、悪趣味だと思われている事に、気が付いていない彼であった。
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