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第2章 広がる世界

第56話 さあ、帰るか。えっ?

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 オークの村も殲滅したし、壁も作って家も建てた。
 残念だが、服も着せて裸族は消滅した。

「さあ帰るか」
 そう言って、村の広場に集まる。
「もう、忘れ物は無いか?」
 皆に声を掛ける。

「準備は出来たし、着替えが寂しくなったくらいよ。船に帰ったら裸族ね」
 バカみたいなことを、久美が笑いながら言う。
 だが実際、服をだいぶ与えたので、残りは少ない。
 今度は、もっと持って来よう。
 いや転送用ゲートか? 空間魔法が必要か。宿題だな。

「じゃあ。ねねまた来るよ。何かあったら連絡してくれよ」
 ぎゅうっと抱きついて来る。ハグが挨拶なのか?
「では、佐藤普人様。又再び拝謁叶う事を願っております」
「お、おう。こちらも楽しみだよ」
 こういう時は、部族の長らしく迫力があるな。
 思わず見惚れてしまう。


 部族のみんなに手を振り、壁の4方に作ったうち、東門をみんなで出ていく。

 数日前に、ボートを見に行くと、ワニに集られていたけれど、今日はどうかな?
 着替えに持っていた服では数が足りず、一度船に取りに行ったんだよね。
 アイテムボックスみたいな物も欲しいな。
 やっぱり、空間魔法を何とかしよう。

 ボートの様子を確認し、ワニに悪戯されていないことを、目視だが確認して一安心。

 さあ、乗り込むか? ???
「なあ、人数が増えていないか?」
「何を言っているんですか? 私はせらと一緒に帰ります」
 瀬戸さんが叫ぶ。
 横にはさわやか笑顔の、ぶらぶら君。せらって言うんだへぇー。

 先頭を歩いていたから、気が付かなかったよ。くるっと周りを見る。

 内村さんの横にも、にこやかに笑みを浮かべた女の子が立っている。
 視線に気が付いたのか、
「私も、ららを連れて帰ります」
 内村さんから報告が来る。
 思わず。
「あっはい」
 と、間抜けな答えを返す。

「僕も、お友達になったので、一緒が良いです」
 隆も横には、小さな子と言っても、小学校の高学年くらいだよな? かわいい子を連れている。

 いや帰りに先頭を歩いていても、人数が多いのは分かっていたんだよ。
 なぜか横に、当然と言う感じで、りりが居るんだよ。
 見送りであってくれと、思っていたが、違うんだろうなぁ。
 にこにこと、ほほ笑むりり。

 船は3隻。定員6名。
 えーと、人間が15人。荷物は減った。困ったことに問題はない。
「じゃあ、適当に分かれて、乗って帰ろう」

 荷物を積みこみ、5人乗ったボートを、押し出して飛び乗る。
 ワニも来ず、無事。出発できたようだ。
 目指すは、河口。

 帰りは、さすがに迷わず、船にたどり着く。

 安全の為。ラダーロープは降ろしていないので、鈎の付いたロープを投げ。先に俺が上がる。昇降用のウインチを下ろして、船ごと皆を回収する。

 部屋数は、あるが各自。自分の部屋……。 ああ、瀬戸さんは、来るときには浜の女の子と3人部屋だったが、せらと二人で1部屋ね。
「了解です」

 りりはみゆき。長瀬一家の部屋に混ざってもらおう。

「さあ、野郎ども。帰るぞぉ~」
「おおっ」
 と、言う感じで、出航した。

 帰りはさすがに慣れたのか、酔わなかった。
 部族の4人以外は…… 。
 最初は、足元が揺れると、皆はしゃいでいたが、30分くらいかな? 今は部屋にこもってもらっている。
 魔力による身体強化も説明したが、今はそれどころではないようだ。
 りりは俺の前で粗相をしたと、本気で嘆いていた。
 看病を任せて、部屋を出た。


 一度。あの浜に寄港。
 海産物を採取して。一路東へ向かう。

 みゆきが、匂いでつられると言って、デッキに上がって来ていた。
 そうだよね、見ても移るもの。
 風の妖精にお願いして、船の中を換気した。


 体が丈夫なのか、2日もすれば皆元気になった。

 海鮮バーベキューで、こんなものは食べたことが無いと、食べながら泣いていた。


 最初に、浜に行くときに気が付いたが、南から北への潮の大きな流れがあるようでどうしても、北に流される。

 内村さんから報告。
「私たちの大陸に近づくと、北から南への流れになるかもしれませんね」
 
「出たときは、楽しくて気にしていなかったからな。後で上から見てみるよ」
 そう言いながら、相変わらずトローリング中である。

 その脇では、まだ釣れないの? と女子たちが、飲み物を片手にバカンスごっこをしている。船旅と言えばこれでしょうと張り切っていた。テーブル付きプールサイド ベッドを急かされて作った。日焼けは、急遽大きなかご状の木を編み込んだ天井を作ったが、蛇腹の折り畳み収納式だ。この天井を出していると、釣りのウインチが使えないし、嵐でも来れば一発で壊されるだろう。

「内村さん。追いかけて来だしたので、もうすぐ食いますよ」
 数百メートル向こうに、白波が見える。
「了解です」
 竿を持って、フッキングの用意をする。

 フッキングは、魚の顎にしっかりと針を食い込ませるために、竿を引くか道糸をグッと引っ張る動作だ。

「うーん、今」
「ふん」
 と、言って。内村さんが、フッキングをする。

 うん、引っかかってるな。

「ばっちりです」
「いやー。タイミングが分かると楽だね。網はどうだい?」
「カニはまだ先ですが。この下。マンガンノジュールみたいなのがあるので、もう少し引きましょう」
「それで、網を改造していたのか?」
「そうです」

「いやぁ、便利だね。その力」
「映像化できれば、良いんですけどね」
「できるのを、楽しみにしておくよ」

 そんな感じで、船旅を満喫した。
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