夢ノコリ

大きなカラスの夢

４．

そう言えば、三戸さんは社長と一緒に配送しているんだっけ。その姿を想像するとちょっと面白いと思ってしまった。さすがに社長と一緒だと、三戸さんも緊張するんだろうか。いや、あの社長だったら、それほど緊張しないのではと思ったりもする。僕も普段、社長と話すのにそれほど緊張はしない。

まるっきり気を使わないという事はないけど、必要以上に気を使う事はない。下山さんとか見ても、言葉遣いはちゃんとしていると思うけど、それだけだ。社長の方もそういうのはあまり気にしないタイプなんだと思う。だったら、変わらないのかなと思ったりする。社長が三戸さんに指示されて動く姿を想像する。どことなく、コミカルなやり取りが繰り広げられている気がして、笑ってしまったけど、それはちょっと失礼かもしれないと思って、また、可笑しくなってしまった。

そんな事をダラダラと考えるぐらい、倉庫での仕事は退屈だった。やろうと思っていたことは、大体出来て、後は実際に試しながら、具合を確かめないと分からない。そう思った。何日か、忙しいバイトだった事もあり、こういう時間にこれまで何をしていたのか、ふと分からなくなった。単純に休憩していたんだなと思う。大概は下山さんがいたので、その相手をしながら、時間をつぶしていたのかなと思う。

下山さんはどうしているんだろうか。一週間休みと言っていたから、そろそろ戻ってくるはずだ。正確な日付は把握していなかったので、良く分からないけど、明日か、明後日には出てくるのかなと思う。三戸さんとやりあったという話も思い出し、それがどうなるのか気になる。三戸さんと一緒に仕事をするという役割を僕は果たせたのだろうか。それなりにはやったと思うけど、結局、ダウンしてしまい、社長に任せてしまっている。

それだったら、社長が責任を持って対応してくれるだろうと思う。責任逃れのような気もするけど、最終的にと考えれば、社長か、あるいは三戸さん本人が決める事だろうとも思う。結果的に、そうなった事に、どこかホッとしている自分もいて、それは何だか嫌だなと思ったりした。

そうだ。昨日、休んだことを三戸さんに謝っていない事に気が付いた。社長に今日は倉庫の仕事と言われて、そのまま来てしまったので、忘れてしまった。あの時は、三戸さんはいなかったなと思う。いたら、さすがに気が付いていただろう。何となくその前の日の事があって、昨日休んだから、気まずいような気もしたけど、迷惑かけたのは事実だなと思った。