泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

文字の大きさ
263 / 302
変わりゆくもの

第5話 そして

しおりを挟む
 初めての経験。

 少し思うところはあるが、彼女達、それぞれの違いも理解をした。
 無論口には出さない。
 笠井さんは、脇坂が放さなかったので、この日は関係を持っていない。

 この日を境に、おれは、多田野達と連むことになった。

 午後からは授業に出ようと思うのだが、一度アパートに帰り、シャワーを浴びて服を洗濯する。
 なんとなく、女性特有の匂いが、体からするような気がしたからだ。

 ぼーっと、思い出す。
 知らなかったこと。
 ずっと勉強ばかりをしていて、周りの奴らが女がどうだとか騒ぎ出した頃。
 そう、あれは中学校の二年くらいだったか?

 何がそんなに楽しいんだと思っていたのだが、人との触れあい。
 それも家族とも友人とも違う、少し深いもの。
 それは、安心を与えてくれた。
 無論快感も。

 だけど男の場合は、見た目と感じだけで、あまり受け取るものは変わらない。
 女子側からするとかなり違うらしいのだが、その辺りは、きっと男には理解できないのだろう。


 岡崎 美樹おかざき みきは、自分の部屋へ帰るとぼーっと考えていた。
 脇坂のマンションから帰ってきて、思い出す。
 彼との優しい睦み事。

 彼女は、小さな子どもの頃はそうでもなかったのだが、親戚のお兄ちゃんが化け物だった。
 かれは賢くて、性格も良く。いい人だった。
 表向きは……

 大人には、いい顔をする。
 だけど、あまり覚えてはいないのだが、小学校に入って…… 多分、そんなにしないうちだったと思う。会うたびに、いやらしいことをされ始めた。

 かれは、四つ上。
 子どもの頃の、四つもの年齢差は大きい。

 あの時は、お兄ちゃんがすでに、中学生だったと思う。
 あの頃は、一緒にお風呂にも入っていたのだが、執拗に体を洗われて、確認だと言って、お尻まで見られた。

 そして、その興味は止まらず、色々とされたし、させられた。
 その事を、親達に言いたかったのだが、上手く言えないし。なんだか悪い事をした気もして、あまり細かくは言えなかった。だから、当然分かって貰えなかった。

 相手は、その数年後。現役で京大に合格するような優等生。
 結局、自分が高校を卒業をするまで、奴隷のように扱われた。
 そう、俗に言う、性奴隷。

 家が、実家を継いだから、事あるごとにやって来る。
 正月にお盆。いつの頃からか大嫌いだったし、男の子とも怖くて付き合えなかった。

 でも、周りが言う。
「彼氏くらい作りなさいよ」
「そうよ楽しいわよ」
 まあ今でも連んでいる、美雪達だけどさ。
 そんな中で、多田野君とか脇坂君とかに出会ったのだけど、彼等はどこか、女をアクセサリーか何かのように結構冷めた目で見ている。
 抱かれていると優しいけれど、何か違う。

 でも、見つけてしまった。
 気がつかなかった。
 彼の様子が変わり始めて、初めて気がつく。
 周りの男の子とは違う、純朴な優しさ。
 遊び慣れた感じもなくって、私なんかの事でも、きちんと一人の人として扱ってくれる。言葉が、態度が優しい。

 でもでも、調子に乗りすぎていつもの生活を見せてしまった。
 彼の目の前で、多田野に抱かれた私を、彼はどう見たのだろう。
 今度会った時には、汚いものを見る目か、道具を見るような目で私を見るのだろうか?

 彼と一緒に食事。それが嬉しくて、誘ったのが間違っていた……
 今更だけど後悔……

 そう私は、彼のことを本当に好きになった。
 彼に抱かれていると本当に優しくて、心が埋められて行く。



「そう言えば、彼女がいるって、あの子よね」
 大学デビューぽい、少しちぐはぐなファッションをした子。
 少し前から、彼に張り付いている。

 だけど、酔ったときに聞いた彼の好みとは違う。
 そうだ。なら……

 美樹は自分の幸せのために、少し計画をする。
 折角見つけた好きな人。
 私の周りには居なかった、心が冷めていない、腐っていない男の子。
 そう、彼がそばにいるなら、私はきっと救われる。

 従兄弟のあいつを何とかしたかった。
 だから必死で勉強をして、薬学部に入った。
 何か自分が知らない便利なものが、きっとあるはずだと。
 見ようとしなかった、親達も何とかしたかった。

 でも、彼と結婚をして、地獄のような実家から救い出してもらえれば、私はそれで救われる。手を汚さなくてすむ。あんな奴らのために、刑務所へ入るのは嫌。
「ふふっ。彼女さんごめんね」



 ―― 結局午後からの授業も、一つサボった。
 腹が減って、食堂へ寄ったからだ。
 それに、次の授業は円と授業が違う。

 だけど……
「あっこんな所に居た。どうだったの? 楽しかった?」
 彼女が覗き込む。
 今は必修の授業のはずだが?

「おう。まだ眠いよ」
「何時まで飲んだの?」
「覚えていない。朝起きたら二日酔いでひどかった」
 まあこれは、本当のことだ。

「やっと、飯が食えるとこまで復活をしたんだ」
 そう言うと、いつものふくれっ面。

「そうなんだ。前からだけど、飲み過ぎは良くないよ」
「分かっている」
 たまに説教が多くなるんだよな。
 分かりきっていることを繰り返し言われると、流石にむっときてしまう。

「次は選択だから、また後でね」
「ほい」
 俺はたくあんを口に放り込む。
「岡崎のは、この位だったな?」
 たくあんを噛んだときの反発で、なぜか彼女を思い出した。

 何か必死で求める? いや、俺にすがりつき、行為の間中繰り返していた言葉。耳元で、好きだとつぶやいていた姿が、妙に気になった。

 でも、多田野としていたときは、何か冷めた感じだったし。
 俺の時も、抱き合っていたから分からないが、無表情で好きと繰り返していたのなら…… 怖すぎる。

「女は分からん」
 俺はぼやきながら、次の選択授業へと向かう。

「そう言えばこの授業、なんで取ったんだろう」
 スフィンゴ糖質のフコース化。
 ドラッグデリバリーの重要性は確かだが、細胞質の脂質ラフトねぇ。

「まあ、腫瘍の餌になる糖鎖に薬をくっ付けるのは、ある意味正解だろう」
 彼等は新生物とも呼ばれるように、体内で発生するが新型の独立をした生物のようなものだ。

 今のばらまき療法は、正常細胞へのダメージがきついしなぁ。
 アポトーシスの誘発もあれだし……

 なんか、三方良しのような、画期的に良い方法はないものか……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

👨一人用声劇台本「寝落ち通話」

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
彼女のツイートを心配になった彼氏は彼女に電話をする。 続編「遊園地デート」もあり。 ジャンル:恋愛 所要時間:5分以内 男性一人用の声劇台本になります。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...