生きるために逃げだした。幸せになりたい。

白水緑

文字の大きさ
32 / 40
第2部-ファフニール王国・成長編-

032_価値観

しおりを挟む
アンドロメダから誘われたリリアは、カミーユと共に町へ買い物へと出ていた。
 今日訪れたのはアンドロメダの実家、ブラウン家が管理する町だった。華やかなアンドロメダにお似合いの、色鮮やかな町がそこにはあり、思い思いに着飾っている者たちが多い。そんな町を自慢げに案内するアンドロメダは、行きつけの宝飾屋へとリリアとカミーユを案内した。いつもとは違う町の違う店を訪れ、リリアは楽しそうに辺りを見回す。
 
「リリア様はオズウェル様にあんなに大切にされていらっしゃるのに、余所の町のことはご存じありませんのね」
「あまりお出かけする機会はなくて。ですので、アンドロメダ様にこうしてお連れいただいてとても嬉しいです」
「わたくしもリリア様に我が領土を知っていただけてなによりだわ。リリア様は我が町にふさわしいお方。ぜひお楽しみを」
 
 手に取った大粒の指輪を試していたアンドロメダはリリアに優しい笑みを向けた後、ちらりとカミーユのほうを視線を向ける。
 
「……ああでも、カミーユ様には難しいかもしれないわね。だって、そこまでの財力がおありではないでしょうから」
「ご心配には及びませんわ。わたくしは本当に必要なものを大切にしているだけ。有り余るほど持っていても、体は一つしかありませんもの」
「時と場合によって使い分けるのも貴族の嗜みですわよ」
「あの……アンドロメダ様、それはちょっと」
「お優しいのねリリア様。でも、身分の違いはきちんと理解しておかなくてはならないのよ」
 
 控えめながらはっきりと言い返していたカミーユも、リリアに庇われて困ったように言い添えた。
 
「リリア様、わたくしのことはお気になさらず。気にはしておりませんから」
「でも」
「そろそろ休憩にしましょう。とっておきの店へお連れいたしますわ」
 
 半ば強引に案内されたのは高級菓子を扱う店で、明るい香りに表情を暗くしていたリリアも少し頬を綻ばせた。
 
「お気に召したようでなによりだわ。今日はご馳走様するから、ぜひまた遊びにきてね」
「そんな、ご馳走になるなんて」
「気にしないで。ねぇ、カミーユ様?」
「そうですよリリア様。こういうときはお言葉に甘えましょう」 

2人の押しに勝てるはずもなく、リリアは大人しく好意を受け取ることにした。
そして話題は噂話へと。

「お聞きになった?レオファルド殿下の妃選びが行われるって」
「まぁ。候補はどなたですか?」
「それが、パーティーに参加する全員だとか」
「でしたらみんなに可能性があるのですね。とても楽しみです」
「あらご自分が選ばれるとでも?」
「アンドロメダ様こそ自信がおありのようですけど」

どうやら2人とも、正妃の座を狙っているらしい。
2人はレオファルドの好みではなさそう……と、思うと同時に、忘れようとしていた記憶が蘇る。
『俺はお前を妻にしたい』
その声、表情は深く心に刻まれていた。思い出し頬が赤くなるが、それも一瞬のこと。
 
「リリア様はどなたが選ばれると思う?」
 
 振られた話題に、リリアは平静を装って首を振って見せた。
 
「……どなたでしょうか。私にはさっぱり見当も」
「オズウェル様から何か聞いたりは?」
「そういう話はしないものですから」
「そう」

ほんのり不満そうなアンドロメダに、まさか自分を選ぶとは言えずリリアは苦笑い。
 
「殿下のことがお好きなのですか?」
「もちろん! 冷酷だと巷では噂されていますけれど、あの整った顔立ちに鋭い視線。それだけでほかのマイナス点なんて許容できまるわ」
「誰もが夢見るお相手ですもの。きっとリリア様はまだレオファルド殿下の魅力に気づいていらっしゃらないのです」
「そう、でしょうか」

 本当のことを言えないリリアは、曖昧な笑みを浮かべ頷くだけだった。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!

音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ 生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界 ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生 一緒に死んだマヤは王女アイルに転生 「また一緒だねミキちゃん♡」 ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差 アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~

玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。 その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは? ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

処理中です...