生きるために逃げだした。幸せになりたい。

白水緑

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第2部-ファフニール王国・成長編-

031_新しい生活

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 それからすぐにリリアの願いは聞き届けられ、用意されたのはかつて幼少期をリリアが過ごしていた屋敷だった。住んでいた時とは違い、庭が多少手狭になり、代わりに小さな小屋が建てられ園芸に適した土が敷き詰められた囲いが増えている。
 
「お気に召しましたか?」
「うん! こんなに広い場所、好きに使っていいの?」
「もちろんです。リリア嬢の身の回りのことはアンが一人でお世話できるとのことですから、この屋敷のことはルイが取り仕切るように命じてあります。リリア嬢は好きなときにこちらへきて時間を過ごされると良いでしょう」
「ありがとう!」
 
 何種類かの種をもらい受けたリリアは、図鑑を頼りに育て始めた。サンドラの授業の合間を縫って毎日毎日屋敷へと通い、時にはレオファルドやオズウェルも訪れては作業を手伝うこともあった。
 数か月も経てばその姿も馴染みある物になり、いつしかオズウェルの屋敷ではなく、この屋敷で時間を過ごすようになった。
 レオファルドの姿を見るたびに愛の言葉を思い出し、どこか態度がぎこちなくなっていたリリアだが、何もなかったかのようにふるまうレオファルドにそんなリリアの緊張も和らぐ。この屋敷で過ごすうちに次第にそんなことがあった記憶も薄らいでいった。
 
「リリア、今度は何を育ててるんだ?」
「内緒! それよりレオはこっちの雑草をとってくれる? オズウェルは土を耕すのを手伝って」
「俺に隠し事とはいい度胸だな?」
「うまくいったら教えるね!」
「珍しい。リリア嬢が隠し事ですか?」
「うん!」
 
 リリアはいろいろな専門書を集めては読み漁った。最初はレオファルドのほうが豊富だった知識もあっという間に追い抜き、次第に情報があまりない、他国の生態にも関心を持つようになった。
  
「ところでこれはなんだ?」
「聞き方変えてもだめったらだめ。教えないよ? でも、次の目標は前にレオが言っていたラーズを育ててみることかな」
「それは薬草ですね。それもまだ栽培方法が確立されていないもののはず」
「うん! だからやってみようとおもって」
「気長に頑張れよ」
 
 気候が合わないのか一般的な育て方では栽培ができないラーズ。薬としての効果は高いものの、非常に入手が困難な薬草だった。レオファルドの期待されているのかどうかもわからない声援に無邪気にリリアは頷き、植えては育て、挫折し、それを幾度も繰り返す。何通りもの育て方を試し、だめになったものから少しずつ減っていった。それでも毎日を一喜一憂しながら、楽しそうに土にまみれていた。
 少しずつ緑が増え、庭園も様変わりしていく。
 
「お嬢様、そろそろお戻りにならなくては」
「もうそんな時間? 心配させちゃうね」
「そうですよ。さ、後片付けはわたしがしておきますのでリリア様はお帰りください」
「ううん、それはだめ。ちゃんと片付けてからね」
 
 ふと悩みが脳裏をよぎることもあったが、充実した日常にリリアはとても満足していた。
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