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奇妙な縁は落ちている
第5話 本当のこと
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木乃実は、本当のことを言うとあまり社交的でも無いし、こんなにテンションが高めでも無い。
でも彼と出会い、気がついたときから、テンションが爆上げで暴走中なのであった。
彼との壁は感じる。でも、駄目よ駄目。
折角出来た切っ掛け。これは運命だと…… そう彼女は考えた。
「いざとなれば…… 押し倒そう」
などとまあ考えて、期待を胸に、勝負下着を着込んでやって来た。
八時からの迷走状態、あれなら、これなら、脳内シミレーションを繰り返した結果十時にまで、時間がずれ込んでしまった。
だが、今回は最強の情報がある。
それがある限り、勝てるはず。
本人的には、微妙なのだが、まあ試す。
世一は悩む。
見知らぬ女の子が作ってきた料理。
実は、杏実の一件以来避けてきた。
だけど、この子は、色々と画策するようには見えない。
だがふいに記憶が蘇り、食事を受け付けなる事がある。
睦み事と食事には、何か精神的な繋がりがあるのかもしれない。
この子は悪意を持っている感じでもないし、食ってみて、駄目そうなら謝ろう。
そして、炊き込みは鯛めしだった……
この前の一回だけだと思い、彼女に魚は嫌いだと言っていなかった。
まあ良いけれど。
怖々食べてみる。
おっ臭みがない。
いけるかも。
鯛のほぐし身と、油揚げ。シメジ、ニンジン、ゴボウ。
鶏肉を鯛に置き換えた感じか。鶏の方が良かった。
気がつけばじっと見ている彼女。
「どうですか?」
「ああ、臭みもないし美味しいよ」
「よかったあ。こっちもどうぞ」
ずいっと押し出される鶏のグリル。そして煮物というのはしっぽくのようだ。
怖々箸を出すが、少しピリ辛の鶏。
「美味いな」
少しピリ辛でビールに合う。
彼女も、グラスに注いで酎ハイを飲み始めた。
「それで、良い話しというのは?」
「あっそうそう。そうなんですよ。奥様。あそこの中華屋さん。もうお年なので、息子さんが居るところへ引っ越したらしいんです」
「そうなんだ」
「むうっ、奥様部分は、突っ込んでくださいよ」
「ああ、すまない」
そう言った後、彼女はにまっと笑う。
「それでですね。その引っ越した先。その近くに、中華そば屋さんが出来るらしいと情報がありました」
そう言ってにまにま。
「それは賭けだな」
「そうなんですよね。単なる偶然か、思った通りならば最高なんですけどね」
「結構な年だったからなぁ」
「だけど他では、物足りないんですよねぇ」
彼女も悲しそうな顔。
「まあ出来たら、行って見ようか」
「そうですね。それで別件ですが、先生、この店に行って見ません?」
彼女はナチュラルにそう言った。
先生と呼ばれるのは、何年ぶりだろうか?
「今なんて?」
「へっ。あっすみません。この店、焼き鳥屋なんですが、締めのラーメンが美味しいらしいんです。こっちだから醤油なんですが」
そう言ってニコニコ顔。
「そこじゃ無くて…… なんで、俺の事を先生と?」
そう彼女は、名刺を持っている。
だから、俺は普通の会社員だと分かっている。
それなのに……
覚えがあるなら、昔の生徒だが……
俺も覚えてはいないし、向こうだって覚えてなどいないだろう。
「あーすみません。つい昔の感じで。私は名前を聞いていなくて、先生はずっと先生だったんです」
「えっ? ゴメン。オレの生徒だったのか? えっあれ? 年が??」
少しだけパニック。
「えーと。生徒では無いけれど、生徒でした。お姉ちゃんが習っていて、同じ部屋だったので算数と言いながら、嘘をつかれて、中学校レベルの問題を習いました」
そう言ってにっこり。
その後赤くなると……
「ずっと好きだったんですよねぇ」
なんていう言葉を、小さな声でつぶやく。
「はっ? えっ? 俺の事を?」
つい聞き返す。
「聞こえたんですか? どんだけ地獄耳。さすが先生です」
そう言って、小さく拍手を貰う。
まあもう、夜中だしな……
「しかし、大学の時だったから、もう十年も前だ。君は幾つだったんだ?」
「小学校の五年生ですかね」
「そうだよな。小学生か」
そう言いながら、ついグビッとビールを飲んでしまう。
心臓はバクバクだ。
「でも、今は二十五歳です。小学生じゃありません。付き合いませんか? うり、食べ頃ですよ」
やめれば良いのに、真っ赤になって自分の胸を持ち上げる。
「あーありがとう。眼福だよ。でもオレ、言ったようにもう三十五だし」
