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第2章 広がる世界

第55話 集落にて

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 農業指導や、武器の作製方法を伝授した。

 さらに、服を分け与える。
 最初は嫌がっていたが、着せると今度は脱がなくなった。
 気に入ったようだ。

 ねねの部族は、ヨーロッパ系。
 ゲルマンよりは、スラヴ系民族の特徴を持つため。
 目のやり場に非常に困っていた。
 惜しいような気もするが、身内のジト目から。これで解放される。

 服は洗濯用に、数枚ずつ。全員に置いていくことにする。

 さらに精霊から助力をもらって、念話通信装置を開発した。
 1つをここに置き。1つは持って帰る。

 作成するためには、1つの魔石を2つに割って、それがキーとなっている。
 最初は、割るとなぜか、霧散してしまい。話にならなかった。

 すると、土の精霊が現れて、魔石は普通の石と違い。小さな粒が集まって、できている物ではなく。これ一つが、粒なんだと教えてくれた。
 だから、割るイメージではなく。分けるイメージで扱えと説明された。

 どう違うんだよ。そう思いながらやってみると、できた。
 なんじゃこりゃである。

 それと、後1つ。
 念話は、魔力に返還した魔素に、意識の波を乗せて伝える。
 水中を伝播する音の様に、空気中にある魔素を、順に魔力に変えながら、非常に遠くまで到達する。

 面白いのは、念話には相手が居ないとだめだが。
 見る事を意識して、発動すると。ダイレクトに見える。
 つまり魔素を、通じて、視界が移動できる。

 前回。船の上で魔素の揺らぎを見た時は、プランクトンとかの魔力に邪魔されたが。見る魔法なら、距離を関係なく。見ることができる。
 当然。使う魔力の問題があるので、人の内包している魔力量により。距離と範囲が限定される。

 だが、これにより、潜水艦でも。
 周りを見ながら、運転ができることとなった。
 これは、周りが暗いときとかに。無意識にみんな使っているらしい。

 そんなこんなで、1週間ほど滞在した。

 その間に頻繁にやって来るモンスター。
 オークの集落があるはずだと考え。
 逆にオークの集落へと、殴り込みに行って。せん滅をした。
 奴ら、さらった人間を、食ってやがった。
 
 幾人かは、まだ生きていて。助け出した。

 ねねたちは、喜んでいたが。
 その理由は、食料ができたとのことだ。

 その晩の戦勝会で、焼かれたオークが出てきて、人間を食ったやつだよな? と食べるのをためらっていたが。
 ねね達の、お供え物はいかがでしょうか? という。期待の目がすごいんだよ。

 観念して、1口。ほんの少しだけ、口に入れる。
 なんと言うことでしょう。

 臭みは無く。焼かれた香ばしい香りと、油の甘みが口腔を満たす。
 そこに、塩が。非常にいいアクセントとなり、良い仕事をしている。
 豚バラ肉の高級品。きっと高い奴なら、こんな味がするだろうと思える肉だ。
 きっとこいつは、人間は食っていない。そう思いながら、おいしく頂いた。

  ちょっと気になって、とりあえず意識を広げてみてみる。
 オークなどの集落は、あそこだけで他の脅威は、なさそうだ。
 奥に広がる山の方では、熊が徘徊しているが。大丈夫だろう。

 目線を上げて、上空から見てみる。空を飛んでいるようで気持ちがいい。

 あれ? この大陸? 北海道の形をしている。

 ただ奥に樺太や北方4島は無く。手前の本州もない。
 広大な北海道。いやこのサイズは大陸だな。なんだこの星?

 ふと思いつく。じゃあ探せば、本州や、九州も。
 どこかに大陸となって、あるのか?

 今度見てみよう。意識を戻すと、なぜか香織にビンタされていた。
「大丈夫? 意識戻った?」

 自身の頰を、さすりながら聞いてみる。
「どうしたんだ。一体?」
「なんだか、金色に輝きだして。全く反応をしないから」
 そう言われて、周りを見る。皆がこっちを見て、固まっていた。

 そうか。強力な魔力を使うと、人間。金色に光るのかぁ。
「大丈夫。視界を広げ。安全の確認を、していただけだから」
 みんなに伝える。

 すすすと、久美が寄ってきて、
「何か、面白い物が見えたの?」
 そう聞いてきた。
 にやにやと、何か企むような顔だが、別に風呂場は覗いていないぞ。

「この大陸は、北海道の形をしていて、びっくりした位だ」
「えっ。じゃあ、ほかの部分もあるかなあ?」
 同じような発想がわくらしい。

「俺もそう思う。今度。探してみる」
「また、船?」
「いや、最初に意識だけで、見に行けることが分かったから。そっちで見に行く」
「それで、面白いものが見えれば。実際行ってみると」
「そうだね」

「ずるいな、私の力だと。この周辺しか見られないのよ」
「魔力量サポートの、魔道具か。考えてみるよ」
 そう言って、久美を抱っこしていると。
 なぜか、順番待ちの列ができていた。

「いやあ。佐藤さん。モテモテですね。うらやましい」
 内村さんは言いながら、通り過ぎていき。
 一人の、女の子の隣へ座りこんだ。
 あれは、部族のききだったか? いや、ららかな? この部族。2文字の名前だから覚えにくい。まあ、良い子を見つけたのかな。

 この種族。実は、美男美女の集団。だもの。
 大航海時代なら、奴隷待ったなし。

 一緒に船で来た瀬戸さんも、ブラウンの髪で、茶色い目をしたカッコいいお兄さんとべったりだし。
 今は、服を着ているけど。
 それまでは、ぶらぶらしているものを見て、ぼそっと立派って、言っていたものな。大きさは、やっぱり重要なのか?

 そんなことを、2人を見ながら。ぼーっと考えていたら、なぜか久美に頭をなでられた。なんでだ? 心を読む力でもあるのか?
 確かに、あれに比べれば、粗品だがそれは承知だろう。
 泣くぞ。魔力で強化でも。試そうか。

 そういえば。
 隆も、少し小さな子と、仲良くなったようだ。
 あいつの場合。
 中身は4歳だから、いいのか? でも。体は大人。難しい問題だな。
 哲学的な問題になりそうだから、考えないようにしよう。
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