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変わりゆくもの
第10話 分岐点
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それから日が経つに連れて、どんどんと円の態度はおかしくなる。
円本人は、随分と心の葛藤があった。
女の子にとって、初めての相手は結構特別なのだ。
それなのに、自分が裏切った。
嫌いじゃない。好きなんだけれど物足りない。
そんな態度が漏れ出すため、幸夫のほうも流石に気がついていた。
そんな態度が気になり、女の子との事は女の子かなと、幸夫は相談をすることを考えたのだが、思い当たる人間もおらず、美樹に相談をしてしまった。
準備万端。張り巡らされた蜘蛛の巣に、彼自らが足を踏み込んだ。
だが、多田野達に相談をすれば、飲みに行こうから始まって、新しい女を抱けば忘れられるなどと言い出すことが、目に見えていた。
でまあ、ファミレスのボックスで会うと珍しく深刻な彼女。
向かい側に座ったのに、なぜかこっちへ回り込んでくる。
「あのさあ、言いにくいんだけど、これって臼杵ちゃんだよね。連れからさ最近連絡が来ないと思ったら、おもちゃができたって送られてきたの」
そこには、彼女が潤んだ目で立っていた。
場所がファミレスなので、音は出していない。
そのため、彼女が何を言われたのか分からないのだが、自らの手でスカートを捲り上げる。どうやら部屋へ入る前から、体の中におもちゃを咥え込んでいたようだ。
さらに服をたくし上げると、胸にもクリップのようなものが噛みつき、何かがぶら下がっている。
スイッチを操作されるたびに、彼女はビクッと反応をして嬉しそうな見たことのない表情を見せる。
上気して、色っぽいのとも違う、何かに侵されているような。
そう、酔っ払いに近い。
一人の男が近寄っていくと、彼女は嬉しそうに、躊躇なく股間へとしがみつく。
こちら側では、カメラを片手に、捲られたスカートの中。
専用の下着なのか、中央の合わせ目。
ホックが外されると、下着の布がはじけ飛ぶ。
前と後ろに、かなり太めのおもちゃが刺さっていた。
力が入ったのか、押し出されてきた後には、ぽっかりと彼女の内臓が口を開けて、だらだらとよだれをたらしていた。
「うわっ。すごっ」
美樹ですら、引いていた。
「あー…… まあ。もう良いよ。分かった。ありがとう」
そう言って、なぜか美樹の頭をなでて、そのまま彼女の足を跨ぎ、少し強引に通路へと出る。
「えっ。ちょっと待って。ねえ幸夫くん」
追いかけようとしたのだが、ふらふらと出て行ってしまった。
「ちょっとぉ。あっお金」
料金を払っている間に、完全に姿が消えてしまった。
『美樹に見せられた動画。
それは幾度目かの浮気。二度目からは、美樹が混ざっていない。
電話番号を伝えただけ。
幸夫は事情を知っても許す気だった。
自身も、引け目がある。
だけど、あれを見ると……
彼女は、快楽にひかれて、勝手に落ちていった。
どうしようもないところへと……
幸夫は落ち込んでいた……
そこを美穂に見つかり誘われる。
誰でも良い。
とにかく、部屋に……
いや、あのアパートに居たくなかった。
「どうしたの? 大井君。この世の終わりみたいな顔をしているわよ」
美穂がそう問いかけると、幸夫は顔を上げる。
その顔は、泣き濡れてぐしゃぐしゃだった。
話しが出来る場所が良いわねと、気を利かせて連れ込んだカラオケ屋さん。
ドリンクバーで、彼女が飲み物を取ってくるわずかな時間。
その時間に耐えきれなくなり、彼は涙をこぼしていた。
そう彼にとっても、初めての彼女。
別れも当然初めてで、考えずに居よう。そう思っても、ふと浮かぶ円の笑顔。
それは、幸せだった時のもの。
今では同じ笑顔を見ても、同じ気持ちでは受け入れることはできない。
美樹に見せられた動画。それは思った以上に彼の心を傷つけた。
表面上は大きくは変わらなかった、彼女の態度。そして笑顔。
その裏で、平気であんな事を……
あんな物を咥えた体で、俺に甘えて……
思い出しただけで、吐き気がする。
そんな様子を見て、ハンカチを出そうとする美穂だが、軽く首を振ると、幸夫を抱きしめる。
彼の顔に触れ、服が濡れることも厭わずに。
「泣きたいのね。辛かったわね」
泣いている理由は知らない。だけど、彼が辛いというのは分かる。
自分も苦しんで生きて来た。
「うーん。ちょっと落ち着いたら、場所を変えよう」
彼女の困った顔と、濡れてしまった服。
「ごべん、服が」