「大丈夫です。そんなのは気にしません。子供の頃からの思いを遂げる。この前、出会ったのは運命です」
そう言って腕を組み、うんうんと頷いている彼女。
「そう言われると、そうかもなぁ。お姉ちゃんはなんていう名前?」
「波野 華奈ですよ。三月生まれで、桃にするのは当たり前だから、華奈にしたみたいですよ。私は九月生まれだから、木乃実なんです」
「そうなんだ……」
そう言うと、じっと見つめてくる。
「うん? なんだ? なんでこっちへくる?」
「覚えてます?」
そして、またじっと見てくる。
「すまない。覚えていない」
なぜか俺は、手を上に上げる。
そうホールドアップ。
「やっぱり…… じゃあ許しません」
「なんだ、どうする気だ?」
彼女はこちら側に回り込み、四つん這いで熊のようにやって来る。
ただ真っ赤な顔で。
「えいっ」
「ぐえっ」
俺は押し倒されてしまった。
まあ無論、抵抗とかしようと思ったのだが、彼女は……
いや彼女の決意というのか、男に告白をするって、それも十年の月日を超えて……
オレみたいな男に……
「ちょっと待て、なにをしている?」
抱きつかれただけだと思ったら、脱がされ始めた。
「こら、まて。ナニをする?」
そう聞くと彼女は、顔を上げてこっちを見る。
「マーキングです。今フリーだと言っていたので、私、この年で初めてなんです。安心して襲われてください」
そう言って作業に取りかかる。
「いや、訳が分からない」
「大丈夫。子供が出来たら立派に育てます」
「いや、その時は言えよ」
「じゃあ良いんですね」
そう、なし崩しというか、襲われた。
今も横で寝ていて、今度ご両親に挨拶する。
そうそう、あの中華屋は単なる偶然で、あの味じゃ無かった。
残念だが、これも時代の流れだ……
あの時の小学生が、妻になるなんて……
----------------------------------------------------------
お読みくださり、ありがとうございます。
年月は、どうやってもかってに積み上がり、決して戻れません。
タイムマシンも、自分が若返れば嬉しいのですが、最近体中にガタが来ています。
まあ、それでは次回。
でも彼と出会い、気がついたときから、テンションが爆上げで暴走中なのであった。
彼との壁は感じる。でも、駄目よ駄目。
折角出来た切っ掛け。これは運命だと…… そう彼女は考えた。
「いざとなれば…… 押し倒そう」
などとまあ考えて、期待を胸に、勝負下着を着込んでやって来た。
八時からの迷走状態、あれなら、これなら、脳内シミレーションを繰り返した結果十時にまで、時間がずれ込んでしまった。
だが、今回は最強の情報がある。
それがある限り、勝てるはず。
本人的には、微妙なのだが、まあ試す。
世一は悩む。
見知らぬ女の子が作ってきた料理。
実は、杏実の一件以来避けてきた。
だけど、この子は、色々と画策するようには見えない。
だがふいに記憶が蘇り、食事を受け付けなる事がある。
睦み事と食事には、何か精神的な繋がりがあるのかもしれない。
この子は悪意を持っている感じでもないし、食ってみて、駄目そうなら謝ろう。
そして、炊き込みは鯛めしだった……
この前の一回だけだと思い、彼女に魚は嫌いだと言っていなかった。
まあ良いけれど。
怖々食べてみる。
おっ臭みがない。
いけるかも。
鯛のほぐし身と、油揚げ。シメジ、ニンジン、ゴボウ。
鶏肉を鯛に置き換えた感じか。鶏の方が良かった。
気がつけばじっと見ている彼女。
「どうですか?」
「ああ、臭みもないし美味しいよ」
「よかったあ。こっちもどうぞ」
ずいっと押し出される鶏のグリル。そして煮物というのはしっぽくのようだ。
怖々箸を出すが、少しピリ辛の鶏。
「美味いな」
少しピリ辛でビールに合う。
彼女も、グラスに注いで酎ハイを飲み始めた。
「それで、良い話しというのは?」
「あっそうそう。そうなんですよ。奥様。あそこの中華屋さん。もうお年なので、息子さんが居るところへ引っ越したらしいんです」
「そうなんだ」
「むうっ、奥様部分は、突っ込んでくださいよ」
「ああ、すまない」
そう言った後、彼女はにまっと笑う。
「それでですね。その引っ越した先。その近くに、中華そば屋さんが出来るらしいと情報がありました」
そう言ってにまにま。
「それは賭けだな」
「そうなんですよね。単なる偶然か、思った通りならば最高なんですけどね」
「結構な年だったからなぁ」
「だけど他では、物足りないんですよねぇ」
彼女も悲しそうな顔。
「まあ出来たら、行って見ようか」
「そうですね。それで別件ですが、先生、この店に行って見ません?」
彼女はナチュラルにそう言った。
先生と呼ばれるのは、何年ぶりだろうか?
