夢ノコリ

宿題をする夢

５．

こんな時間だからと言うのも、もちろんあったと思うけど、それにしても静かだなと思う。静かに歩いているつもりでも自分の足音がはっきりと聞こえていた。タイトルだけを追って本を眺めている。やっぱり、自分の専門以外の本に関しては、何が書かれているのかはさっぱり分からない。理論そのものがタイトルとして、書かれている物が多いからだろう。

そんな中、夢について書かれている本がいくつか見つかった。今の自分にはとても興味がある物だった。いくつかちょっと覗いてみた。どれも心理学に結びつけているような本だった。専門用語が並べられていると分からなくなるが、序文などを見てみると、深層心理との結びつきがあると書かれている本がほとんどだった。ただ、その解釈は様々で、直接的な願望が形を変えて現れていると書かれている本があったと思えば、意識していない物が形を成している物と分析している本もあった。

中にはそう言った心理学とは全く無関係としている本もあった。寝ている時に記憶が整理されている過程でたまたま見るだけで、そこに何か意味を見出そうとするのは後付けにしかすぎないと言われると、それもそうかなと思ってしまう。いずれにしろ、夢を見ているという事を否定しようがない事実だけど、どうして夢を見るのか、その意味はあるのかと言うのは、分からないところが多いというところだろうか。人間の心理その物を分かりやすく分析する事が難しいのと同じなのかもしれない。そうなると、自分の心構えひとつで、どうにでも解釈できるという事なんだろうか。

それ以上、詳しい事は良く分からなくなる。もっと、専門的な知識を得る事が出来れば、もう少しは理解できるのかもしれないけど、少なくとも今の僕にはどう考えれば良いのか分からなかった。

そう言えばと、時計を見ながら思う。充は何の本を探しているんだろう。そろそろ、図書室は閉まる時間になる。貸し出しの手続きを考えると、受付に向かった方が良い時間だ。自習できるスペースはそれほど広くはないが、書庫としてはそれなりの広さがある。元々、図書室だった上、書庫専用になってからはより本がびっしりと置かれるようになっている。

改めて見まわしてみると、圧倒される雰囲気もあるなと思った。さっきまでは分かりやすく目的があったからそれほど意識する事も無かったけど、急に誰の気配も感じない事に怖さを感じてしまった。まるで肝試しみたいだなと思った。とりあえず、充を探してみようと思う。