夢ノコリ

hachijam

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旅行の前の日の夢

10.

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「あれ、もっと驚くと思ったんだけど、インパクト弱かった?」

そう充が言った事で、ようやく言葉の意味が理解できた気がした。期待していた反応が無くて、どことなくガッカリとした空気を漂わせていた。

「最初に言えよ」

「そうそう」

食事の手をちゃんと止めて、改まったように三ヶ嶋君が言い、僕も同調した。そもそも、そういうことを聞きたかったというのが今日のテーマだったはずだ。最初の話でテーマが変わったんだとばかり思っていたけど、そうでは無かったようだ。急に僕と三ヶ嶋君の緊張感が高まってきた。ここはしっかりと追及しなければいけない。

僕と三ヶ嶋君の顔つきが変わったからか、充の方が意表を突かれたような表情をしていた。何かを言いたそうだけど、口に出せないみたいな感じだった。

「むしろ、その話を期待してた」

「うんうん」

僕の言い分に三ヶ嶋君が頷く。

「なんだよそれ」

充がちょっとふてくされているように言った。何か変な雰囲気になりそうな感じがした。ここで不機嫌になられても困るし、そもそも、そういう雰囲気でする話でもないと思い、雰囲気を変えるため、僕は自分が見た光景を充に言い、その事について話を聞きたかったという説明をする。

だったら早く聞いてくれればよかったのにと言う問いに、最もだと思いつつ、何かタイミングがとか、課題がとか、訳の分からない言い訳をする僕。それに対して、不機嫌さを残したままの充。質問を許さない雰囲気を充が出していた気もするけどとちょっとだけ言いたくなったけど、それは売り言葉に買い言葉となって、訳の分からないつまらない喧嘩になりそうな気がしたのでやめた。

いずれにしろ、聞きたいのはどうしてそういう事になっているのかというところで、そのためには充が話したいと思わせる事が大事だと思った。しょせん、野次馬根性でしかないんだけど、何となく知っておく責任があるのではと考えると、そういう我慢も必要だと自分に納得させる事も出来た。

「実はさ…」

そう言いながら充は話し始めた。結局、話がっているのは充の方なんだなと思いながら、それを指摘するとややこしくなるので話を促す。話し始めると止まらなくなるのは充らしい。

僕と三ヶ嶋君は余計な事は言わないようにして、充の話をとりあえず最後まで聞くことにした。

偉そうにあれこれと理屈をつけている僕だったけど、やっぱり、それはただの野次馬根性なんだろうなと後になって少し落ち着いたら、そんな風に思った。
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