泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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変わりゆくもの

第6話 ある底巧み

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「おつかれぇ」
 あの日から、数日経ち世界は平和。

 だけど少し周りは変わり、多田野達に誘われることが多くなった。

「おおい、幸夫。飯行こうぜ」
「ああ。おまえらか」
「じゃあ私、先に行くから」
 円はそう言って、気を利かせたつもりなのか、走って行ってしまう。

 まあ彼女自体が、あまり男になれていない。
 幸夫のときには、そんなこと考えることもできないほど、衝撃な事件があったから飛び込めた。

「あーまあ。良いか。どこへ行くんだ?」
「お好み。この先に良い店があるんだよ」
 お好みというのは、お好み焼きのようだ。

 ただ、俺が知っているお好み焼き屋とは違う。
 基本は、焼いたのが持ってこられるところと、客がセルフで焼くところ。

 だが、椅子まで油でギトギトなのが、お好み焼きの店だと思っていたのだが、その店は今風と言うかちょっとおしゃれ。
 カフェっぽいと言うか、カフェの居抜きなのかな?

 ハンバーグ屋のように、焼けた鉄板の上にお好み焼きがのせられて運ばれてくる。

 ただ、気になるのは店内を少し厚めのエプロンをつけた、女の子が走り回っている。
 少し短めのスカートに、おそろいのTシャツ。
 多分、制服なのだろう。

 店内は、厨房に大きめの鉄板があるせいなのか、少し暖かい。

 配膳とかをするときの、微妙な長さのスカート。そのギリギリ感が良いのだと、こいつらは言って騒いでいる。

 そう、少し色物なこの店。
 豚玉で一千五百円もする。

「高いな」
「でも、人気でな。今日は入れたけれど、普段は並ぶんだぜ」
「あっ。うまぁ」
「だろ」
 そうして、うまうまと食べていると声がかかる。

「お水はどうですか?」
「あっください」
 そう言って顔を上げると、笠井さんだった。

「あれ? ここでバイトなんだ」
「そう、制服はあれだけど時給が良いの」
 そう言いながらにっこり。

「何時に上がるんだ?」
 脇坂が、つまんなそうに聞いている。

「分からない。結構みんな好き勝手に休むから。シフトが無茶苦茶なのよ」
 そう言いながら、なぜか俺の水を飲んでしまう。
 グラスに注いで、そのまま喋っていたから、きっとつい飲んだのだろう。
 あっと驚く顔ではなく、にまっと笑い。
 また、水を注いでくれた。

 だが、受け取った後、グラスに残った彼女の口紅にドキッとする。
 キツい赤ではなく、ほのかなピンク色。

 店からの帰り道、脇坂がぼやく。
 実は、笠井に告白をして、付き合おうと言ったらしい。
 だけど、嫌だと言われたとか。

「なんか、雑だから嫌って言われた」
「あー。俺も同じ様なこと言われたことがあるわ」
 多田野も言われたらしい。

「笠井に言われたのか?」
 気になったから聞いてみた。
「ちげえよ。別の女だ」
「そうなんだ。じゃあ雑なんだな」
「なんだそれ。お前最近までどーてーじゃなかったのか?」
 素人が語るなよと言わんばかり。

「よく分かったな」
「分かるさ」
 とまあくだらないことをいいながら、教室に行くとドアがしまっていた。

「げっ。休講か。学務の前見りゃ良かった」

 そう休講とかの情報は、学務前の掲示板に貼っている。
 それなら、時間がないと思って、熱いお好み焼きを口に突っ込んで火傷する必要がなかったのに。

「どうする? カラオケでも行くか?」
「いや。洗濯をしないとな。今日は帰るよ」
 最近は、円がやってくれているのだが、そんな言い訳をして別れた。

 何だろうな。
 彼等と居ると、自分がしないところへ行ったり、思いつかない行動で楽しいのだが、何か違う。
 そして、あいつらと遊ぶと、湯水とは言わないが金がなくなる。
 脇坂も多田野も親がそこそこ金持ちで、金には困っていないそうだ。

 俺は、このペースで金が減るなら、笠井さんじゃないがバイトが必要かも。

 家に帰ると、誰も居なかった。
「あれ? 今日選択があったっけ?」
 まあいいやと、洗い物をしたり、勉強をしたり、少し前まで普通だった生活をする。

 でも、だがなんだか、おかしい。
 円が居ないと、しずかだが少しの寂しさがある。

「まだ、出会ってからわずかなのに、変だね」
 『人と人とは、支え合って生きていくんだ』
 なんかそんな言葉を聞いた気がするが、こういう事か?

 でだ、円の方は、休講だとがっくりした後、タイミング良く? 岡崎に声をかけられる。
「あなたって、大井君の彼女だっけ?」
「えっ、あっはい」
「じゃあ。連れの連れは友達。行こう」
 そう言って、強引に連れて行かれる。

 目的の場所は、ゲーセンだったようだ。
「来たかったんだけど、一人だとナンパとかされて困るのよ。たまに変なのが居るから」
「そうなんですか?」
 そんな事を言っていたのに、なんでほいほいついて行くの?

「ナンパでしょ。なんでついて行くの?」
「うーん。しりあいっちゃ知り合いなのよ。名前も知らないけど」
 そう言って彼女はケラケラと笑う。

 だけど、その目的はすぐに分かった。
 彼等は社会人らしく金払いがいい。

 モール内の店で、買い物をしていく。

「欲しいものを買っていいよ」
「いえ、私は別に」
 そう言ったけれど、岡崎さんに突っ込まれる。

「臼杵さんて、少し変わったカッコばかりだから、これなんか着たら似合うわよ」
 変わった格好ってなに?
 たしかに、彼女達に比べれば垢抜けていないかもしれないけど、普通だと思うんだけど……

 だけど、着せ替え人形にされて、いくつか試着をさせられて、例の男の人にも見せびらかす。

 でも、着替えて姿見を見ると、かなり印象の違う私が居た。
「服だけでこんなに?」
 服の色だけで、顔色まで変わった気がする。

 どうしても、今まで暗めの色を選んでいたけれど、自分にピンクとかが合うとは知らなかった。
「はい、背筋を伸ばして。あらかわいい」
「そうだな。そういう格好の方が彼女には似合うな」
「そうそう。よく見れば、素材は悪くないから、磨けば美人になるな」

 口々にそう言われて、少し嬉しくなってしまった。
 服をいくつか買って貰い、メイク用品の店でも、店員さんにお試しでメイクして貰うと、鏡の中に別人がいた。
 やったことのあまりない繭、あまり使わない化粧道具。

 私は自身で驚いてしまう。
「あら、かわいい」
「そうだな。かわいいよ」
 口々に聞かされる賛美。 
 そんな言葉に慣れていない私。そして、色々と買って貰い悪いという後ろめたさ。
 岡崎さんは良いんじゃないというのだが、私的には気が引ける。
「じゃあ、晩飯にでも行こうか」
「そうね」
 有無を言わさず次へと……
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