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第1部-ファフニール王国・自由編-
010_町にて
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毎日のようにレオファルドに呼ばれていたリリアだったが、その日はレオファルドの公務の都合で屋敷にいた。
アンが買い物に行こうと誘いに来たのを、もうこれ以上の服は必要ないと断るが、王に会うのだからと聞き入れてもらえずに、もう何度も通った店を訪れていた。
馴染みになった店員にドレスを選んでもらい、世間話に花を咲かせることにも慣れて、少しずつ自分でドレスを選ぶこともできるようになってきた。試着中、用があるとアンが店を出ていくのを確認したリリアはレオファルドについて尋ねてみる。もちろん、リリアがしょっちゅう会っているのは秘密のまま。
「ねえ、レオファルド陛下はどのようなお方?」
「気になりますか? 陛下のことでしたらオズウェル様のほうがお詳しいのでは? ……お聞きにならないのですか?」
「世間からはどのようにみられているか知りたいの。ほら、私は部屋にこもってばかりで物事に疎いから」
「そんなことはないかとおもいますが。――そうですね、政治の腕は確かだそうですけれど、強引だとか。それにとても冷酷な方だと耳にします」
「そう、なの。ではあまり好かれてはいないの?」
「とんでもない。民は政に優れている王を望むもの。今の方は、申し分ないかと。あ、今のはオズウェル様には内緒にしてくださいね」
「もちろん」
「ありがとう。これ、屋敷に届けていただいても?」
「承知いたしました。お買い上げありがとうございます」
聞きたいことが聞けたリリアはお礼代わりにとドレスを購入し、何食わぬ顔で外で待つアンと合流する。用事は買い物だったのか、手にいくつかの小袋を下げていた。
「お嬢様、クロウ様も町まで来ているようです。時間を潰して待ちましょう」
「うん」
町を歩き、気に入っている店を覗きながらのんびりと馬車へと向かった。二人っきりでいる時間が長いせいか、アンの雰囲気も随分と柔らかくなっている。
「それにしても、随分とお体も丈夫になられましたね」
「みんなのおかげ。もう眩暈もほとんどなくなったし、体力もこの通り」
元気さを示すように、ほんの少し飛び跳ねて見せる。嬉しそうなリリアに、アンも安心したように頷いてその様子を見守った。
「リリア! こんなところにいたなんて!」
人ごみから突然出てきてリリアの腕をつかんだ男に、アンは警戒態勢。
「お嬢様、お知り合いですか?」
「――バルト様、どうしてここに」
おそるおそる手の主の顔を見上げたリリアは、思いもよらぬ人物の登場に動揺する。恰幅の良い商人風の男、バルトは、婚約者の発見に驚き喜んでいた。
「誘拐されたと聞いてずっと探してたんだ! さ、帰ろう」
「違います……私は」
「君がリリアの監視かい? 彼女は僕がもらっていくよ」
「なりません。お嬢様をお放しください」
腕を掴んだまま引っ張ろうとするバルトに、リリアも必死に抗う。アンもじりじりと近づきながら懐に入れていたナイフを抜いたものの、暴れるリリアに危険を感じて手を出せないでいた。
「バルト様、私は自分の意志でここにいるのです! 放してください!」
「ダメだ。僕と一緒に帰るんだ」
「やめてくださいっ。助けて誰か!」
リリアも助けを求めてアンに手を伸ばすが、その手も引き戻されて阻まれる。
そこへ、突如伸びてきた剣先が、まっすぐバルトの首筋に添えられた。
「何をしている」
剣の持ち主はクロウで、姿を見たリリアは安堵した表情を見せる。
「なんだ君は……僕を誰だと思ってるんだ!」
「その態度、よっぽど死にたいとみえる」
「やめろ! 危ないじゃないか!!」
「危ないも何も、殺そうとしたんだが」
クロウの、すっと剣を引く仕草に慌ててバルトが手を放すと、リリアはアンに守るように抱きしめられる。バルトはといえば首筋にうっすらと赤い筋が浮き上がっていた。
「二度とこの方の前に現れないでもらおう」
「リリアは僕の物なんだ!」
「早く去れ。死にたくなければな」
クロウが剣先をずらすと、バルトは走り去っていった。その後ろ姿を睨みつけながら、ようやく剣を収めた。
「怪我はありませんか?」
「うん。二人ともありがとう」
「間に合ったようで何よりです。あの男は何者ですか?」
「あの方は……バルト伯爵です。どうしてか私を好いてくださっているようで」
てっきり屋敷から逃げ出して婚約は破棄されたものかと思っていたリリアは、バルトが婚約者であることを伏せた。
なぜか初めて会った時からリリアを手に入れようと躍起になっていたバルトは、婚約が住むと今度は婚礼を急かしていたが、何を考えているのかそれについてはスウィフト公爵が頑として認めなかったのだ。
一介の令嬢を好いているにしては度が過ぎているバルトの態度に、クロウは不審そうにリリアを見る。
「あの執着はいささかいきすぎているような……」
「どうかオズウェルには内緒に」
「なぜです。たまたま絡まれたというわけではないのでしょう」
「心配させてもいけないから。商人ですし、早々会うこともないかと」
リリアはバルトとの出来事を隠してほしいと願い、実際に屋敷に戻ったリリアは、オズウェルに何事もなく一日を終えたと報告し、自室へと戻った。