「今なんて?」
「へっ。あっすみません。この店、焼き鳥屋なんですが、締めのラーメンが美味しいらしいんです。こっちだから醤油なんですが」
そう言ってニコニコ顔。
「そこじゃ無くて…… なんで、俺の事を先生と?」
そう彼女は、名刺を持っている。
だから、俺は普通の会社員だと分かっている。
それなのに……
覚えがあるなら、昔の生徒だが……
俺も覚えてはいないし、向こうだって覚えてなどいないだろう。
「あーすみません。つい昔の感じで。私は名前を聞いていなくて、先生はずっと先生だったんです」
「えっ? ゴメン。オレの生徒だったのか? えっあれ? 年が??」
少しだけパニック。
「えーと。生徒では無いけれど、生徒でした。お姉ちゃんが習っていて、同じ部屋だったので算数と言いながら、嘘をつかれて、中学校レベルの問題を習いました」
そう言ってにっこり。
その後赤くなると……
「ずっと好きだったんですよねぇ」
なんていう言葉を、小さな声でつぶやく。
「はっ? えっ? 俺の事を?」
つい聞き返す。
「聞こえたんですか? どんだけ地獄耳。さすが先生です」
そう言って、小さく拍手を貰う。
まあもう、夜中だしな……
「しかし、大学の時だったから、もう十年も前だ。君は幾つだったんだ?」
「小学校の五年生ですかね」
「そうだよな。小学生か」
そう言いながら、ついグビッとビールを飲んでしまう。
心臓はバクバクだ。
「でも、今は二十五歳です。小学生じゃありません。付き合いませんか? うり、食べ頃ですよ」
やめれば良いのに、真っ赤になって自分の胸を持ち上げる。
「あーありがとう。眼福だよ。でもオレ、言ったようにもう三十五だし」
「大丈夫です。そんなのは気にしません。子供の頃からの思いを遂げる。この前、出会ったのは運命です」
そう言って腕を組み、うんうんと頷いている彼女。
「そう言われると、そうかもなぁ。お姉ちゃんはなんていう名前?」
「波野 華奈ですよ。三月生まれで、桃にするのは当たり前だから、華奈にしたみたいですよ。私は九月生まれだから、木乃実なんです」
「そうなんだ……」
そう言うと、じっと見つめてくる。
「うん? なんだ? なんでこっちへくる?」
「覚えてます?」
そして、またじっと見てくる。
「すまない。覚えていない」
なぜか俺は、手を上に上げる。
そうホールドアップ。
「やっぱり…… じゃあ許しません」
「なんだ、どうする気だ?」
彼女はこちら側に回り込み、四つん這いで熊のようにやって来る。
ただ真っ赤な顔で。
「えいっ」
「ぐえっ」
俺は押し倒されてしまった。
まあ無論、抵抗とかしようと思ったのだが、彼女は……
いや彼女の決意というのか、男に告白をするって、それも十年の月日を超えて……
オレみたいな男に……
「ちょっと待て、なにをしている?」
抱きつかれただけだと思ったら、脱がされ始めた。
「こら、まて。ナニをする?」
そう聞くと彼女は、顔を上げてこっちを見る。
「マーキングです。今フリーだと言っていたので、私、この年で初めてなんです。安心して襲われてください」
そう言って作業に取りかかる。
「いや、訳が分からない」
「大丈夫。子供が出来たら立派に育てます」
「いや、その時は言えよ」
「じゃあ良いんですね」
そう、なし崩しというか、襲われた。
今も横で寝ていて、今度ご両親に挨拶する。
そうそう、あの中華屋は単なる偶然で、あの味じゃ無かった。
残念だが、これも時代の流れだ……
あの時の小学生が、妻になるなんて……
----------------------------------------------------------
お読みくださり、ありがとうございます。
年月は、どうやってもかってに積み上がり、決して戻れません。
タイムマシンも、自分が若返れば嬉しいのですが、最近体中にガタが来ています。
まあ、それでは次回。
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