趣味で冒険者のトレーナーをしている俺はワケアリ女冒険者からは「私を揉んで!」とよく言われる

はんぺん千代丸

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第17話 草をむしりに行こう!

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 出発日の朝、待ち合わせ場所のロガート城壁西門へと向かう。
 途中、プロミナからこんな問いかけがあった。

「先生ってさー、何で『草むしり』って呼ばれてるの?」

 そういえば、その辺については何も説明してなかったな。

「薬草採取メインで活動してるからだよ。一番儲かるし」
「え~? ただの薬草採取でしょ? どこのギルドにもある、低報酬のやつ」

 ま、それはそう。
 街の観光案内と薬草採取は、低ランク冒険者でも受けられる常設クエストだ。
 俺が受けてるのもそれであることには違いない。

「ただね、質のいい薬草を持ち込むと、薬草一本単位で追加報酬がもらえたんだ」
「そうなんだ。他のギルドじゃ聞いたことがない話ね」
「ああ、よそはそうなのね。そこまでは知らなかったわ、俺」

 俺は山を降りて以降、ずっとロガートを拠点にしてたからなぁ。

「別個で買い取りってことは、何か理由があったのかな? いい薬草が必要な理由」
「そうかもしれんね。ルクリアさんに確認してみるのもいいかもな」

 他にも、彼女には聞いておかなきゃいけないこともあるし。

「でもさぁ、何で薬草採取なの? 先生、『真武』なのに戦わないの?」
「俺はもうそっちからは足を洗ったからな。教えはするけど、俺自身はやらないよ」
「え~」

 プロミナが不満そうに唇を尖らせる。

「私、いつかコージン先生と戦ってみたいのに~」
「挑んでくるのは構わないけど、最低でも『厄除けの加護』を越えてからの話だな」

「ああ、コージン先生にはどんな攻撃も当たらないっていう、アレ……」
「そうそう、そのアレ」

「今まで何度も思ってきたことだけど、コージン先生って本当に何なの?」
「ちょっと神様かじっただけの、趣味で冒険者のトレーナーをしてる者だよ」

 ニッと笑ってやると、プロミナは「ワケわかんない」と呟き俺を追い越していく。
 ま、俺も今日まで色々とあったからねぇ。
 いつかの機会にそれを語ることもあるのかもしれないが、でも今じゃないな。

 道の先に、開門して間もない城壁西門が見えてくる。
 目的地のリフィル湖までは徒歩五日。時間制限もないし、のんびりと――、

「あら、コージン君、プロミナちゃん、おっはよ~う!」

 門の外で手を振ってる、見覚えのあるギルド長の人。
 そしてその隣でデデンとばかりに存在を主張している、見覚えのないデカイ馬車。
 四頭立てで、車体も大きく、見るからにしっかりとした造りで頑丈そう。

「……何ぞこれ」
「うわ~、二十人乗りの乗合馬車よりおっきいよ、これ」

 見上げるほどにデケェ馬車を前に、バカっぽく口を空けてしまう俺とプロミナ。
 周りを見れば、俺達以外にも物珍し気に馬車を見る人々が結構いる。

「これはね~、お姉さんが権力と財力と時間をかけて作らせた錬金技術の結晶、御者を必要としない馬車を超えた馬車、ゴ車でぇ~っす! ばば~ん!」

 何故か効果音をつけるルクリア。
 その勢いの乗せられてか、周りに集まっていた人々の何割かが拍手する。

「フレンドリーファイア?」
「それは誤射よね~。コージン君ってば、お茶目さんなんだから~」

 イントネーションは違うけど文字的には合ってるし。

「あ!」

 と、ここで馬を撫でようとしていたプロミナがすっとんきょうな声をあげる。

「先生、この馬、本物じゃないよ! ゴーレム、四頭全部ゴーレムだよ!」
「何ィ! うぉ、マジだ! すっげー!」

 見た目、どう見ても普通の馬なのに、触ってみるとカッチカチだ。材質何これ?