「ううん。良いの。はいハンカチ。それか、洗面所で顔を洗ってくる?」
「うん」
彼は素直に従う。
その間に彼女は支払いをしにいき、もう一度部屋の前へと向かう。
「行こう。もう支払いはしたから」
「ごめん。後で払うよ」
そう言って彼は、素直に付いていく。
部屋に迎え入れられて、座り込む。
彼女の部屋は、やはりワンルームのマンション。
だけど落ち着いたインテリアで、ガチャガチャとした美樹の部屋とも違う。
濡れてしまった服を着替えに奥へと行った美穂。
玄関を入ると、片側にトイレとバスだろうか? 扉が二つ。
左手側にはキッチンが備え付けられている。
奥にはワンルームがあるようだが、着替えるためなのだろうキッチンで少し待ち、呼ばれて奥へと入って行った。
「そこへ座って」
促されて座ったのはベッド。
足元には毛足の長いラグが敷いてあるので、普段は床に座るのかもしれない。
ガラス天板のローテーブル。
テレビはなく、パソコンが机の上に置いてあった。
着替えた彼女は、少しゆったりした部屋着に替わっていた。
キュロットのようなすこし短めのズボンとキャミソール。
少し目のやり場に困る格好だ。
「コーヒーでいい?」
「うん」
「砂糖抜きで、ミルクだけだったわよね」
「そうだけど。よくおぼえていたね」
「うんまあ。バイトのおかげもあるし、大井君だからかな?」
ニコッと笑顔を見せて、彼女は壁の奥へと隠れてしまう。
「はい」
鼻腔に流れ込むコーヒーの香り。
「インスタントじゃないんだね」
「そうなのよ。本当はサイフォンとかが欲しいんだけど、洗うのが面倒だし、ドリップタイプのコーヒーなの」
「そうなんだ。いただきます」
「召し上がれ」
そういってにっこり。
彼女は、少し時間をおいてから問い始める。
「一体何があったの?」
俺は口ごもったのだが、どうしても聞きたくて口を開く。
「女の人って…… その…… 好きでもなくて男と寝れるのか?」
「うーん。人によるけれど、私はいけるかな。あまりしたいとは思わないけれど、淋しい時だってあるし、したい時だってあるし。女でも性欲はあるのよ」
そう言われて、少しビックリだ。
じゃあ俺と普通に生活をしながら、あの行動は普通なのか?
俺が下手だから?
「どうしたの?」
言いたくはないが、言ってみる。
「円が、彼女が浮気をしていた。それも、複数人と」
それを聞いて、彼女の目が丸くなる。
「あー。そう。残念ね」
その時に、彼女の口元が、少し笑みをこぼしたことに気がつかなかった。
円本人は、随分と心の葛藤があった。
女の子にとって、初めての相手は結構特別なのだ。
それなのに、自分が裏切った。
嫌いじゃない。好きなんだけれど物足りない。
そんな態度が漏れ出すため、幸夫のほうも流石に気がついていた。
そんな態度が気になり、女の子との事は女の子かなと、幸夫は相談をすることを考えたのだが、思い当たる人間もおらず、美樹に相談をしてしまった。
準備万端。張り巡らされた蜘蛛の巣に、彼自らが足を踏み込んだ。
だが、多田野達に相談をすれば、飲みに行こうから始まって、新しい女を抱けば忘れられるなどと言い出すことが、目に見えていた。
でまあ、ファミレスのボックスで会うと珍しく深刻な彼女。
向かい側に座ったのに、なぜかこっちへ回り込んでくる。
「あのさあ、言いにくいんだけど、これって臼杵ちゃんだよね。連れからさ最近連絡が来ないと思ったら、おもちゃができたって送られてきたの」
そこには、彼女が潤んだ目で立っていた。
場所がファミレスなので、音は出していない。
そのため、彼女が何を言われたのか分からないのだが、自らの手でスカートを捲り上げる。どうやら部屋へ入る前から、体の中におもちゃを咥え込んでいたようだ。
さらに服をたくし上げると、胸にもクリップのようなものが噛みつき、何かがぶら下がっている。
スイッチを操作されるたびに、彼女はビクッと反応をして嬉しそうな見たことのない表情を見せる。
上気して、色っぽいのとも違う、何かに侵されているような。
そう、酔っ払いに近い。
一人の男が近寄っていくと、彼女は嬉しそうに、躊躇なく股間へとしがみつく。
こちら側では、カメラを片手に、捲られたスカートの中。
専用の下着なのか、中央の合わせ目。
ホックが外されると、下着の布がはじけ飛ぶ。
前と後ろに、かなり太めのおもちゃが刺さっていた。
力が入ったのか、押し出されてきた後には、ぽっかりと彼女の内臓が口を開けて、だらだらとよだれをたらしていた。
「うわっ。すごっ」
美樹ですら、引いていた。
「あー…… まあ。もう良いよ。分かった。ありがとう」
