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第二章 人? との交流

第21話 場を読めない奴らがやってくる

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「お疲れ様です」
 家宰モルガン・セバスティヌが、拍手をしながらやってくる。
 前から思うが、隙が無いよな。
 むろん、護衛も兼ねているのだろうが。強いね。

「調子に乗って、全員倒したが、よかったのかね」
「ふむ。どちらかと言えば、無様に倒された者達が、修行不足ですかね」
 周りには、今二百人近くいるだろう。

 魔法で出した水球をパクパクと食べていると、馬に乗った兵が飛び込んでくる。
 鎧を着ていないし、騎士では無いか?

 そんなことを思っていると。
「これは一体どうしたこと。あっ、セバスティヌ様。良い所に。実は隣の子爵家が領内へと侵攻をしてきました」

「またですか?」
 そう言って、家宰モルガン・セバスティヌが嫌そうな顔をする。

「またって言うことは、良くある話なのか?」
「ええ。うちの銀鉱山が欲しいらしくて。よく来るのですよ。さて、人数はどのくらいでしょうか?」
「はっ。およそ2千人と、連絡が来ております」
 それを聞いて、セバスティヌは周りを見回す。

「兵は寝ているようですし。神乃様、ハウンド様がお呼びですので、執務室に伺った後、少しお力をお借りして、虫退治に向かいましょう」
 セバスティヌの目が光る。
 いや光った気がした。

 セバスティヌさんの後に付き、ハウンド侯爵の執務室に伺う。

 そこには、馬車の中で眉間にしわを寄せて、機嫌の悪かった侯爵はいなかった。
 さすがにもう泣き止み、次女のブランシュちゃんと奥方とで、仲良く歓談中の様だった。

「おおっ。神乃殿。ありがとうございました」
 そう言って、ハウンド侯爵は尻尾を振ってやってくる。
「何かご用事が?」
「いや。娘がお礼を言いたいと申してな」

 すると、すっと立ち上がり、こちらにブランシュちゃんがやってくる。
 奥さんも、ハウンド侯爵と同じ種類の様だ。ホワイトウルフとか言っていたか?
 血統みたいなのが、あるのだろうか?
 ちなみに、セバスティヌさんはアフガンハウンドっぽい。

「ブランシュ・ハウンドと申します。今回は、私の為に危険を冒して、奇跡の樹の実を採取してきてくれたとのこと。ありがとうございます」
 そう言って頭を下げてくる。
「いえ、効き目があってよかった。手足も問題は無い?」

 そう彼女。今はドレスを着て優雅な佇まいだが。
 少し前までは、手足の指先は腐り落ち、体毛も至る所が禿げていた。
 多分あのままだと、数ヶ月で亡くなっていた可能性が高かったようだ。
 黄色の実で、魔力アレルギーと代謝の乱れを補修。
 その後、赤色の実を与えると、欠損部や禿げまで治ってしまった。

「はい。医師や薬師も、長く寝たきりだったのに、すぐに動けるのは凄いと驚かれていました」
「そうか。それは良かった」

 と、そこで、セバスティヌさんが、ハウンド侯爵に話しかける。
「では、ご用事がお済みのようですので、まいりましょう。旦那様。例の奴らが懲りずに国境を越えたようでございます。少し、神乃様と共に追い返してまいります」
 そう聞くと、ハウンド侯爵も、おおそうかという感じで、軽くセバスティヌさんに答えを返す。

「そうか。では、いつものように頼む」
「はい。お任せください。では、神乃様参りましょう」
 そう言って、廊下へと出て行く。

「なあ。いつもの様にとは、今までどうしていたんだ?」
「大体、アバルス子爵家に関わる者が一人、先導をしていますので、その周囲に魔法を少し撃ち込めば帰ります」

「ふーん。そうなんだ。でも幾度も来ているのだろう?」
「そうでございます。まるでよく居る黒い虫の様な奴ら。……狐どもめ」

 馬車に乗せられて、現場に向かうが、少し考えていた。
 銀鉱山が欲しくて他領の中へ来る? たった二千人で? どうしてだ。

 こちらは辺境伯と言うだけあって、武力も…… 一応あることだし。

「まあ、囁いてみるか」
「はっ?」
「いや、なんでも無い」
 こうして、たらたらと三日。
 そう現場まで、三日もかかった。
 『そんなに遠くありません』
 出発したときの、セバスティヌさんの台詞。

 信じちゃ駄目だ。と言うか、感覚が大きく違う様だ。

 そして相手を、目視するがものすごくだらけて、やる気のなさそうな一団。
 先日の盗賊の方が、気合いが入っていたぞ。

 馬車から降りて、セバスティヌさんと二人歩いて対峙する。

「おらあぁ。じゃまだ。どけ」
 狐さんが、一匹先頭で叫ぶ。
 偉そうな態度で、立派な鎧を着ているな。

 疲れているのは、主に犬や羊。猫さん達。
 狐は、五十人に一匹くらいかな。
 ピカピカの鎧は、全部狐の様だ。

 とりあえず、真ん中の馬車にはあてず金属鎧の狐を狙う。
 雷の弱い奴が、晴天から降ってくる。青天霹靂だな。

 うまいことコントロールできた様で、狐たちが煙を立ちのぼらせながら倒れ込む。
 少し離れた所を、物資を運んでいた兵は、全員狐なので感電させた。

「さあ皆。少しお話をしよう」
 そう声を張り上げて、手を通せんぼをする形に広げる。

「此処がどこか知っているか?」
 そう言って皆を見回す。

「はい。ハウンド侯爵領でございます」
「そうだ。君達は許可無く入領してきた。それは知っているな」
「はい。でも命だけは取らないでください。言うことを聞かないと、私だけでは無く家族までひどい目に遭うのです」
 そう言って、眼前の犬族は懇願し、手を胸の前で組んで拝んでくる。

「皆もそうなのか?」
 声の届く範囲はすぐに頷き、声の聞こえない奴は遅れて、前が頷くから頷いている様だ。

 横に立って、ニコニコしているセバスティヌさんに聞く。
「労働力は要るかい?」
 聞いてみると、当然のように返答が来る。
「欲しいですな」

「じゃあ貰おう。彼らは此処で戦死した。問題は狐たち。面倒だからあの馬車の奴らと狐どもは、欲しがった銀山で、心ゆくまで働いて貰おう」
「ほうそれは良いお考えですが、デシャルム子爵は黙っていませんな?」
「どうして? 彼らは、戦争行為で不当に入って来たことを認めるかな?」
「ああ。なるほど」
 セバスティヌさんも理解したようだ。

「じゃあ狐どもを、縛ってくれ。休憩をして、数日内に君達の家族を迎えに行こう。その後落ち着いたら、仕事の斡旋をしよう」
 そう言うと、だらけていた彼らがいきなりシャキッとして、テキパキと働き始めた。
 狐たちと、馬車に乗っていた奴を引きずり下ろして、紐でくくる。
 俺たちに付いてきていた兵。数人を護送に使い。ハウンド侯爵へと、言付けを頼む。

「さあ。君達の話を聞こうか?」
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