「お姉さんお抱えの錬金者集団に五年かけて作らせた、新次元の乗り物で~す」
「ルクリアさん、俺はそのセリフのどこにツッコめばいいのかな?」

 いきなり明らかになった割に眩暈するほど情報量多いのやめろ。

「さささ、二人とも乗って乗って! これでリフィル湖までGO!」
「これはちょっと楽しみかも」

 ニコニコしているルクリアに、期待に瞳を輝かせるプロミナ。
 新しいものってのは往々にして予期せぬ欠点を抱えてるモンなんだけどなぁ……。
 という不安に眉をひそめる役割を割り振られたのが、俺だった。


  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 ――結論から言おう。

「快適すぎる……」

 ゴ車が本気で新次元の乗り物すぎて、メチャクチャ戸惑ってます。今。

「すごーい! 何これ、すごーい! はやーい!」
「でっしょ~! だよね~! ふふ~ん、あたしのスゴさ、わかってもらえた?」

 窓から外を眺めてはしゃぐプロミナと、ドヤ顔で高らかに笑うルクリア。
 何こいつと思わんでもないが、でもこれの所有者ってだけで確かに自慢できるわ。

 何せ、速い上に揺れが少ない。
 普通の馬車よりこっちの方が全然マシ。

「走ってる間は龍脈から魔力供給を受けて、車輪から車体を浮かしてるんだって」
「浮いてりゃ揺れないのは道理だが、どんだけ金かけたんすか、これ……」
「五年前のあたしの全財産、ほぼ全額?」

 元SSランクが冒険者生活で稼いだ財産全額かー。……金額は想像もできない。

「あんた、とんでもねぇ博打やらかしてたんだなぁ」
「退くべきときに退き、突っ込むべきときに突っ込む。それが博打のコツなのよ~」

 再び得意顔になるルクリアだが、ここで一点、俺は抗議をしたい。
 このゴ車、確かに速い、揺れない、そして中も広い。とても素晴らしい乗り物だ。

 なのに、何で三人一か所に固まってんの?
 どうしてプロミナとルクリアが俺を挟んで座ってるの? ぶっちゃけ窮屈だが?

「ねぇ、二人ともさ、もうちょっと俺から間隔空けて座りません?」
「やだ」
「却下」

 何でだよォ――――!!?

「…………」
「…………」

 そして二人とも無言のまま、ますます俺に身を寄せてくる。だから狭いんだって!

「あの、狭い……」
「私は別に」
「あたしも別に」

 俺が! 狭いって! 言ってんのォォォォォォッ!

「あー、あのさルクリアさん、今回の依頼だけど……」

 ダメだこれは、言うだけ無駄だ。
 悟った俺は、早々に話題を切り替えることにした。今のうちに諸々、済ませよう。

「うんうん、何かなコージン君」
「『翠月花』は俺じゃなく、プロミナに探させる」
「え? 先生?」

 再び景色を眺めようとしていたプロミナが、驚いてこっちを向く。
 ルクリアは、黙ったまま俺の話を聞く態勢だ。

「気功の修行に丁度いいんで、依頼を利用させてもらうよ」
「コージン君が言ってた、血気、だっけ? それを使った魔法と対になる技術か」

「そう。今回は『呼導こどう』と『備衣そなえ』に続く第三の技法の修行をする」
「……第三の、技法? どんなの?」

 プロミナが興味津々の様子で尋ね返してくる。俺は答えた。

「『究観きわみ』。血気を用いて感覚を増幅して、見えないものを見る技だ」
「まさかそれで『蒼月花』の群れの中にある『翠月花』を見つけろってこと?」

 そういうこと。

「俺はいつもそうやっていい薬草を採ってるんだぜ」
「コージン君の持ってくる薬草は、本当に質がいいからなー。毎度助かってるよ」

 ――助かってるよ。ね。

 それについても聞かにゃならんのだろうが、まぁ、そっちは追々、かな。
 軽く外を眺めてみたが、どうやらそろそろ着くみたいだし。

「あ、湖が見えてきたよ!」

 気づいたプロミナが窓を開け、ガバッと顔を出す。
 彼女が指さすその先で、澄んだ湖面が陽の光を受けてキラキラと輝いていた。
 こうしてゴ車はたった半日でリフィル湖に到着し――、

「あれ、止まんない」
「え」
「え」

 そのまま、通り過ぎてしまった。
 って、おおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉいッッ!!?
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