泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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夏の残照と初秋の人恋しさが……

第4話 駄目だこいつ

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 出かけていた二人が、ニヤニヤしながら帰って来た。
 怪しい紙袋を持って。

 いやな予感がする。
 だけどまあ、旅館の料理は美味しいし、お風呂も温泉で私たちは満足をしていた。

「あまり積極的じゃないじゃ無い。あこがれの彼なのに」
 凪紗にいじられる。

「あーうん。今日見て、前と違うというか、昔の記憶と今日の彼が重ならないのよ」
 つい打ち明ける。こうしないと気を回して余計なことをし始めるからだ。

「あー。あるある。数年見ないと、いきなり髪がなくなったとか」
「いや、外見じゃ無くて」
「外見じゃない?」
 なんで驚くの?今日一日一緒にいたでしょう。お腹は少し出ていたけれど、その位よ。えっいや、カツラだったのかしら?
 気になるけれど、それは横に置く。

「そう。昔の彼は、積極的ではあるけれど、人に意見を聞いた上で行動するし、結構色々な所に気がついて、優しい人だったのよ。今日の彼は、なんと言うか、ガキっぽい?」
 有希ちゃんがにひひと笑う。

「そうでしょう。結構ひどいのよ。ガキっぽくてすぐに暴走をするし。だけどまあ、その辺りがおもしろいところでもあるけれど、友人以上はいやだわ。それに今日の目付き、絶対何か狙っているから、気を付けましょう」
「何か? まさかぁ」
「いや秘宝館から帰ってきたとき、持っていた袋が怪しいです」
「よく分からないけれど、蝋人形とか、グッズの展示だけじゃないの?」
「それが、売店もあって、庇護地方のずいきを編み込んだものとか、色々なこけしさんとか売っているみたいです。あの性格なら使ってみたいとか言い出しそう」
「まさかぁ」

 そんな事を言っていた二回目のお風呂。
 戻ると二人がやって来た。

「近くにバルみたいなのがあるらしいぞ。行かないか?」
 食事の時に絡んできたから、またお風呂に行ったのに、まだ諦めていなかったようだ。

「うーん。温泉に入ったから、パス」
「あっ私も」
「私も」
 皆が断る。

「そうなのか? じゃあ部屋で飲むか?」
「今日はもう良いわ。明日もあるし。車で疲れちゃった」
 有希ちゃんはチクリと嫌みを言う。
 暗に運転が荒いから疲れたと、言ってみたのだが、無論気がつかない。

「じゃあ仕方が無いか、皆もそうなのか?」
「そうね」
 そう言って断る。

 その晩は警戒が上手く行き、問題なかった。

 だが翌日。
 観光洞窟を歩いていた。
 少しだけアスレチックな感じで、子どもでもいれば楽しいだろう。

 色とりどりにライトアップされた洞内。
 涼しいし、なんとなく雰囲気がある。

 途中で追い抜いたカップル。
 彼女を後ろから抱きかかえる感じだったけれど、男の人の右手は彼女のスカートの中に入っていた。
 見た感じは、説明の案内板を読んでいる風だったけれど、こんな所で盛るなよと言いたい。

 ローカルな所だから、普段はもっと人が居なくて雰囲気が良いのかもしれない。

「なあ、沙知」
「はいっ?」
 いきなり修平君に声をかけられた。

「お前昔、俺のことを好きだっただろ」
「えー。そうだね。お友達としてかな。あはっははっ」
 そう答える。
 あの時。彼には彼女がいたし、それが正解だろう。

「嘘をつくなよ」
 彼の機嫌が悪くなる。
「俺のことをいつも目が追っていると、玲華が言っていたぞ」
「それは、彼女の勘違いね」
 表情を消しつつ、そう言って断る。

「今、俺は誰とも付き合ってないんだよ」
「そうなんだ。がんばれぇ」
「何だよそれ? 扱いが軽いぞ」
「まあ昔は仲良かったけれど、何年かぶりに会って、いきなり旅行なんだもの」
 それもそうかと納得しようだったのだが、上手くは行かないもの。

