異世界の管理が悪く、(影の)管理者として派遣されました

久遠 れんり

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第2章 世の平定 魔人領

第28話 魔王王位決定戦について

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 お宿、魔鳥閑古鳥の一室。 

 焼肉パーティで、色々な人と一気に仲良くなったので、少し情報を集めてみた。

 まずは、割り込み有りの変速ルール。
 魔王王位決定戦について。

 大前提として、『魔王は、誰よりも強くあらねばならない』それが基本。
 昔はきちっとトーナメントをしていたが、魔王領というか魔人族領は広い。
 予選に到着できず、戦えないのは魔人属領の損失だ。

 ということで、予選はするが、本選中も含め『魔王たる者いかなる時も油断するべからず』という挑戦権の割符を、奪い合う決まりができた。

 いかなる状態でも、勝って奪えば、その者は挑戦者より強い。
 と、一応なるが、戦って勝ったということを証明するために、必ず見届け人が必要となっている。

 落ちていたのを拾っても、権利は発生しないのである。

 そして、見届け人と一緒に、勝ち取った挑戦権の割符を、王都騎士団の警備隊に見せ申告する必要がある。

 それで、次回から出場となるが、2回戦3回戦と進むにつれ、候補者の強さが分かってくると、割り込みも居なくなるようだ。

 ただ割符は、昔の名残で50個と決まっており、候補者がそれ以上いる場合。
 予選が繰り返される。

 そして、勝ち残った最後の一人と、現魔王が戦い。
 雌雄を決する。

 当然、この試合は、両者が万全な状態で、行われる決まりがある。
 そのため、あの時は調子が悪くて、などという言い訳はできない。

 王たるもの、いつ。いかなる時も最強でなければいけない。
 これが、魔人族領の魔王として、求められる者の条件。

「とまあ。わかったのは、こんな所だな」

「そういえば、どうしてこの時期に、王位決定戦が始まったの?」
「そりゃ、女神が遣わした、魔人族の勇者が強くて。現魔王に挑戦したからだよ」
「『魔王は誰よりも強く』が、多分効いて来るんでしょうね」

「それで、その勇者さんはどうなの? 評判が悪そうだけど……」
「多分こっちの奴らも一緒だけど。ある日突然。普通の奴が力をもらったんだ。調子にも乗るさ」

「主もか?」
「多少、調子に乗っている部分はある。うん。それは、自覚している」

「でも、調子に乗っているとは違うよね。使ったら予想以上にとか、大体こそっと、あれ?っていう言葉が出てるよね」
 それを聞いて、フェンが変な顔をする。
「その方が、たちが悪い気がする。力に振り回されている?」

「そうだね。自身の力。強さも育ち方も予想超えている。きっと、神様たちの中で、考えた、この位なら大丈夫だろっていうのが、こっちの常識を飛びぬけているんだろう」

「女神は、争いのバランスを取って、楽しんでいるだけだし」
「私が思うには、この世界の管理という点でいえば、悪くないと思うんだけれど」
「ただ。そのために、ほかの世界から人とかを盗むのが、よくないってさ。そのおかげで、ほかの世界の神様が怒っているらしい」

「それであなたに、管理してって、お願いが来たのね」
「なんと。主は神の御使いだったのか?」

「あれ、フェンに言っていなかったけ?」
「聞いていない。しかしそうか。突然失われたはずのハイヒューマンの復活。どこかの遺跡で眠っておったのかと、思っていたが。なるほど」


「まあ。と、言うことだが、みちよも異世界から召喚された人間だ」
「ああ。己が力にうぬぼれている連中の仲間か」
 一瞬、フェンの声が低くなる。

「なによフェン。言葉にとげがあるわよ」
「何も。とげなど無あるまい。事実に基づいた言葉じゃろ」
「まあまあ。仲良くしてくれ」

「フェン、尻尾が出てるぞ」
「おっと」

「それで、これから魔王になるの?」
「出たから。ついでに優勝はした方が、色々便利なんだが…… 魔王になってしまって他国に行けなくなると、困るんだよな」
「行政は部下に任せていれば、大丈夫じゃないかしら。魔王って求められているのは強さよね」

「……うん。まあそうだけどね。女神の考える。お遊びをぶっ潰すには、3種族みんな仲良くが。一番だ」
「主が、3種族の王となるのじゃな」

「はっ?」
「そうね。それが一番簡単そうだわ」
「魔人族と獣人族の王には、強ければなれる。主なら問題なかろう」

「いや。もっと高度な政治的問題とか」
「考えると一番問題なのはヒューマンの教国。召喚されてなんだけど、あそこって行動の基本が、すべて女神のためになのよね」

「つぶせばいいじゃろ。魔人族と獣人族の王になり。両側から一気に侵攻すればしまいじゃろ」
「戦争すれば、被害も大きい。それに女神を喜ばすだけだ」

「まあ。おいおい考えるさ。百里の道も一足から。とりあえずは、魔王戦。それから優勝だな」

 そんなことを言いながら、飯を食うため、一階の食堂へ移動する。すると、なぜか料理人が、厨房から飛び出して来た。

「あんたたちだろ。この前、空き地で肉焼いていたの」
「そうだけど」
「あれだあれ。こんなことを言うのはあれだが。くれ!」
 そう言われても、訳が分からない。

「ちょっと落ち着いてくれ。何が欲しいって?」
「肉に、つけていたやつだ」
「ああ。たれか」
「たれって、言うのか」

 俺は、たれを出す。
「どれだ?」
「ほしいのは全部なんだ。実は、ここのオーナーが、焼肉を食わせてもらったらしくて。また食いたいというんだが…… いくら作っても、同じような味ができないんだ」

 おれは、みちよと顔を見合わせる。
「まあそうだろうな。これには基本の味として、醤油というものと、こいつには味噌というものが使われている」
 そう言っても、料理人は聞いたこともないだろう。

「基本的には、大豆という豆。それに、米や麦を入れて、酒のように発酵させて作る。乱暴だが、味噌を絞れば醤油になる。それがないから、同じ味にはならんのだろう。とりあえず。これをあげるけれど、ずっとという事であれば、味噌と醤油を作らないとだめだな」

「そうなのか? とりあえず。これはありがたく頂く。すまない」
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