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第四章 経済共和制の国

第54話 原初の呪いというダンジョン

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 駄目だ、面と向かって、あんたは邪神か? などとは聞けない。
 だが、邪神が復活ならば、『原初の呪い』は消えるはず。
 違う。そう、きっと違う。だが、普通の亜人ではない。
 まあいい。ここは、そっとしておこう。

「あの、『原初の呪い』には入れるのでしょうか?」
 んなぁ。やはり、仮で動いているだけで、本体を解放しにでも来たのか?

「入れるが、何をしに行くのだ?」
「単なる興味。入れなければ諦めるつもりでしたし」
「ああっ? そうか。普通に入れる。此処の主産業は『原初の呪い』で取れるアイテムだしな」
 彼が邪神? そんなわけは無い。それならこの町など破壊すれば良い。きっとこいつになら簡単なことだろう。そうだ、そうに違いない。

「それで」
「なっ何だ、まだあるのか?」
 目の前に、割り符が出てくる。

「まだですよね。鑑定」
 なんだ? と、一瞬思ったが思い出した。

「あっいや、最優先で処理をした。ちょっと待て」
「あっ、それと、この二人の級も上げてくれないと」
「そうだな。問題ない」

 少しして、ヴェロニクが袋を持ってくる。
「預かった金が、約十キログラムあった。買い取りは、七割だ。そこからギルド手数料を二割頂く。百八十六枚だ。この国の金貨は、一枚三十グラム位だからな」
 随分引かれるな、そう思いながらも、預かり証と割り符を返す。

 ついでに、二人のカードを交換して、魔力を流す。

「また何か良いものがあれば頼むぞ。ハンターは定期的に仕事をしないと、ランクが下がるからな」
「分かりました」
 中身だけを収納し、袋を返す。

「なんだ、今のは?」
「魔法です。詳細は言えません。それでは失礼します」
 精霊が驚くような物、言えるわけがない。

 そう言って、ギルドを後にする。
 ヴェロニクは席を立ち、隣の部屋へ移動する。

 まだ足は震え、放置して本当によかったのかと考える。だが下手に手を出して町がそのせいで消えればどうなる?
 そんなことを考えながら、ドアを開けると、中で大口を開けて、爆睡していたミレーヌが驚いて起きる。
「ふがぁ。おっ。終わったのか?」
「ああ。とりあえず奴らは放置しよう。お前もちょっかいは掛けるなよ」
「分かった。皆に言っておくか?」
「いやそれはするな。口外禁止。分かったな」
 パチッと、金貨二枚が置かれる。

 一枚は、口止め料だろうと理解して、しまい込む。
「それじゃあ」
 そう言って、ミレーヌは出ていく。


 その頃、道照達は一度宿へ寄り、今晩の宿泊と食事を朝晩で頼んだ。

 そして、ふらっと『原初の呪い』と呼ばれる、ダンジョンへやって来た。
 周囲に壁が張り巡らされ、東西南北に門がある。

 その中へ入ると、目の前はまた壁。四十五度角度がずれ、門が設置されていた。北西の門から中へ入る。そこにはゲートがあり、入るときに日時と時間を書くようになっている。
 と、言っても、時間は、朝昼夜というのが時間らしい。
 日にちなどもっとよくわからん、今まで気にしてもいなかったからなあ。だが目で見えている、今日の日にちと書いてあるところには穂月と書いてある。
 秋かな? 農事暦(のうじれき)とか栽培暦みたいなものか?

 まあ丸写しをして、提出。
 素直に受け取ったから良いのだろう。
 チトセでは、収穫が早く欲しくて、妖精達の力でごり押しをしたしなあ。
 ぼちぼちで覚えよう。

「行きましょ。主様」
 二人は、外では基本、俺のことを主様か道照と呼んでいる。
 道照と呼ぶのは、主に甘えたい時。多分ね。

 二人に手を引かれ、最後の門をくぐる。
 氾濫を恐れているのか? 壁が三重に設置されている。
 門は、真っ直ぐ抜けられないように、それぞれ角度がつけられている。

 中へ入ると、直径百メートルはありそうな垂直の穴が開いていた。
 まるで、地下水による浸食などでできる陥没穴のようだ。
 覗き込むが、底が見えない。
 つい飛び込みたくなる。なんとなく、大丈夫そうな気がするんだよな。
 今のところ最奥までの、到達者はいないらしいし。

 それでダンジョンは、この壁面にできている横穴。
 道中聞き耳をした結果、それが複雑に絡み合い、下へ下へと降りられるようだ。

 穴の周囲には、出店が有り、地図やら、刃物研ぎ、防具修理、荷物運びとして、亜人が売られたり貸し出されたり。
 当然、亜人がそんな状態でも、いきなり店を襲うようなことはしないさ。

 見た感じ、ここへハンターとして来た後、芽が出なくて身売りかな。

 す通りをして、通路へ向かう。
 だが、面倒事は、そう、俺の周りで起こる。
「テレザ!!」
 その声に、テレザが反応する。
 振り返り、相手を見る。
 相手は売られていて、現在進行形で結構悲惨そうなのに。
「あっおひさ。タキドゥ兄ちゃん。生きていたんだ、元気?」

 テレザのその軽い反応を見て、俺は悩む。
 助けた方が良いのか? それとも、無視した方が良いのか?
「どういう知り合いだ?」
「んー? 近所にいた。幼馴染みのお兄ちゃん」
 何だ、その最強ワード? 『幼馴染みのお兄ちゃん』だと。

「その、テレザ。付き合ったりしていたのか?」
 そう聞くと、きょとんとする。
「あのね。タキドゥ兄ちゃんて、村で結構嫌われていて、三年前に姿を消しちゃったの。修行もサボるし、その割に、俺は強いって勘違いする人で。後、女の子の体を、嫌がっても触るし」
 うん、見事に嫌そうな顔をして、説明してくれた。眉間のしわが残りそうだから、なでてあげる。
「あー、じゃあ仕方ない。見なかったことにしよう」
 そう言って、テレザと手つなぎ、通路側へ向き直る。

「おおい。テレザ、テレザ、テレザぁー」
 遠吠えが聞こえる。

「やかましい。叫ぶな!!」
 叱られたようだ。
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