異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり

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第四章 経済共和制の国

第45話 ダンジョンは、漏れた呪い

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 応接室に戻り、説明を聞く。
「さて、ダンジョンについては、どの程度知っている?」
 シルヴィとテレザは、ふるふると首を振る。
 俺もだが。

「まあ、この町に居なければ、見ないからな」
 ため息を付き、ソファーにどっかりと、腰を下ろすヴェロニク。資料をこちらへ差し出してくる。

「見ての通り、この周辺のダンジョン分布と、新旧ダンジョン。この中で、この『原初の呪い』が、最初のダンジョンと呼ばれている。ここは、深すぎて攻略できないし、してしまうと逆に何が起こるのか不明だ」
 ずずずと、お茶をすする。
 あの口で、器用だな。みんなペロペロと、なめるのが普通なのに。

 目の前の、お茶を飲んでみる。
 うん。毒はないようだ。それに紅茶だな。薄いけど。

「それで重要なのは、その周囲。このダンジョンを定期的に攻略をしないと広がっていく」
 地図を指し示す。
 中心のダンジョンから同心円状に五個。それが三段まで来ている。

「実際、力不足で、三段目まで来ている。特にやっかいなのが、水のダンジョン、火のダンジョン、金のダンジョン。だがまあ、強ければ問題ないだろう。基本情報はこれだ」
 嫌らしく笑いながら、ぽいっと、三枚。説明らしきものがこちらに投げられる。

 水系ダンジョン。
 ずっと水場。
 泥の中、水の中、すべてにワーム系モンスター生息。
 一カ所で止まると、足の裏から食われる事あり。
 休むことができない。もういやだ、帰りたい。
 モンスター全般、火に弱い。

 火のダンジョン。
 ずっと火の川あり。非常に暑い。
 突然、壁から火の川が吹き出す事があるのと、ゴーレム化する事有り。
 もういやだ。
 モンスターは水に弱いが、水をかけると爆発する。
 危険だ。帰る。

 金のダンジョン。
 土よりは、簡単な山と谷の迷路。
 ただ、ゴーレム強し。
 堅い。本当に…… 倒せない。
 剣が折れた。大損害だ。

 全体的に、泣きが入っているな。

「読んだか?」
「ああ、まあ」
「地図で、位置はこれだ」
 三つ丸がある。

 位置は、この町を中心というか、この町が、原初の呪いと呼ばれるダンジョンを囲むように造られている。

 南に木のダンジョン、それから右回りに火、土、金、水のようだ。
 五行思想(ごぎょうしそう)だな。

「とりあえず、魔力を流して登録をしてくれ」
 そう言って、二人のカードが来た。
 鉄級のようだ。

 つつがなく登録をして、二人は嬉しそうに受け取る。

「なあ、ダンジョン内部の地図みたいなのは、ないのか?」
「当然ない。基本は迷路だ。時により気まぐれに変わるしな。簡単なときに当たるのを祈れ。それと、できてから、まだ三ヶ月ほどだ。初期状態だから十階層くらいだろう。多分な。中で良いものが出たら買い取ってやるから頑張れ、欲張ると荷物が重くて死ぬがな」
 そう言ってヴェロニクは、笑いながら出ていった。

「ふう。とりあえず二人とも。お疲れ様。強いね。びっくりしたよ」
「日々修行をしないと、何時理不尽が来るのか分からないものですから、でも実際は、反撃すると村人がひどい目に遭うので……」
 最初は、ぱあっと嬉しそうだが、どんどんと顔が暗くなる。

「そうか。辛かったな」
「でも、今は幸せです」
 そう言って二人共に、笑顔になる。
 頭をなでて、立ち上がる。

「先ずは、宿を探そうか。ここならさすがに泊めてくれる所があるだろう」
「行きましょう」

 ふと考えて、カウンターでおすすめの店を聞く。
「差別されない、宿はないか?」
「差別? あーあの。区別です」
「どっちでも一緒だが、あるのか?」
 少し殺気が漏れたのか、あわてて綴りの紙を捲り始める。

「ここなら多分」
 そう言って、見せられた場所へ向かう事にする。
 他にもと思ったが、当てにはならない。
 あー、心がすさむ。

 宿はすぐ分かった。
 少し古い感じだが、中に入ると手入れの行き届いた落ち着いた感じ。
「泊まり、三人だが大丈夫ですか?」
「はいはい。三人だね」
 おや? 定番の亜人か、という言葉が出ないな。それだけで、ストレスが減る。

「部屋は、三人部屋で良いね。食事は、……部屋でも取れるし、必要なら時間でお湯も持って行くから。どうするね?」
「じゃあ、食事は部屋へ。お湯も」
「泊まりが一人、銅貨二十五枚。食事が一人、銅貨八枚。お湯が銅貨一枚。だね。ええと三人だと」
 そう言いながら、こちらをちらっと見る。

「泊まりが、七十五で、食事が二十四枚、お湯が一なら丁度百だな」
「おや、計算ができるのかい?」
 そう言いながら、感心をしてくる。

「ええ、まあ」
「なら良いけども。騙される事も多いから気を付けなよ。銀貨あるかい?」
「あります」
「なら、銀貨三枚と銅貨十枚だよ」
 ここでも銀貨が三千円見当か。
 ばらばらと取り出すと、多分おばさんだろう。猫の獣人さんが困りだした。

「あら、王国の銀貨だね。じゃあ、銅貨十枚は要らないよ。交換をしていないんだね」
「そうか、純度と重さで」
「そうそう、王国の方が質が良いのさ。手数料を考えればギルドで交換して貰いな」
「ありがとう。明日でも交換をしてくる」
 そう言うと、うんうんと頷いてくれる。

「部屋は、2階の突き当たり。四人部屋だから、少しゆっくりできる。疲れているだろうからゆっくり休みな」
 そう言われて、色々と気を回してくれている事に気がついた。

 基本は獣人相手、最初は俺達が食堂に来るのが迷惑かと思ったが、逆で嫌な思いをさせない為か?

 そこに思い当たり、少し上機嫌で部屋に上がり始めて、ふと気がつく。
 三人部屋? えっ一部屋? えっ?
「どうしたんですか?」
 テレザが、こてんと首をかしげながら聞いてくる。

「いや、部屋が一部屋なんだが」
「「そうですよ」」
 二人の声がそろう。

「いつも、一緒に寝てるじゃないですか」
 シルヴィも、不思議そうに聞いてくる。

 そう言えば、野宿中はずっと一緒だったが、あれは…… 危険が危ないから仕方なく集まって、抱き合って…… で、でも宿ならそんなに…… 頭の中で、少しパニックを起こしながら考える。
 何を言っているんだ。ここは獣人の国。女将さんが良さそうでも気を付けないといけない。

 日本人的、危機管理不足だな。すぐに気を抜いてしまう。
 一応、食事も気を付けて、鍵もきっと、宿の人間はマスターキーを持っているはず。

 そう思い直して、階段を上がる。
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