そう言って、なぜか美樹の頭をなでて、そのまま彼女の足を跨ぎ、少し強引に通路へと出る。
「えっ。ちょっと待って。ねえ幸夫くん」
追いかけようとしたのだが、ふらふらと出て行ってしまった。
「ちょっとぉ。あっお金」
料金を払っている間に、完全に姿が消えてしまった。
『美樹に見せられた動画。
それは幾度目かの浮気。二度目からは、美樹が混ざっていない。
電話番号を伝えただけ。
幸夫は事情を知っても許す気だった。
自身も、引け目がある。
だけど、あれを見ると……
彼女は、快楽にひかれて、勝手に落ちていった。
どうしようもないところへと……
幸夫は落ち込んでいた……
そこを美穂に見つかり誘われる。
誰でも良い。
とにかく、部屋に……
いや、あのアパートに居たくなかった。
「どうしたの? 大井君。この世の終わりみたいな顔をしているわよ」
美穂がそう問いかけると、幸夫は顔を上げる。
その顔は、泣き濡れてぐしゃぐしゃだった。
話しが出来る場所が良いわねと、気を利かせて連れ込んだカラオケ屋さん。
ドリンクバーで、彼女が飲み物を取ってくるわずかな時間。
その時間に耐えきれなくなり、彼は涙をこぼしていた。
そう彼にとっても、初めての彼女。
別れも当然初めてで、考えずに居よう。そう思っても、ふと浮かぶ円の笑顔。
それは、幸せだった時のもの。
今では同じ笑顔を見ても、同じ気持ちでは受け入れることはできない。
美樹に見せられた動画。それは思った以上に彼の心を傷つけた。
表面上は大きくは変わらなかった、彼女の態度。そして笑顔。
その裏で、平気であんな事を……
あんな物を咥えた体で、俺に甘えて……
思い出しただけで、吐き気がする。
そんな様子を見て、ハンカチを出そうとする美穂だが、軽く首を振ると、幸夫を抱きしめる。
彼の顔に触れ、服が濡れることも厭わずに。
「泣きたいのね。辛かったわね」
泣いている理由は知らない。だけど、彼が辛いというのは分かる。
自分も苦しんで生きて来た。
「うーん。ちょっと落ち着いたら、場所を変えよう」
彼女の困った顔と、濡れてしまった服。
「ごべん、服が」
「ううん。良いの。はいハンカチ。それか、洗面所で顔を洗ってくる?」
「うん」
彼は素直に従う。
その間に彼女は支払いをしにいき、もう一度部屋の前へと向かう。
「行こう。もう支払いはしたから」
「ごめん。後で払うよ」
そう言って彼は、素直に付いていく。
部屋に迎え入れられて、座り込む。
彼女の部屋は、やはりワンルームのマンション。
だけど落ち着いたインテリアで、ガチャガチャとした美樹の部屋とも違う。
濡れてしまった服を着替えに奥へと行った美穂。
玄関を入ると、片側にトイレとバスだろうか? 扉が二つ。
左手側にはキッチンが備え付けられている。
奥にはワンルームがあるようだが、着替えるためなのだろうキッチンで少し待ち、呼ばれて奥へと入って行った。
「そこへ座って」
促されて座ったのはベッド。
足元には毛足の長いラグが敷いてあるので、普段は床に座るのかもしれない。
ガラス天板のローテーブル。
テレビはなく、パソコンが机の上に置いてあった。
着替えた彼女は、少しゆったりした部屋着に替わっていた。
キュロットのようなすこし短めのズボンとキャミソール。
少し目のやり場に困る格好だ。
「コーヒーでいい?」
「うん」
「砂糖抜きで、ミルクだけだったわよね」
「そうだけど。よくおぼえていたね」
「うんまあ。バイトのおかげもあるし、大井君だからかな?」
ニコッと笑顔を見せて、彼女は壁の奥へと隠れてしまう。
「はい」
鼻腔に流れ込むコーヒーの香り。
「インスタントじゃないんだね」
「そうなのよ。本当はサイフォンとかが欲しいんだけど、洗うのが面倒だし、ドリップタイプのコーヒーなの」
「そうなんだ。いただきます」
「召し上がれ」
そういってにっこり。
彼女は、少し時間をおいてから問い始める。
「一体何があったの?」
俺は口ごもったのだが、どうしても聞きたくて口を開く。
「女の人って…… その…… 好きでもなくて男と寝れるのか?」
「うーん。人によるけれど、私はいけるかな。あまりしたいとは思わないけれど、淋しい時だってあるし、したい時だってあるし。女でも性欲はあるのよ」
そう言われて、少しビックリだ。
じゃあ俺と普通に生活をしながら、あの行動は普通なのか?
俺が下手だから?
「どうしたの?」
言いたくはないが、言ってみる。
「円が、彼女が浮気をしていた。それも、複数人と」
それを聞いて、彼女の目が丸くなる。
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