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嘘をつく夢
7.
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「あの、そこまで一生懸命にならなくてもいいんじゃない」
と、少しへりくだったように控えめに言ってみた。赤岡さんが僕の方をキッとにらんだ気がしてびくりとする。怒らせてしまったか、いやいやいや、怒りたいのはこっちだよ、泣きたいよ、と思うけど、臆病な僕は何も言えない。その姿を見て、可愛そうと思ったのか、少し冷静になったのか、
「ごめんなさい」
と言われてしまう。何か感情的になっているのかなとか、泣きそうになっているのかなとか思う。
「…こんなんじゃ、また、嫌われちゃうね」
と、呟く。
「えっ?」
またとか、嫌われるとか、何を言っているんだろう。聞き間違いかもしれない。
「…ううん。何でも無い」
でも、ちょっと涙目になっているのは間違いなかった。あたふたとしてしまう。
「あっ、うん。そうだね。せっかくだから、出来る事はやろうか」
思っても見ていない事を言ってしまう。
「でも、大丈夫。無理していない?」
遠慮がちに聞かれる。
「あっ、うん。出来る範囲でだけど、もう少しは頑張ってみても良いかなって、思った。うん、そうだ」
自分でも無理に言ってるなと思うし、それは赤岡さんも分かっていると思う。でも、この状況で他にどういう事を言えばいいんだ。僕には全然わからなかった。
「まあ、充に負けるのは何となく癪だしね」
そう冗談っぽく伝える。それで、赤岡さんは笑ってくれた。ホッとする。さっき、言われた言葉、またとか、嫌われるが気になってしまったけど、それを尋ねる勇気は無かった。少なくとも僕には全く心当たりのない事だった。
でも、ちょっとだけ思った事として、たまに赤岡さんは僕に引っ掛かりのある言葉を残している気がした。しかも、無意識にポツンと呟いてしまったという感じだ。そのいずれもが僕には全く心当たりがないというのが気になる。意味があるのかないのか、もしかしたら、僕の聞き間違い、勘違いの可能性もあるので、いや、その可能性がかなり高い気もするので、強く聞き返す事は出来なかった。
それに今は、赤岡さんが笑ってくれたので、それだけで良かった。でも、そうなると、真面目にミスター学園祭に挑まなければならない。割と本気になっている赤岡さんに対して、だんだんと憂鬱な気分になってくる。
結局、全て充のせいだ。あの野郎と思う。三ヶ嶋君も三ヶ嶋君だ。たしなめて巻き込まれないようにするべきだろう。その二人のせいにする事で、何となく気持ちはスッキリするけど、状況が変わる事は無い。
と、少しへりくだったように控えめに言ってみた。赤岡さんが僕の方をキッとにらんだ気がしてびくりとする。怒らせてしまったか、いやいやいや、怒りたいのはこっちだよ、泣きたいよ、と思うけど、臆病な僕は何も言えない。その姿を見て、可愛そうと思ったのか、少し冷静になったのか、
「ごめんなさい」
と言われてしまう。何か感情的になっているのかなとか、泣きそうになっているのかなとか思う。
「…こんなんじゃ、また、嫌われちゃうね」
と、呟く。
「えっ?」
またとか、嫌われるとか、何を言っているんだろう。聞き間違いかもしれない。
「…ううん。何でも無い」
でも、ちょっと涙目になっているのは間違いなかった。あたふたとしてしまう。
「あっ、うん。そうだね。せっかくだから、出来る事はやろうか」
思っても見ていない事を言ってしまう。
「でも、大丈夫。無理していない?」
遠慮がちに聞かれる。
「あっ、うん。出来る範囲でだけど、もう少しは頑張ってみても良いかなって、思った。うん、そうだ」
自分でも無理に言ってるなと思うし、それは赤岡さんも分かっていると思う。でも、この状況で他にどういう事を言えばいいんだ。僕には全然わからなかった。
「まあ、充に負けるのは何となく癪だしね」
そう冗談っぽく伝える。それで、赤岡さんは笑ってくれた。ホッとする。さっき、言われた言葉、またとか、嫌われるが気になってしまったけど、それを尋ねる勇気は無かった。少なくとも僕には全く心当たりのない事だった。
でも、ちょっとだけ思った事として、たまに赤岡さんは僕に引っ掛かりのある言葉を残している気がした。しかも、無意識にポツンと呟いてしまったという感じだ。そのいずれもが僕には全く心当たりがないというのが気になる。意味があるのかないのか、もしかしたら、僕の聞き間違い、勘違いの可能性もあるので、いや、その可能性がかなり高い気もするので、強く聞き返す事は出来なかった。
それに今は、赤岡さんが笑ってくれたので、それだけで良かった。でも、そうなると、真面目にミスター学園祭に挑まなければならない。割と本気になっている赤岡さんに対して、だんだんと憂鬱な気分になってくる。
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