「誰か男がいるのか?」
 そう聞かれて困ったことに。

 いや、居ると言って嘘をつくのは良いが、連絡して見ろとか言いそう。
「誰もいないなら、お試しでいいから付き合おうぜ」
「えー」
「何だよ。いやなのか?」

 困った私は、宣言をする。
「大谷君が好きなの!!」
 言ってやった。さあどうだ。

 だがその声を聞いて、振り返った二人。
 彼女達は、大谷君と随分前に行っていたはずなのに。

 どうやら、修平に声をかけられて、歩く速度が上がっていたようだ。

 そう、修平がわたしの横に並ぼうとするから、ゆっくり歩いていた。
 今思えばそれが隙となり、声をかけられる切っ掛けとなってしまった。


 そして、私の告白はもろに本人へと届き、周囲にこだまする。
 どこかでコウモリが騒いでいる。

「沙知。それは駄目よ。私も好きです。付き合ってください」
 今度は、凪紗の声がこだまする。

「ちょっとまったぁ、私がどうして、先輩に付き合って遊んでいると思っているんですか? 私も好きです……」
 三人からの同時告白。

 まあ、良いなとは思っていたし、この際勢いだ。
 横の修平はものすごく変な顔をしていた。
 旅行メンバー女子全員が大谷君推し。

 修平は彼のことを便利屋さんとしか思っていなくて、モテるなど一切思っていなかった。

 そう彼は、自身こそがモテる男だと思っていた。

 だからである。
 三人共が、自分では無く大谷へ告白。
 信じられないという驚きに、悲しそうな顔も含みつつ、絶望をミックスをした。見たことのない顔をしながら彼は膝をつく。

 そしてその目の前では、驚きつつも照れ笑いの大谷君。

 私たち、三人と共にどんどんと進んでいく。



 洞窟を出て、休憩所でたむろをする。
 しばらくしたが、修平だけは出てこない。

 だけど私は、決心をして……
 いえ私たちは、だね。

 彼にじゃれる事を優先する。
 ぱっぱらーん。頭の中でファンファーレ。
 有希ちゃんは、修平と寝たことがあることが、マイナス点として大きい。
 問題は凪紗ね。
 彼女は明るく、社交的で、何でもチャレンジする。

「あれ? 凪紗って、今彼氏いなかったっけ?」
 今の私は卑怯者。爆弾を投げる。
「ぐっ」
 凪紗がしまったという顔をする。

「もう、別れるところだったから良いの」
 そう言って開き直る。


 そんな事をしていると、洞窟の出口が騒がしくなる。
「どうしたんだろ?」
「さあ? それにしても先輩遅いっすね?」
「そうね。誰か見てくる?」
「でも、見るならもう一回チケットを買わないと駄目ですよ。一方通行なので」
「下まで降りて、また上がってくるの? それは面倒ね」
 結構歩いたのだ。
 それを、一度駐車場まで降りて、わざわざチケットを買って、また上がってくるのは辛い。

 すると、関係者専用の道から、パトカーが入ってくる。

 警官が走っていく。
 いきなり始まった、ドラマのような展開。

「何が起こっているの?」

 そう、私たちは知らなかった。
 やけになった修平が、洞窟内でじゃれ合っていた恋人同士を注意したらしい。
 するとだ、男性の方も気が短い人だったらしく、いきなり殴り合いが勃発。
 それを見たお客さんが、連絡。
 そこからはもう、芋つる式に拘束に至る。

 まだ、うらうら、なんやねん状態の男二人。
 オロオロする彼女さんがその後を付いていく。

 パトカーに乗せられそうな修平。
 そこに、大谷君が声をかける。
「修平。車のキーよこせ。先に帰っとくから」
 その声を聞いた瞬間の、絶望的な顔。

 警官は良いよと言う感じで、渋々スマートキーを取りだした修平。一応確認後、警官は鍵をくれた。
「そんじゃ。ごゆっくり」

 帰りは楽しかったの、空気はなんだかピリピリしていたけれど、表面的には楽しく帰りました。

 その後、社会人らしく、友人としてのお付き合いをしている。
 修平はなんか、会社を首になったらしい。

 さて、今日も戦闘デートへと向かう。
 今日こそは、決めてやる。


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 お読みくださりありがとうございます。
 ありますよね。
 思い出の異性。
 だけど現実はどうなのか?
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