異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり

文字の大きさ
22 / 100
第二章 人? との交流

第22話 暗躍は静かに行うから暗躍

しおりを挟む
「そうか。なかなか、デシャルム子爵の選民意識は根深いな。だが、好都合。外壁周辺に居るなら連れ出しやすい」

 寝返った兵達と、火を囲み。打ち合わせをする。

「セバスティヌさんも、それでいいかな?」
「ええ。ただ問題が一つ、関所が街道沿いにありますが、いかがいたします?」
「どうして、関所を通るんだ?」
「はっ? あっいえ。そうでございますね」

 少し考え、聞いてみる。
「関所には狐がいるのか?」
「部隊の上層部は狐ですので、関所には二人でしょうか?」
 それなら潰そうかとも思ったが、面倒が大きくなりそうだし、あまり派手にやると王家が出てくるようだ。
 この際介入させようかとも思ったが、王家が出てくるようになると、ペナルティが付くそうなので回避することにしよう。

 関所は丁度領の境を流れる川。いや逆だな川を境にしてある為、橋の両側に各家の関所がある。
 関所ではツォルと呼ばれる税金がかかる。入るときに銀貨一枚。出るときにも銀貨一枚。
 さらに、デシャルム子爵側では、荷物や荷車その他目に付くものには税金がかかる。名目としては領内での往来についての護衛料金。だが盗賊自体が、デシャルム子爵の子飼いだったりする。
 やっていた本人が、目の前に居て、泣きながら語っている。

「目的は、荷物と金品でおとなしく払えば怪我などさせません。ただ、見目の良い女は狐どもが連れて行きます」
「うーん。話を聞いて、潰しても良いような気がしてきたな」
 セバスティヌさんに話を振ってみる。

「できれば、それがようございます。領主は駄目ですが、領自体は非常に風光明媚な良い所でございます。それで、これが関の上下。地形の絵図でございます」
「この川の横にちょこちょこある印が、見張り小屋かな?」
「そうです。お互いに位置は話し合いで決まっておりますので、多分違いは無いかと。ただ、約定を守っておればでございますが」

 少し上流側へ回り込めば、渡れるところはいくらでもありそうだ。
 こういう所は、ガバガバだな。

 その頃、デシャルム子爵は苛つきながら、連絡を待っていた。
「遅い。連絡はまだか?」
「今回は、遅うございますな」
「ではやっと、手を出してくれたのか?」
「それならばそれで、連絡が来るはずですが、来ていません」
「ぬう。幾度も手間を取らせおって」
「今回は、けが人か死人が出るまで、帰ってくるなと言ってありますから、大丈夫では?」
「そうだな」

 彼らは、ハウンド領、いや本来は我らの領内を通過中、攻撃を受けた、その事実が欲しかった。
 だが、無理矢理送りだした反抗勢力達は、『攻撃を受けましたので、帰ってきました』そう言って、喜び帰ってくる。
「被害はどのくらいだ?」
「えっ? ありません」
「じゃあ、どうして帰ってきた?」
「攻撃を受けましたので。ご命令通り帰ってきました」
「それでは、意味がないではないか」

 そう、アバルス子爵家としては、他領の関を押し通ったことを、うやむやにできるほどの被害を受けたと言う事実が欲しい。
 今の状態では、関を押し通った、こちらばかりが悪い。
 むろん虚偽報告で、王家に対し裁定を依頼するのも考えたが、ハウンド領はそれなりに王家からの信任が厚い。

「ええい。あの銀山は元々我が領だったのに」
 悔しがるアバルス子爵だが、基本的に古い地図の読み間違い。
 だが、それを指摘せず、『そうです。あの銀山は我が領の物』と言いだし、いつの間にかそれが、領内上層部では本当の事だとなってしまった。

 最初は川を数え違えただけ。
 だが、自身の土地だと言いたいが為に、軍を派遣する。
 攻撃を受ければ、王家への陳情準備はできている。


 その頃、ハウンド侯爵の館で、チャチャは悩んでいた。

 村で夫から追い出され、森を彷徨い。本当に死にそうだった。
 道照に会ったとき、実はかなりのダメージを負っていたが、ふさふさな毛がその表情を隠していた。
 むろん、普段に比べ毛艶も悪く。腰がなくへにゃっとしていた。道照は気がつかなかったが、かなりきつい状態だった。
 食べ物と、水。それだけで本当に生き返り、同族なら我が身を持ってお礼をしただろう。道中、彼はとんでもない事もしでかしたが、基本的に善人であることは分かっている。彼が、獣人であったら。きっと夫として、迎え入れたはず。

 離れて、まだ数日だが、心が痛い。

 だけど、目の前のご飯も美味しい。
 そう。チャチャは、道照のおかげで、今の自分の境遇を与えて貰っていることを十分に理解している。
 道照。どうか無事に帰ってきて。
 あなたが失敗をすると、きっと私は追い出されるの。手柄を立てて、この生活を守って。

 ……結構下種だった。


 アバルス子爵の兵達を、話を聞きながら二手に分ける。
 だが、狐たちも反対派だったようで、疎まれてこの遠征に参加させられたようだ。ハウンド侯爵家で仕事をくれれば役に立つと懇願される。
 まあ素直に聞ける話でもないが。
 ある危険性を踏まえながら、セバスティヌと、話を詰めていく。

 その場で救出目標を定め、その日のうちに、アバルス子爵の領都へと侵攻をする。
 自軍の兵にも理由は告げず、地図を見て、拠点拠点に馬車と食料を配置しつつ侵攻。
 闇に紛れて、人たちを攫っていく。

 アバルス子爵に連絡が入る。
「アバルス様。今回、どうやら全滅したようです。偵察部隊が、うち捨てられた兵糧を引いていた荷車を発見いたしました」
「そうか。やったな、手順通り進めよ」
「はい」
 アバルス子爵と家宰は、これからのことを考え、悪い笑顔を浮かべる。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...