特に不審がられることはなかったが、部屋で本を読むリリアに、アンは不安そうに口を挟む。
「オズウェル様にお話はされなくてよろしいのですか?」
「もう、心配はさせたくないから」
アンが買い物に行こうと誘いに来たのを、もうこれ以上の服は必要ないと断るが、王に会うのだからと聞き入れてもらえずに、もう何度も通った店を訪れていた。
馴染みになった店員にドレスを選んでもらい、世間話に花を咲かせることにも慣れて、少しずつ自分でドレスを選ぶこともできるようになってきた。試着中、用があるとアンが店を出ていくのを確認したリリアはレオファルドについて尋ねてみる。もちろん、リリアがしょっちゅう会っているのは秘密のまま。
「ねえ、レオファルド陛下はどのようなお方?」
「気になりますか? 陛下のことでしたらオズウェル様のほうがお詳しいのでは? ……お聞きにならないのですか?」
「世間からはどのようにみられているか知りたいの。ほら、私は部屋にこもってばかりで物事に疎いから」
「そんなことはないかとおもいますが。――そうですね、政治の腕は確かだそうですけれど、強引だとか。それにとても冷酷な方だと耳にします」
「そう、なの。ではあまり好かれてはいないの?」
「とんでもない。民は政に優れている王を望むもの。今の方は、申し分ないかと。あ、今のはオズウェル様には内緒にしてくださいね」
「もちろん」
「ありがとう。これ、屋敷に届けていただいても?」
「承知いたしました。お買い上げありがとうございます」
聞きたいことが聞けたリリアはお礼代わりにとドレスを購入し、何食わぬ顔で外で待つアンと合流する。用事は買い物だったのか、手にいくつかの小袋を下げていた。
「お嬢様、クロウ様も町まで来ているようです。時間を潰して待ちましょう」
「うん」
町を歩き、気に入っている店を覗きながらのんびりと馬車へと向かった。二人っきりでいる時間が長いせいか、アンの雰囲気も随分と柔らかくなっている。
「それにしても、随分とお体も丈夫になられましたね」
「みんなのおかげ。もう眩暈もほとんどなくなったし、体力もこの通り」
元気さを示すように、ほんの少し飛び跳ねて見せる。嬉しそうなリリアに、アンも安心したように頷いてその様子を見守った。
「リリア! こんなところにいたなんて!」
人ごみから突然出てきてリリアの腕をつかんだ男に、アンは警戒態勢。
「お嬢様、お知り合いですか?」
「――バルト様、どうしてここに」
おそるおそる手の主の顔を見上げたリリアは、思いもよらぬ人物の登場に動揺する。恰幅の良い商人風の男、バルトは、婚約者の発見に驚き喜んでいた。
「誘拐されたと聞いてずっと探してたんだ! さ、帰ろう」
「違います……私は」
「君がリリアの監視かい? 彼女は僕がもらっていくよ」
「なりません。お嬢様をお放しください」
腕を掴んだまま引っ張ろうとするバルトに、リリアも必死に抗う。アンもじりじりと近づきながら懐に入れていたナイフを抜いたものの、暴れるリリアに危険を感じて手を出せないでいた。
「バルト様、私は自分の意志でここにいるのです! 放してください!」
「ダメだ。僕と一緒に帰るんだ」
「やめてくださいっ。助けて誰か!」
リリアも助けを求めてアンに手を伸ばすが、その手も引き戻されて阻まれる。
そこへ、突如伸びてきた剣先が、まっすぐバルトの首筋に添えられた。
「何をしている」
剣の持ち主はクロウで、姿を見たリリアは安堵した表情を見せる。
「なんだ君は……僕を誰だと思ってるんだ!」
「その態度、よっぽど死にたいとみえる」
「やめろ! 危ないじゃないか!!」
「危ないも何も、殺そうとしたんだが」
クロウの、すっと剣を引く仕草に慌ててバルトが手を放すと、リリアはアンに守るように抱きしめられる。バルトはといえば首筋にうっすらと赤い筋が浮き上がっていた。
「二度とこの方の前に現れないでもらおう」
「リリアは僕の物なんだ!」
「早く去れ。死にたくなければな」
クロウが剣先をずらすと、バルトは走り去っていった。その後ろ姿を睨みつけながら、ようやく剣を収めた。
「怪我はありませんか?」
「うん。二人ともありがとう」
「間に合ったようで何よりです。あの男は何者ですか?」
「あの方は……バルト伯爵です。どうしてか私を好いてくださっているようで」
てっきり屋敷から逃げ出して婚約は破棄されたものかと思っていたリリアは、バルトが婚約者であることを伏せた。
なぜか初めて会った時からリリアを手に入れようと躍起になっていたバルトは、婚約が住むと今度は婚礼を急かしていたが、何を考えているのかそれについてはスウィフト公爵が頑として認めなかったのだ。
一介の令嬢を好いているにしては度が過ぎているバルトの態度に、クロウは不審そうにリリアを見る。
「あの執着はいささかいきすぎているような……」
「どうかオズウェルには内緒に」
「なぜです。たまたま絡まれたというわけではないのでしょう」
「心配させてもいけないから。商人ですし、早々会うこともないかと」
リリアはバルトとの出来事を隠してほしいと願い、実際に屋敷に戻ったリリアは、オズウェルに何事もなく一日を終えたと報告し、自室へと戻った。
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